試験研究成績  (作成 平成2年1月)
1.課題の分類  総合農業 作業技術-農業施設-8
           北海道 農業物理
2.研究課題名  高水分小麦の乾燥技術開発
           −トラック積載小麦の週風冷却装置の性能−
3.予算区分  受託
4.研究実施年度・研究期間  平成元年度
5.担当  十勝農試 農業機械科
6.協力分担関係  なし


7.目的
 十勝地方の小麦収穫期は天候不順のため、高水分での刈り取り並びに降雨前の刈り取り超過により乾燥施設の能力以上の小麦が持ち込まれトラックに積み置きにしている例が少なくなく、発熱による変質や異臭を引き起こして等外品となる場合もある。このトラック積載時の小麦品温変化を把握し、新たに開発されたトラック積載小麦通風冷却装置の性能について検討を行う。

8.試験研究方法
 1)試験期日平成元年8月
 2)試験場所十勝農試農業機械科実験室、及び更別村農協
 3)供試機ウィートヘルパーWH-6E(日産ディーゼル道東販売(株))
 4)調査測定項目
  ①構造調査・・・機体寸法
  ②発熱調査・・・無通風状態で保管した小麦の経過時間と小麦温度
  ③通風試験・・・通風間隔と小麦品温変化、小麦水分、品質

9.結果の概要・要約
1)供試機は据置型の送風装置でトラック6台用である。165馬力のエンジンで羽根径1,140mmのターボファン
 を駆動する。最大静圧は500mmAqで風量はエンジン回転数により300〜1,000m3/minで調節できる。トラッ
 クには前もって高さ215mmのベッセルを設置する。トラックと通風装置とは口径500mmの長さ5〜8mの
 蛇腹状のダクトで接続する。風量調節は回転式ダンパで行う。
2)発熱試験は初期水分35.1%の「チホクコムギ」90kgを50mm厚FP板で囲った内寸500mm×500mmの断熱
 ボックスに約400mmの高さに入れ、3、6、9、12、15、18、24時間放置した。
  温度上昇は24時間放置で開始時31.5℃から16.9℃上昇し48.4℃となった。臭いの発生は3時間放置区か
 ら微かに認められ、6時間以降は明らかに臭気があり、15時間以降のの臭気は強であった。同一の断
 熱ボックスに110cmまで小麦を入れた場合の高さ別の温度上昇は、床より10㎝ではほとんど上昇せず温
 度変化も少なかった。90㎝までは高さに比例して温度上昇も大きくなった。90cmでは24時間放置区とほ
 ぼ同じ温度経過で16.5℃上昇し47.6℃となった。
3)通風試験はトラック6台を用いて行った。通風区は連続区、1時間通風3時間停止、1時間通風5時間停止、
 4時間通風3時間停止1時間通風区の4試験区である。
  通風時のトラック積載小麦表面風連は0.22〜0.33m/sで分布に大きな差はなかった。風量比は0.31
 〜0.36m3/s・tonであった。
  通風台数別の送風機の運転状況は、6台通風時でエンジン回転数1,500rpm、チャンパ内静圧は215
 mmAqであった。この時のトラック入気部静圧は165〜198mmAqであった。2〜3台の通風ではエンジン回
 転数1,100rpm、チャンパ内静圧270〜310mmAq、1台では1,000rpmであった。
  温度経過は、通風開始時の小麦温度は約36℃であったがいずれの区でも1時間でおおむね入気空気の
 湿球温度の約24℃まで低下した。12時間連続通風及ぴ4時間通風ではその後25〜26℃で経過した。通
 風停止時の温度上昇は小麦水分によって若干異なるが3時間停止で0.6〜1.8℃、5時間停止で0.3〜1.7
 ℃であった。終了時の臭気の発生は認められなかった。
  終了時の小麦水分は初期水分36.5%の3号車が4.7%低下した。断続通風区では0.9〜2.5%の低下であった
 が、連続通風区では3.3%の低下であった。
4)以上の結果から、水分35%程度の小麦を堆積した場合には約3時間で臭いがつき始め6時間以降では
 はっきりと臭気が確認された。また、通風試験では連続通風区で水分の低下があり小麦の水分むらが大
 きくなることが認められた。断続通風では1時間通風後3時間放置、及ぴ5時間放置区でも温度上昇は1.8
 ℃以下であったことから、1回目の1時間通風により入気空気の湿球温度まで低下させた後は温度計測
 を行いながら数時間放置しても特に問題はないものと考える。

10.主要成果の具体的数字

表1  供試機の主要諸元
項目 諸元
形式・名称 ウィートヘルパー WH-6E
全長(mm) 4,600
全幅(mm) 2,500
全高(mm) 2,697
重量(kg) 5,390
エンジン種別型式 ディーゼル6気筒 165馬力
ファン種別型式 CSV28
ファン羽根径・幅(mm)  1,400×1,600
回転数範囲(rpm) 1,100〜1,600
最大静圧(mmAq) 500
風量範囲(m3/min) 300〜1,000
エンジン・ファン回転比 エンジン1.0:ファン1.2
チャンパー容量(m3) 3.0
送風トラック台数(台) 6
ダクト口径(mm) 500
ダクト長(m) 5〜8
風量調節方法 回転式ダンパ




ダクト径、長さ(mm) 500、1,300
ベッセル高さ(mm) 215
ベッセル寸法 搭載トラック合わせ
(4㌧車 4,500*2,000mm)
(2㌧車 3,900*1,890mm)
床面開孔率(%) 2.86


表2  高水分小麦の発熱試験結果
項目 放置時間別発熱試験 高さ別発熱試験
3h 6h 9h 12h 15h 18h 24h 10cm 50cm 70cm 90cm
嵩密度(kg/m3) 857 889 900 878 889 -- 857 721 721 721 721
開始温度(℃) 32.1 31.1 32.4 32.1 32.5 32.3 31.5 30.3 30.8 30.8 31.1
終了温度(℃) 35.6 38.5 40.2 43.3 44.5 45.9 48.4 33.4 25.5 40.5 47.6
温度上昇(℃) 3.5 7.4 7.8 11.2 12.0 13.6 16.9 3.1 4.7 9.7 16.5
臭いの程度 - - - -
*供試小麦「チホクコムギ」、初期水分35.1%、断熱ボックス50mm厚FP板、内寸500mm×500mm


表3  通風試験条件一覧
トラック番号 1 2 3 4 5 6
試験条件 断続1-3 断続1-5 断続4-3 断続1-3 断続1-5 連続通風
小麦重量
(kg)
試験開始時 7,440 6.030 6,425 4,360 5,930 7,550
試験終了時 7,220 5.900 6,127 4,230 5,760 7,150
嵩密度(kg/m3) 775 788 728 728 802 814
試験開始時水分(%) 26.8 29.2 36.5 29.4 28.6 28.5
終了時平均水分(%) 25.9 26.7 31.8 27.8 25.4 25.2
平均風量比(m3/s・ton) 0.330 0.311 0.361 0.366 0.330 0.393
終了時の臭気の有無


表4  通風試験結果
経過時間(h) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
エンジン回転数
(rpm)
1510 1100     1100 1000 1100     1100      
チャンバー内静圧
(mmAq)
215     295 270   280     310      
平均入気温度(℃) 31.3 31.2 31.8 32.5 32.4 30.2 30.5 26.4 25.7 25.7 24.5 24.1 23.8
平均入気湿度(%) 53.6 56.7 55.4 54.4 54.3 58.0 56.8 66.4 66.8 66.2 69.3 71.1 71.5


区分   通風   通風   通風  
温度(始・終、℃) 35.9/25.1   25.9/24.1   24.7/22.4   23.5
静圧、風速* --- 0.27   205/0.27   213/0.25    


区分   通風   通風  
温度(始・終、℃) 35.9/25.2   26.3/23.5   24.6
静圧、風速* 166/0.24   210/0.27    


区分   ++++通風++++   通風   通風  
温度(始・終、℃) 34.5/24.8         25.6   26.8/22.5   24.3/23.8
静圧、風速* 226/0.26   240/0.23   238/0.29


区分   通風   通風   通風  
温度(始・終、℃) 36.0/25.0   26.6/24.0   24.8/22.4   23.4
静圧、風速* 198/0.33   200/0.24   210/0.22    


区分   通風   通風  
温度(始・終、℃) 36.5/25.1   26.8/23.5   23.8
静圧、風速* ---/0.26   241/0.27    


区分   ++++++++++通     風++++++++++  
温度(始・終、℃) 35.2 25.1 25.5 26.0 26.2 25.2 25.9 24.7 24.3 23.9 23.9 24.2 23.5
静圧、風速* 164/0.36     190/0.30     180/---         189/0.30  
注:静圧の単位はmmAq、風速の単位はm/s


11.普及上の留意点
 水分35%の高水分小麦の場合、1時間通風後の停止時間は3時間以内で再度通風する。