指導参考事項
1.課題の分類  総合農業 作業技術 5-(2)
           北海道 農業物理 畑作機械 共通 豆類収穫
2.研究課題名  普通型コンバイン用大豆刈ヘッドの開発
3.予算区分  別枠、経常
4.研究実施年度・研究期間  昭和55〜平成1年
5.担当  北海道農試 畑作管理部 大機械研
6.協力・分担関係  なし


7.目的
 大豆収穫の高能率化のためコンバイン収穫法の確立を目指す。ここでは麦用普通型コンバインに装着できる大豆刈ヘッドを開発し、コンバイン本体の麦と大豆での汎用化によって機械利用経費低減をも目的とする。

8.試験研究方法
 4.2m刈幅の麦用普通型コンバインに装着する6条畦刈り方式の大豆用ヘッドを試作し、コンバイン本体の一部を改造して収穫実験を行った。場内(キタムスメ、トヨスズ)及び農家(トヨムスメ)のほ場で作業精度を、農家のほ場で作業能率を測定した。シリンダの回転数とコンケープの全部間隙は、未脱粒及び損傷粒が少なくなるように調節して実験を行った。

9.結果の概要・要約
1)莢水分が高いと刈り取り部での損失は少ないが、脱穀部での損失は多く、逆に莢水分が低いと刈り取り
 部での損失が多くなり、脱穀部での損失は少なかった。場内の実験では総損失は2%〜3%であり、刈り取り
 部での損失は、0.7%〜2.5%と少なかった。(第1表)
2)損傷発生の主な原因はシリングによる行事であると思われ、回転が速いと損傷が増加した。一方スクリュ
 ーオーガによると思われる溝状の傷も見られた。子実水分が高いと破砕粒及び裂傷粒は比較的少ない
 が、圧変粒が多く、水分が少ないと、その逆となった。後部間隙9mmと12mmの比較では、キタムスメにお
 いては12mmの方が損傷が少なかった。(第1表)
3)農家での調査では総損失が3〜5%であった。このうち刈り取り部での損失は1.4〜3.0%でありNo9〜No11の
 実験では分枝の倒伏が多かったので刈残し損失が特に多かった。コンバインで収穫した大豆の等級は
 2等と1等であった。(第2表)
4)農家圃場での損傷粒は合計で2%〜3%で、このうち破砕粒は0.2%〜2.1%、種皮が切れた裂傷粒は
 0.4%〜1.1%、圧変粒は0.2%〜1.1%であった。(第2表)
5)農家ほ場での作業能率は、1時間当り0.51ha〜0.56haであったが、特定の畦の刈刃が駆動刃と受け刃の
 上下位置が逆になるなどで詰まったため能率がやや低い。このつまりがなければ1時間当たり0.60ha
 〜0.64ha、1ha当たりの作業時間は1時間35分前後である。平均の作業速度は0.60m/s〜0.66m/sであり、
 燃料消費量は18〜20l/ha出会った。(第3表)
6)試作へッドの販売価格は596万円と見積られ、刈幅3.9mの麦用コンバインと組合せ麦80ha、大豆36haを
 処理したとすると、ha当り5.91万円の利用経費となる。このコンバインを麦のみ80haに使用した場合は、ha
 当たり6.80万円の利用経費であり、麦収穫の機械利用経費が少なくなる。
 現行のビーンハーベスタ、バックレーキ、スレッシャの大豆収穫体系では、ha当り機械利用経費が7.30
 万円(S63年指導参考)であるのに対し、試作ヘッドと麦用コンバイン及び乾燥機の利用では上記5.91万
 円に乾燥機のの利用経費0.12〜0.66万円(S63年指導参考)が加わるが、現行の85%前後と機械利用経費
 の低減が図れる。


10.主要成果の具体的数字

第1表  作業精度
品種 キタムスメ トヨスズ
試験 № 1 2 3 4 5 6 7 8
シリンダ回転 rpm 400 350 400 300
コンケープ mm前 15 15 15 15
間  隙  mm後 12 9 12 9 12 9 12 9
作業速度 m/s 0.68 0.68 0.68 068 0.70 0.70 0.68 0.68
刈高さ cm 3.8 4.6 5.1 4.3 3.5 4.0 4.2 3.8
総流量 t/h 4.42 4.63 4.49 4.73 4.73 4.51 4.41 4.40
水茎 23.1 24.0 23.9 17.0
分莢 14.0 13.4 14.8 12.6
(%) 小実 16.4 14.8 15.3 13.5



(%)
落莢 0.6 1.3 0.8 1.2 1.0 2.1 2.1 1.9
落莢・刈残し 0.1 0.4 0.1 0.1 0.4 0.4 0.4 0.3
(小計) 0.7 1.7 0.9 1.3 1.4 2.5 2.5 2.2
未脱粒 1.3 0.2 1.2 0.5 0.2 0.2 0.2 0.3
ささり粒 0.4 0.2 0.3 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2
(小計) 1.7 0.4 1.5 0.7 0.4 0.4 0.4 0.5
[総損失] 2.4 2.1 2.4 2.0 1.8 2.9 2.9 2.7



(%)
破砕粒 1.3 2.9 2.2 3.1 2.5 2.4 2.4 2.2
裂傷粒 0.4 1.9 1.4 2.1 1.6 1.1 1.1 1.5
圧変粒 0.3 0.2 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.2
[合計] 2.0 5.0 3.7 5.3 4.2 3.6 3.6 3.8
注)3反復の平均値


第2表  農家ほ場での作業精度
試験 № 損失(%) 損傷(%)
落莢 落莢・刈残し (小計) ささり 未脱 (小計) [合計] 破砕 裂傷 圧変 [合計]
9 0.4 1.0 1.4 0.3 3.7 4.0 5.4 0.2 1.1 1.1 2.4
10 0.6 2.3 2.9 0.3 1.2 1.5 4.4 0.4 0.4 0.8 1.6
11 0.9 2.1 3.0 0.3 1.3 1.6 4.6 1.3 0.6 0.2 2.1
12 1.6 0.6 2.2 0.2 0.5 0.7 2.9 2.1 0.7 0.4 3.2
13 1.1 0.5 1.6 0.2 0.8 1.0 2.6 1.8 0.8 0.4 3.0
14 1.8 0.3 2.1 0.2 0.5 0.7 2.8 1.7 1.0 0.6 3.3
注)試験 №9〜11は分枝の倒伏が多い。


第3表  作業能率
面積(ha) 所要時間 能率
作業 回行 調整 刈刃つまり 排出 合計 ha/h h/ha
 
1.86
131'05"
60%
 
70%
25'18"
12%
 
14%
16'42"
8%
 
9%
30'15"
14%
 
-
13'41"
6%
 
7%
217'01"
100%
186'46"
100%
0.51
 
0.60
1.94
 
1.67
 
1.14
73'03"
60%
 
69%
18'51"
15%
 
18%
4'40"
4%
 
4%
16'09"
13%
 
-
9'47"
8%
 
9%
122'30"
100%
106'21"
100%
0.56
 
0.64
1.79
 
1.55
注) '記号は分、"記号は秒
  各欄の3及び4段目は刈刃つまりがない場合の値


11.成果の活用面と留意点
 大豆収穫の高能率化に有効であり、ヘッドの交換と僅かな部品交換で麦用普通型コンバインが汎用利用できる。
 汚粒対策として小実水分20%以下、茎水分50%以下で適用すること。