完了試験研究成績  (作成 平成2年1月)
1.課題の分類  総合農業 作業技術 農業施設-8
           北海道 農業物理
2.研究課題名  牛舎付属機械装置の耐久性向上に関する試験
           −耐久性向上のための塗料の選定とその評価−
3.予算区分  道単
4.担当  根釧農試 酪農施設科
5.研究期間 完 平成元年(昭和60年〜平成元年)
6.協力・分担関係

7.目的
 牛舎付属機械などの耐久性並びに強度向上を図るため、既存あるいは新技術を導入活用し、付属機械、装置の耐用期間の延長を進め、機械利用経費の低減を図る。

8.試験研究方法
 牛舎内などで使用される鋼材の腐食防止のため、塗料の種類について検討した。

1)供試鋼板・・・100mm×240mm×1mm 亜鉛メッキ鋼板、片面塗装
2)塗装の種類・・・A:塩化ゴム系、B:エポキシ系、C:合成樹脂系、D:エポキシ系(厚膜)
           E:エポキシ系(超厚膜)、F:エポキシ系(ガラス繊維)、*:平成元年度
3)浸漬試験
 ア.浸漬溶液:蒸留水、水道水、塩水(3.0%、6.0%)、混酸A(酪酸3.0%、乳酸3.0%、酢酸2.0%)、
         混酸B(酪酸1.0%、乳酸5.0%、酢酸2.0%)、アンモニア液(6.25%、12.5%)
 イ.浸漬期間:昭和63年2月22日〜7月23日(153日)、平成元年7月28日〜12月25日(151日)
4)暴露試験
 ア.暴露環境:屋外、スタンチョン牛舎、フリーストール牛舎、ミルキングパーラ、サイロ、スラリーストア
 イ.暴露期間:昭和63年2月23日〜10月14日(235日間)、平成元年7月24日〜12月20日(150日)
5)測定評価法
 ア.外観の観察:素地露出、ふくれ、はがれ、錆、退色*、硬化*、軟化*、*:評点なし、他は10点評価法
 イ.碁盤目試験:JIS K5400 6.15に準拠(10点評価法)
 ウ.塗膜の交流抵抗(インビーダンス)の測定(120Hz*、200Hz**、600Hz**、1kHz、10kHz*)

9.結果の概要・要約
《昭和63年度の成績》
(1)塩化ゴム系は混酸液A及びBで、標準塗装は各浸漬条件でふくれを生じた。エポキシ系は塗膜の変化が少なかった。標準塗装はスラリータンク内で上塗りは水溶性に変質し、下塗りが露出した。他の塗装片に変化は認められなかった。
(2)浸漬処理後、塩化ゴム系と標準塗装は剥離が多く、碁盤目試験の評点は10点満点の2以下と低かった。エボキシ系は混酸液Aおよびアンモニアを除いて剥離は少なく、耐久性は良好であった。暴露処理の標準塗装の評点はすべて2以下と低かった。塩化ゴム系はスラリータンク内、エポキシ系屋外とフリーストール内のものに劣化が見られ、評点は4以下とやや低かった。
(3)標準の塗装のインビーダンスは混酸液Bと6%塩水に対し、著しく低下した。塩化ゴム系は6.25%アンモニアに対し低いが、他はエポキシ系と同様であった。インビーダンスは外観評点と傾向が同じであった。塗膜の劣化に伴ってインピーダンスが低下する傾向が認められた。
(4)耐久性はエポキシ系が優れ、塩化ゴム系、標準塗装の順になった。

《平成元年度の成績》
(5)エポキシ系厚膜塗装は12.5%アンモニアと2種類の混酸液で、超厚膜は2種類の混酸でふくれとはがれを生じた。ガラス繊維入りは劣化がなく、碁盤目試験の評点も高かった。
(6)汚水や糞尿で超厚膜塗装は灰褐色に変色し、碁盤目評点も10点満点の4と低かった。他の塗装片は暴露による劣化はなかった。
(7)インビーダンスブリッジの内部抵抗の増加に対し、ブリッジ電圧が減少しない塗膜には外観から見分けられない塗膜の剥離が認められた。
(8)各処理に対しガラス繊維入りが良好な成績を示した。アンモニア及び酢酸、酪酸、乳酸に対し厚膜塗装は耐久性が低かった。


10.主要成果の具体的数字

  

 図3  外観・碁盤目試験評価点
  
 図4  インビーダンス(LogΩ)
 
 
 図  エボキシ系(厚膜)の電気特性


11.普及上の留意点
1)使用環境に適した塗料の選択(エボキシ系、塩化ゴム系など)

12.今後の問題点
1)塗装面への衝撃、摩擦、温度変化などに対する耐久性の簡易評価法の検討