完了試験研究成績
1.課題の分類  総合農業 作業技術 5-(5)-(2)
           草地 飼料生産・利用 作業技術 B-10
           北海道 農業物理
2.研究課題名  寒地・寒冷地におけるサイレージ流通化のための収穫・調製・搬送技術の開発
           −カッティング・ロールペールサイレージ調製技術−
3.予算区分  水田畑作
4.研究期間  (昭和62〜平元年)
5.担当  北農試・農村計画・農業機械研
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 ロールペールサイレロジの不断給飼は、これらをパドックの飼槽台に置くだけの省力的な作業を可能にしている。しかし、細断牧草サイレージに比較して、長物のため採食ロスが多くなり易い、北海道に特に積雪・凍結時はパドッタでの不断給飼が困難で舎内給飼となり解体・給飼に労力を要する、飼料混合調製では細断機が必要となるなど問題がある。これらの解決に牧草を切断して梱包することを着想し、切断型ロードワゴン、ロールベーラ、ラッピング機械等一連の作業機を使用したサイレージ調製技術の可能性について検討した。

8.試験研究方法
(1)オーチャードグラスを主体としたロールベールサイレージ調製に、切断型ロードワゴンはビックアップ幅1600mm、設定切断刃最小間隔35mmまたは40mmの2型式、ロールベーラは成形方式式がチエン・ローラによる固定容積舳チャンパ・ビッグアップ幅1410mm、ベール幅1200mm×直径1600mm(ネット掛け)を、また、ラッピング機械はベール直径1700mm×幅1500mmまで適用できる回転テーブル型を使用した。
(2)ロールベールサイレージ調製は、オーチャードグラス単播永年草地で1番草推定生草収量約1.5t/10aを供試し、梱包作業は無切断、切断型ロードワゴンの設定切断刃間隔80.40mmの3水準、牧草含水率2水準(43、31%w.b)、3反復とした。

9.結果の概要・要約
(1)切断型ロードワゴン作業時のPTO軸所要動力は、切断刃間隔を70mm以下にすると急増するが、35mmの設定で毎時処理量45t(含水率70%)の時に25kWであった。切断長を切断刃間隔に近付けるためには、毎時処理量を最大限に発揮させることが望ましかった。作業速度とワゴンのフロワコンペヤ速度をほぼマッチングさせて切断牧草を排出することにより、ほとんど切れ目のない集草列が作れた。
(2)ロールベーラによる切断牧草集草列の拾い上げロスは、80、40mmの時でそれぞれ6%と13%であったが、梱包能力は無切断と遜色なく8〜140tDM/hであった。梱包作業時のPTO軸所要動力は、瞬間(0.02秒)最大、2秒間平均最大、梱包作業時平均ともに、また、消費エネルギーも無切断に比較して切断牧草が明らかに低く、瞬間最大所要動力は、40mmで22%前後低く20〜30kWであった。ネット掛け梱包見掛け密度は148〜175kgDM/m3で、無切断より切断(80、40mm)の力がやや高くなる傾向にあった。また、トラクタフロントローダによるハンドリング作業、トレーラによる運搬作業等で切断牧草梱包の荷崩れは無かった。
(3)ラッピング作業はフィルム幅2分の1重ね合わせ3回巻き(6層)で1梱包当たり平均3分30秒を要したが、切断牧草でも1問題なかった。貯蔵前後で梱包質量の変化はほとんど無く、サイレージ評価は無切断よりむしろ切断牧草が優れていた。フィルムとネットを切りはがした後のべ一ルのフロントローグによる振動解体は、無切断では容易でなかったが、80、40mmは容易で、特に40mmは振動2〜5回程度で解体した。


10.成果の具体的数字

 図1  カッティング・ロールベールサイレージ調製のための作業体系


表1  試験供試牧草条件
①草地圃場
 北農試17号圃場・2.62ha
 オーチャードグラス主体の単播草地
②刈り取り日時
 平成元年6月13日9:00〜
③オーチャードグラス性状
 草丈・・・90.7±6.5cm
 茎太さ・・・2.1±0.5mm
 含水率・・・76.3±0.6%


表2  切断型ロードワゴンとロールベーラの処理能力、ベールの性状、所要動力
試験

月日
条件 牧草
含水率
(%)
ロードワゴン ロールベーラ
作業
速度
(m/s)
処理
能力
(t/h)
草量
(kg/m)
作業
速度
(m/s)
1梱包当たり ベールの性状 PTO軸
所要動力
(kW)
所要
時間
(min)
処理
能力
(t/h)
幅(m) 直径
(m)
質量
(kg)
密度
kg/m3 kgDM/m3
6.14 L900 46.6 -使用せず- 6.2 1.44 1.88 25.8 1,273 1,564 758 318 168 38.0
6.14 L80 38.1 0.84 16.2 5.0 1.50 1.88 23.1 1,235 1,585 690 283 175 33.9
6.14 L40 43.8 0.88 18.7 3.5 1.34 3.17 14.1 1,240 1,561 730 311 174 29.7
6.15 L900 31.2 -使用せず- 2.7 1.47 3.32 9.9 1,208 1,558 504 219 150 25.4
6.15 L80 32.9 0.80 7.7 3.2 1.40 2.27 13.9 1,218 1,537 499 221 148 19.2
6.15 L40 29.7 0.85 8.0 2.6 1.47 2.41 12.9 1,210 1,548 518 228 160 19.7
注)①L900・・・無切断、L80・・・切断刃間隔80mm、L40・・・切断刃間隔40mm
  ②数値は3反復の平均値、表中kgDM/m3は乾物換算密度を示す。
  ③PTO軸所要動力は瞬間最大値で示した。1PS=0.7355kW


表3  切断型ロードワゴンとロールベーラの作業能率
作業条件 ロードワゴン ロールベーラ
個別作業時 1.7ha/h(0.59h/ha) 2.5ha/h(0.40h/ha)
同時作業時 1.7ha/h 1.7ha/h
備考①牧草生草収量(含水率80%時):1.5t/10a
   ②子乾草含水率30%で作業。
   ③作業速度:ロードワゴン0.85m/s、ロードベーラ1.47m/s
   ④同時作業では作業能率の低い作業に支配される。


表4  サイレージの品質評価
平元・6月14〜15日
サイレージ調製時
平元・11月24日
サイレージ開封時
ベール № 含水率(%) 質量(kg) 質量(kg) 質量変化率(%) サイレージ評価
L900 1 40 618 622 100.6 B
L80 2 35 700 700 100.0 A
L80 3 43 736 736 100.0 A
L40 4 44 729 732 100.4 A
L900 5 34 510 517 101.4 AB
L80 6 32 504 494 98.0 AB
L40 7 30 544 539 99.1 A
備考)質量変化率100%以上はフィルムに雨水を溜め込んでいた。


11.成果の活用面と留意点
 ロールベーラによる切断牧草の梱包はネット掛けとする。

12.残された問題点とその対応