完了試験研究成績 (作成 平成2年1月)
1.課題分類 畜産 肉用牛 肥育 新得畜試 北海道 家畜 2.研究課題名 馬鈴しょの肉用牛飼料への転用に関する試験 3.予算区分 受託 4.担当 新得畜試 肉牛科、酪農科、衛生科 5.研究期間 (昭63年〜平元年) 6.協力分担関係 なし |
7.目的
北海道の馬鈴しょは、でん粉の過剰在庫を抱え、更に馬鈴しょ関連製品の輸入拡大が進むなど厳しい生産環境下に置かれている。そこで、本試験は、でん粉原料用馬鈴しょを磨砕・脱汁後サイレージに調製し、その品質、栄養価および肉用牛へ給与した場合の肥育効果について検討した。
8.試験研究方法
(1)脱汁馬鈴しょサイレージ調製と栄養価査定(昭63〜平元年)
(2)脱汁馬鈴しょサイレージによる肥育効果(昭63〜平元年)
供試牛:乳用種去勢牛 18頭
処理:Ⅰ期(開始〜8週時) 対照区(濃厚飼料多給方式)、少給区(サイレージ6㎏/日+濃厚飼料)、
多給区(サイレージ12kg/日+濃厚飼料)
Ⅱ期(9週時〜終了時) 対照区(濃厚飼料多給方式)、少給区(濃厚飼料給与TDN量の20%を
サイレージ給与)、多給区(対照区の濃厚飼料給与TDN量の40%をサイレージ給与)
9.結果の概要・要約
1)バンカーサイロおよびバッグサイロに詰め込んだ脱汁馬鈴しょサイレージの乾物率は44〜45%で、その主
成分はNFEであった。pHはいずれも4.2で、乳酸含量はそれぞれ2.08%および1.83%であった。酸組成は良好
であったが、フリーク評点ではバンカーサイロの方が高く評価された。バッグサイロの回収率は98.9%であ
った。乾物中のTDN含量は74〜77%であったが、DCP含量は0%であった。
2)Ⅰ期の日増体量は多給区が低かったが、Ⅱ期では飼料給与計画を変更したことによって区間に差は認
められなくなった。全期間通算では対照区1.16kg、少給区1.16kgおよび多給区1.06kgであった。
3)少給区および多給区とも給与した脱汁馬鈴しょサイレージを完全に摂取できず、給与量の4割近くを食べ
残した。脱汗馬鈴しょサイレージのTDN摂取割合は、Ⅰ期で少給区23%および多給区50%、Ⅱ期でそれぞ
れ15%および28%であった。また、濃厚飼料を含めたTDN摂取量に対する脱汁馬鈴しょサイレージの摂取割
合では、Ⅰ期で少給区26%および多給区57%、Ⅱ期で少給区16%および多給区30%となった。全期間通算の
1kg増体に要したTDN量は、小給区と対照区の間に差はなかったが、多給区はⅠ期の値が高かったため
対照区より劣る結果となった。
4)脱汁馬鈴しょサイレージの給与により、飼料の特性に起因するBUN、コレステロール、リン脂質の低下が
みられたが、生体に対して特に悪影響はなかった。
5)枝肉歩留は区間に差は認められなかった。枝肉では多給区の肉質等級がやや低く評価されたが、Ⅰ期の
増体が低く肥育が不十分なためで、脱汁馬鈴しょサイレージ給与によって肉質に対する影響はないものと
判断された。
10.成果の具体的数字
水分 (%) |
pH | 粗蛋白質 | 粗脂肪 | NFE | 粗繊維 | 粗灰分 | DCP | TDN | |
─────乾物中 %───── | |||||||||
バンカーサイロ | 54.6 | 4.2 | 3.5 | 0.1 | 92.7 | 2.2 | 1.6 | 0 | 79.3 |
バッグサイロ | 56.3 | 4.2 | 3.0 | 0.2 | 93.2 | 2.2 | 1.4 | 0 | 77.2 |
有機酸 | 輝発酸組成 | フリーク 評点1) |
VBN/ T-N (%) |
||||||
pH | 総酸 | 乳酸 | 輝発酸 | 酢酸 | プロピオン酸 | 酪酸 | |||
─乾物中 %─ | ── % ── | ||||||||
バンカーサイロ | 4.2 | 2.25 | 2.08 | 0.17 | 0.13 | 0.03 | 0.01 | 優 | 4.5 |
バッグサイロ | 4.2 | 2.20 | 1.83 | 0.37 | 0.11 | 0.02 | 0.24 | 良 | 5.2 |
対照区 | 少給区 | 多給区 | |
日増体量(kg) | |||
Ⅰ期 | 1.30 | 1.15 | 0.60 |
Ⅱ期 | 1.15 | 1.16 | 1.14 |
通算 | 1.16 | 1.16 | 1.06 |
脱汁馬鈴しょサイレージ摂取量(DMkg) | |||
Ⅰ期 | 1.8(63.2) | 3.4(61.4) | |
Ⅱ期 | 1.5(57.9) | 2.9(55.0) | |
通算 | 1.6(59.2) | 3.0(57.1) | |
TDN摂取量(kg) | |||
Ⅰ期 | 6.8 | 6.1(23.0) | 5.4(49.5) |
Ⅱ期 | 8.2 | 8.1(14.8) | 8.2(28.0) |
通算 | 8.0 | 7.7(15.8) | 7.7(30.4) |
1kg増体に要したTDN量(kg) | |||
Ⅰ期 | 5.4 | 5.4 | 9.2 |
Ⅱ期 | 7.1 | 7.0 | 7.2 |
通算 | 6.8 | 6.8 | 7.4 |
枝肉歩留(%) | 60.8 | 60.1 | 59.9 |
枝肉等級 | B2:1、B3:1 C2:2、C3:2 |
B2:2、B3:1 C2:2、C3:1 |
B2:3 C2:3 |
11.成果の活用面と留意点
1)脱汁馬鈴しょサイレージの給与量は、濃厚飼料給与TDN量の約30%の給与が可能である。
2)脱汁馬鈴しょサイレージはDCP含量がほとんどないので、飼料給与計画を立てる場合には注意する。
12.残された問題とその対応
1)脱汁馬鈴しょサイレージの採食性の改善
2)繁殖雌牛に対する馬鈴しょサイレージ給与法の検討