【指導参考事項】
完了試験研究成績                        (作成平成2年1月)
1.課題の分類  草地 栽培 寒地型牧草-B-1
          北海道 合同
2.研究課題名  牧草品種の栄養価査定に関する試験−刈取りスケジュールと栄養価−
           (牧草品種に関する試験)
3.予算区分  道単
4.研究期間  (昭59年〜平元年)
5.担当  新得畜試 草地飼料作物科
6.協力・分担関係

7.目的
あらかじめ設定した栄養価で刈取りを行うスケジュールを策定し、その期日の刈取りに よる栄養価の年次的変動と草地の永続性を検討し、刈取りスケジュールの有効性を明らかにする。

8.試験研究方法
Ⅰ.刈取りスケジュール
1)供試材料
オーチャードグラス(OG2)、トールフェスク(TF2)、チモシー(TY3)
メトーフェスク(MF1)、アルファルファ(AL1)注:草種(略号 品種数)
2)刈取りスケジュールの設定

表1 刈取りモデル
モデル IVDMD(%)
1番 2番 3番
70 70 70
70 65 65
65 70 70
65 65 65

表2 刈取りスケジュール
OG:キタミドリ、オカミドリ、TF:ヤマナミ
モデル 1番 2番 3番 4番*
6.10 7.10 8.10 9.20or10.10
6.10 7.20 8.30 10.10
6.20 7.20 8.20 10.10
6.20 7.30 9.10 -

TY:クンプウ
モデル 1番 2番 3番*
6.15 7.20 9.20or10.10
6.15 8.1 9.20or10.10
6.25 7.30 9.20or10.10
6.25 8.10 9.20or10.10

TY:センポク
モデル 1番 2番 3番*
6.20 8.10 9.20or10.10
6.20 8.20 9.20or10.10
6.30 8.20 9.20or10.10
6.30 8.30 10.10

TF:ホクリョウ
モデル 1番 2番 3番*
6.20 7.30 9.10
6.20 8.10 9.20
6.30 8.10 9.20
6.30 8.20 10.10

TY:ホクシュウ
モデル 1番 2番 3番*
6.25 8.20 10.10
6.25 8.30 10.10
7.5 8.30 10.10
7.5 9.10 -

MF:ファースト
モデル 1番 2番 3番*
6.15 7.25 9.5
6.15 8.5 9.25
6.25 8.5 9.15
6.25 8.15 10.5

AL:ソア
モデル 1番 2番 3番*
     
6.25 8.10 9.20or10.10
     
7.5 8.20 10.10

表1に示した各番草のinvitro乾物消化率(IVDMD)を設定し、今までの成績から各草種,品種毎に刈取り日を表2のように作成した。
*印は設定したIVDMDの刈取り日ではなく、永続性を考慮し、危険帯を避ける刈取り日とした。

Ⅱ.3番草の栄養価と収量
3番草の刈取り期日を策定するために、生育に伴う乾物消化率、粗蛋白質含量および収量の推移を明らかにした。

9.結果の概要・要約
Ⅰ.刈取りスケジュールの作成
1)設定したモデルで4年間刈取りを行った場合のIVDMDの年次変動(標準偏差)は表3のとおりであった。
2)1,2番草のIVDMDは気温、日照時間、日射量との間に負の高い相関が認められた。
3)草地の永続性については、イネ科牧草は本スケジュールで刈取りを続けても、利用5年目ではモデル間の差は明確ではなかった。
Ⅱ.3番草の栄養価と収量
1)オーチャードグラスとトールフェスク「ヤマナミ」は2番草刈取り後40日以前にIVDMDが65%以下に低下した。
2)チモシーはIVDMDが70%以下にはならず、ほぼ一定であった。
3)生育の遅い牧草(6月中旬後半以降に出穂期となるもの)は生育日数と消化率との関係が小さいので刈取りは収量を考慮し行えば良いと思われる。

10.成果の具体的数字
表3 IVDMDの年次変動(標準誤差)
モデル\番草 1 2 3 4 1 2 3 1 2 3 1 2 3
OG「キタミドリ」 TF「ホクリョウ」 TY「クンプウ」 TY「センポク」
平均値(%) 68.9 71.0 67.8 68.2 66.9 69.2 70.5 69.6 74.8 68.8 69.6 68.6 78.7
標準偏差 1.2 1.5 1.9 4.9 5.1 2.2 4.8 2.5 1.6 3.0 3.1 2.2 2.5
平均値(%) 68.1 65.6 64.0 73.1 65.4 63.6 73.7 69.7 67.9 74.9 70.1 64.9 78.0
標準偏差 2.0 1.4 1.7 1.2 5.6 1.2 1.9 2.4 3.7 2.5 3.0 2.4 4.9
平均値(%) 61.5 72.3 68.2 72.8 55.6 66.5 74.1 64.1 72.4 73.2 61.4 67.6 79.7
標準偏差 3.8 0.9 0.6 1.7 2.9 1.1 1.2 1.2 2.0 4.3 2.8 2.5 2.9
平均値(%) 60.6 64.5 65.4 - 57.5 63.9 77.2 62.3 65.5 75.4 61.3 61.5 80.9
標準偏差 4.7 2.6 3.7   2.3 3.0 1.7 2.2 1.7 4.7 2.6 1.7 2.4
  OG「オカミドリ」 TY「ホクシュウ」 MF「ファースト」 AL「ソア」
平均値(%) 70.7 72.5 68.6 71.8 71.5 68.8 78.9 70.5 70.7 71.0      
標準偏差 3.1 1.3 3.3 5.6 2.4 3.4 2.2 3.8 4.4 2.0      
平均値(%) 70.5 66.0 66.9 74.3 68.9 65.6 79.4 70.3 67.6 73.1 66.6 62.9 68.1
標準偏差 3.1 3.4 0.4 2.4 4.9 3.5 3.8 4.2 3.0 3.4 1.3 1.2 5.3
平均値(%) 64.4 73.0 70.5 74.1 61.9 64.4 79.5 61.4 72.3 73.0      
標準偏差 4.4 1.3 1.0 3.3 4.2 3.8 3.7 2.4 2.0 2.4      
平均値(%) 64.3 67.9 67.6 - 61.5 62.6 - 61.7 66.2 74.9 63.6 63.9 74.2
標準偏差 3.5 0.4 4.1   3.9 2.8   1.8 2.2 4.3 0.8 2.4 3.3

表4 IVDMDの変動と気象との関係
要因\番草 OG「キタミドリ」 TF「ホクリョウ」 TY「クンプウ」 TY「センポク」 AL「ソア」
1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
平均気温(℃) -0.81** -0.86** -0.75** -0.89** -0.86** -0.90** -0.78** -0.80** -0.81* -0.65
日照時間(h) -0.85** -0.43 -0.93** -0.75** -0.83** -0.65** -0.87** -0.58* -0.83* -0.67
日射量(MJ/㎡) -0.88** -0.88** -0.93** -0.30 -0.83** -0.64** -0.86** -0.35 -0.63 -0.17

表5 刈取りスケジュールと草地の永続性(利用5年目草地)
モデル 年間合計乾物収量(kg/10a) モデル 雑草侵入程度(1〜5多)
キタミドリ ホクリョウ クンプウ センポク ソア キタミドリ ホクリョウ クンプウ センポク ソア
944 964 1,055 887   1.0 1.8 2.5 1.5  
807 871 940 888 593 1.0 2.5 2.3 2.0 2.5
950 975 954 746   1.0 1.8 2.5 1.5  
907 1,022 977 756 330 1.0 2.0 1.8 1.5 4.0
CV(%) 11.8 5.2 8 19.9 33.5  
有意差 ns ns ns ns ns  

表6 3番草のIVDMD(%)と乾物収量(kg/10a)の推移
2

項目 OG「キタミドリ」 OG「オカミドリ」 TF「ホクリョウ」 TY「クンプウ」 TY「センポク」 MF「ファースト」
生育日数 生育日数 生育日数 生育日数 生育日数 生育日数
40日 70日 40日 70日 40日 70日 40日 70日 40日 70日 40日 70日


刈取月日 8.21 9.20 8.21 9.20 9.4 10.4 9.4 10.4 9.17 10.17 9.4 10.4
IVDMD 63 57 63 57 68 64 73 71 77 81 69 63
乾物収量 278 421 320 461 249 395 150 289 60 102 205 319


刈取月日 8.29 9.28 8.29 9.28 9.13 10.13 9.13 10.13 9.29 10.29 9.13 10.13
IVDMD 65 59 64 59 73 69 76 75 80 82 74 69
乾物収量 263 373 275 433 194 313 51 162 95 144 148 214

11.成果の活用面と留意点
1)本スケジュールを活用することにより牧草の栄養価を考慮した刈取り作業の計画を作成出来る。
2)消化率の変動は気象との関係が深いので、実際の刈取りは生育期間中の気象を考慮して、モデルの日を中心に決める。
3)1番草の刈取りを早やめた場合、それ以後の刈取りは本スケジュールの間隔で行う。
4)アルファルファのモデルⅣは3番草の刈取りを行うか否かを、秋の生育を考慮して決める。
5)本試験成績は十勝地方および牧草の生育が類似する地方に適用すること。

12.残された問題とその対応
1)混播草地における栄養価と刈取りスケジュール。