【普及奨励事項】
1.分類  草地 育種 寒地型牧草 A-3
      北海道 草地 AL
2.課題名  アルファルファ「Arrow」に関する試験
3.予算区分  受託
4.期間  継・中・完 昭62〜平1
5.担当  中央農試 北見農試 根釧農試 天北農試
      新得畜試 滝川畜試 北農試(マメ牧研・耐病性研)
6.協力・分担関係

7.目的
アルファルファバーティシリウム萎ちょう病抵抗性の優良品種を選定する。

8.試験研究方法
1)品種の来歴
 育成機関 Nickerson American Plant Breeders Inc.(NAPB)
 導入機関 雪印種苗(株)
 育成方法 「ヨーロッパ」由来の4系統から成る合成品種
 品種登録 OECD登録済
2)バーティシリウム萎ちょう病抵抗性検定
人工接種による幼苗検定(胞子濃度106/mL)を2回行い、抵抗性を評価した。
3)適応性検定
系統適応性検定試験実施要領に準じた。ただし北農試では、初年目1番草刈り取り後にパーティシリウム萎ちょう病菌を人工接種し、パーティシリウム萎ちょう病発生条件下で評価した。
試験区の構成等
場所 播種期 播種法 播種量 畦幅 1区面積 反復 配置
北農試 昭625.19 条播 100g/a 50cm 6㎡ 4 乱塊法
中央農試 昭625.22 条播 100g/a 50cm 6㎡ 4 乱塊法
北見農試 昭625.19 条播 120g/a 60cm 6㎡ 4 乱塊法
根釧農試 昭625.25 条播 4.3万粒/a 40cm 6㎡ 4 乱塊法
天北農試 昭625.11 条播 100g/a 50cm 6㎡ 3 乱塊法
新得農試 昭625.19 条播 100g/a 50cm 8㎡ 4 乱塊法
滝川畜試 昭625.9 条播 100g/a 50cm 6㎡ 4 乱塊法

9.結果の概要・要約
「Arrow」の特性をまとめると次のようになる。
1)パーティシリウム萎ちょう病に対しては罹病度1.4、抵抗性個体率80.6%であり、低抗性の基準(罹病度2.0以下、抵抗性個体率60%以上)を満たしている。圃場の結果もふまえると「リュテス」以上の抵抗性である。
2)開花は「ソア」、「キタワカバ」並で、「リュテス」より遅い。
3)萌芽期は「ソア」、「リュテス」よりやや遅く、「キタワカバ」より遅い。
4)萌芽良否は「ソア」並で、「リュテス」よりやや優れ、「キタワカバ」より劣る。
5)早春の草勢は「ソア」、「リュテス」並で、「キタワカバ」より劣る。
6)越冬前草勢は「ソア」より優れ、「リュテス」より劣り、「キタワカバ」並である。
7)そばかす病に対しては「ソア」よりやや高い抵抗性を示し、「キタワカバ」、「リュテス」並である。
8)耐倒伏性は「ソア」、「キタワカバ」並で、「リュテス」より劣る。
9)草丈は「ソア」よりやや高く、「リュテス」よりやや低く、「キタワカバ」と大差はない。
10)収量は「ソア」、「リュテス」より高く、「キタワカバ」並かやや低い。新得畜試、北農試で「キタワカバ」並の多収を示し、根釧農試、滝川畜試ではやや低収傾向がみられたものの、全道的に2年目から3年目にかけての収量の低下は小さい。

10.主要成果の具体的数字
表1 「Arrow」のバーティシリウム萎ちょう病抵抗性検定の結果
品種 罹病度a) 抵抗性個体率a) 圃場での発病程度b)
Arrow 1.4 80.6 1.3
リュテス 1.6 71.9 2.3
ソア 2.3 41.6 4.6
キタワカバ 2.1 49.9 4.1
備考 1:健〜5:枯死 罹病度2以下の% 1:無〜5:甚
a)1987年および1988年に胞子濃度106/mLで検定した値の平均
b)発病条件下(北農試)で5回調査した値の平均

表2 「Arrow」の適応性検定の結果
形質 品種 北農試 中央 北見 根釧 天北 新得 滝川 備考
開花始
Arrow 6/29       7/14 6/29 6/28 2年目1番草(月/日)
空欄は未開花
リュテス 6/27 6/14 6/27 7/10 7/10 6/26 6/29
ソア 6/29       7/14 6/29 6/29
キタワカバ 6/29       7/14 6/28 6/29
萌芽期 Arrow 2.8 4/5.0 5/8 5/4.0 5/11.0 4/13.0 4/28.5 2・3年目調査の平均(月
/日)北見は3年目のみ
北農試は萌芽良否(1:良
〜5:不良)
リュテス 3.1 4/5.0 5/8 5/1.5 5/11.5 4/12.5 4/28.0
ソア 2.7 4/5.0 5/8 5/3.0 5/11.0 4/12.0 4/28.0
キタワカバ 1.7 4/5.0 5/8 5/0.5 5/10.5 4/12.5 4/26.5
早春の
草勢
Arrow 3.0 1.0 2.9 2.4 2.4 1.8 1.5 2・3年目調査の平均(1:
良〜5:不良)北農試は3
年目のみ
リュテス 3.3 1.0 3.2 1.8 2.5 1.8 1.3
ソア 3.5 1.0 3.0 2.4 1.8 2.0 1.4
キタワカバ 3.0 1.0 2.4 1.6 1.5 1.6 1.3
越冬前
草勢
Arrow 3.6 1.0 2.6 2.2 2.0 2.0 2.7 3カ年に調査した値の平
均(1:良〜5:不良)
リュテス 2.8 1.0 2.3 1.7 2.0 1.9 2.2
ソア 4.2 1.0 3.0 2.4 2.4 2.2 2.7
キタワカバ 4.2 1.0 3.0 2.0 2.0 1.9 2.7
倒伏程
Arrow 3.5 2.7 3.2 2.8 3.3 2.7 2.4 3カ年に調査した値のう
ち品種間に差のあるも
のの平均(1:無〜5:甚)
滝川は(0:無〜5:甚)
リュテス 1.8 2.0 1.8 2.0 2.4 1.7 1.1
ソア 3.1 2.6 3.4 3.1 3.8 2.6 2.4
キタワカバ 3.0 2.3 2.4 3.0 3.9 2.6 2.9
2年目
乾物収
Arrow 105 95 101 84 96 111 96 対「キタワカバ」比(%)
「キタワカバ」は実収
(kg/a)
リュテス 89 96 93 78 96 87 84
ソア 92 92 101 84 96 92 100
キタワカバ 102.4 150.5 101.8 66.2 121.0 82.5 133.7
3年目
乾物収
Arrow 102 95 92 90 96 105 93 対「キタワカバ」比(%)
「キタワカバ」は実収
(kg/a)
リュテス 92 104 79 74 81 80 87
ソア 75 87 89 85 87 94 95
キタワカバ 133.0 138.2 86.4 67.6 133.3 104.1 142.3
3カ年
合計乾
物収量
Arrow 103 95 97 87 98 108 92 対「キタワカバ」比(%)
「キタワカバ」は実収
(kg/a)
リュテス 91 100 87 78 91 84 83
ソア 85 92 97 84 93 94 96
キタワカバ 278.0 336.8 237.8 157.6 310.9 217.9 310.8

11.成果の活用面と留意点
「Arrow」はバーティシリウム萎ちょう病に抵抗性で、収量も比較的安定している。普及対象地域は全道一円である。やや倒伏しやすいので刈遅れに注意する。種子供給開始年次 1991年。供給見込み量 20トン

12.残された問題とその対応
バーティシリウム委ちょう病抵抗性で安定多収、耐倒伏性品種の育成・導入

13.研究成果の区分 ①