【普及奨励事項】
1.課題の分類:
2.場所名:北海道農業試験場
3.奨励品種候補品種名:えん麦「アキワセ」

4.来歴:
えん麦品種「アキワセ」は、青刈り用極早生、多収品種の育成を目標にして、昭和53年に北海道農業試験場にいて中生青刈り多収の「本系712号」を母、極早生・短稈・耐倒伏性の「Paramo」を父として人工交配を行い、以後系統育種法により選抜固定をはかったものである。
昭和58年に「本系989号」の系統名で生産力検定予備試験、昭和60年から「北海44号」の系統名を付して系統適応性検定試験、特性検定試験を行い、平成元年に暖地および温暖地向き晩夏播用として命名、登録された。

5.特性:
形態的特性;叢性は直立型で株は閉じている。葉は濃緑色で、葉身は短く、葉幅は狭く、葉身の下垂度は小さい。稈長、穂長は「ウエスト」より長いが、同じ短に属し、穂数は「ウエスト」より少なく「オホーツク」より多く中である。茎は「ウエスト」より太いが「オホーツク」より細く、分級では「ウエスト」並の細である。小穂数は、「ウエスト」より多いが「ウエスト」なみの少に属し、穂形は散穂で、粒着の粗密は中である。芒は極少で、ふ色は淡黄色、粒の形は中で、大小は中である。
生態的特性;出穂期は「ウエスト」なみか1〜2日遅い程度の極早生で、「ウエスト」より出穂の揃いがよく成熟期は10日早い。茎の挫折荷重は「ウエスト」より大きく、clrは「オホーツク」なみで耐倒伏性である。冠さび病には弱い。

6.試験成績:
裏面に記載

7.配布しうる種子量:
長野種畜牧場の原原種 1,500kg
その他(北海道農試) 30kg

8.適地および普及見込み面積
全道一円 500ha

9.栽培上の注意:
1)牧草との同伴では、えん麦の播種量増によってえん麦の収量は増加するが、牧草収量は減少し同伴効果を減少させる。
2)同伴栽培において、えん麦の生育期間を延長し、刈取り時期を遅らせるとえん麦は収量増となるが同伴牧草は減収となり翌年の牧草を制御する。

6.試験成績
A 北海道農試における成績
(1)乾物収量
品種名 一斉刈り 出穂期刈り
刈取日
(月日)
生育
時期
乾物
収量
(kg/a)
収量比(%) 刈取日
(月日)
乾物
収量
(kg/a)
収量比(%)
ウエスト 前進 前進 ウエスト
アキワセ 6.26 出穂期 33.7 114** 122** 6.26 33.3 64△△ 117*
ウエスト(対照) 6.26 出穂期 29.6 100 107 6.26 28.4 55△△ 100
前進(標準) 6.26 7葉期 27.7 94 100 7.8 51.7 100 182**
アーリークィーン(比較) 6.26 出穂期 27.6 93 100 6.26 25.6 50△△ 90
アキユタカ(比較) 6.26 止葉期 33.3 113** 120** 7.2 45.7 88 161**
ハヤテ(比較) 6.27 出穂期 35.0 98 102 6.25 30.4 48△△ 101
注)1.「ハヤテ」は昭・63〜平・元の平均で、収量比は同年次の比較。
  2.*、**は比較品種に比べて5%、1%水準で有意に多収。
  3.△△は比較品種に比べて1%水準で有意に少収。

(2)採種量および諸特性(昭・60〜平・元の平均)
品種名 成熟期
(月日)
稈長
(cm)
倒伏 子実重
(kg/a)
同左ウ
エスト
比(%)
子実重
割合(%)
アキワセ 7.31 90 37.3 124** 44
ウエスト(対照) 8.11 76 30.0 100 38
前進(標準) 8.12 110 45.0 150** 43
アキユタカ(比較) 8.5 92 35.3 118* 37
オホーツク(比較) 8.15 109 44.7 149** 41
ハヤテ(比較) 8.7 92 42.5 101 39
注)1.「ハヤテ」は昭・63〜平・元の平均。
  2.*、**は比較品種に比べて5%、1%水準で有意に多収。

(3)オーチャードグラスとえん麦の同伴栽培(乾物)
処理区 1年目 2年目
Or
1番草
(kg/a)
2回刈り計 同左
合計
(kg/a)
えん麦
(kg/a)
Or
(kg/a)
Or単播 - 101.8
(100)
101.8
(100)
79.7
(100)
Or+アキワセ 39.3
(101)
85.2
(84)
124.5
(122)**
77.7
(97)
Or+ウエスト 39.0
(100)
70.2
(69)
109.2
(107)
69.1
(87)
Or+ハヤテ 40.5
(104)
70.0
(69)
110.5
(108)
68.0
(85)
注)1.昭・63〜平・元の成績。
  2.Or:オーチャードグラスの略
  3.( )はOr+ウエストまたはOr単播比(%)

B 根釧農業試験場における成績                          (昭・63〜平・元の平均)
品種名 出穂刈り 糊熟期刈り
出穂期
(月日)
乾総重
(kg/a)
ウエスト
比(%)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本/㎡)
倒伏
程度
乾総重
(kg/a)
ウエスト
比(%)
穂重率
(%)
乾物率
(%)
アキワセ 7.13 36.1 114 94 18.8 422 75.8 105 45.3 31.7
ウエスト(対照) 7.12 31.6 100 88 15.2 596 72.1 100 40.2 29.3
ハヤテ(比較) 7.13 33.6 106 96 17.4 566 75.6 105 38.8 28.7
オホーツク(比較) 7.28 59.6 187 119 24.1 345 82.5 114 30.2 24.3
注)1.糊熟期刈り:昭62、63は8月10日、平成元年は8月17日収穫。

C 天北農業試験場における成績(糊熟期刈り)
品種名 出穂期
(月日)
糊熟期
(月日)
倒伏
程度
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本/㎡)
乾物収量(kg/a) 穂部
重割
合(%)
乾物

(%)



同左比率(%)
ウエ
スト
オホー
ツク
アキワセ 7.9 8.15 0.8 98 17.2 417 54.9 42.0 97.0 111 94 56.4 41.7
ウエスト(対照) 7.8 8.23 0.8 85 12.5 576 46.1 41.3 87.4 100 85 85.7 39.0
オホーツク(比較) 7.22 8.27 1.3 111 22.9 246 52.5 50.7 103.2 118 100 50.8 37.7
ハヤテ(比較) 7.8 8.21 0.0 84 15.0 523 54.1 47.9 102.0 106 94 53.4 42.4
注)1.昭和62〜平成元年の平均、但し「ハヤテ」は昭和63年、平成元年の平均。
  2.倒伏程度は0:無または微〜5:甚。穂部は穂首から穂先までの重量。