完了試験研究成績  (作成 平2年1月)
1.課題の分類  総合農業 営農 経営 5-3-7
           北海道 経営
2.研究課題名  花き作の産地形成と技術体系 (道央地域における花き・野菜の流通機構と産地形成)
3.予算区分  道費
4.研究期間  (昭62年〜平元年)
5.担当  中央農試経営部経営科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 道央稲作地帯における転作部門の収益性向上の一環として、花きの産地形成並びに花き作経営の経営指標を策定する。

8.試験研究方法
(1)花きの需給動行分析
(2)出荷対応を軸とした産地形成のあり方(3)花き作経営の収益性分析と経営指標

9.結果の概要・要約
(1)本道農業における切花生産は、55〜60年平均21%と急速に伸びている。従来、切花の需給構造は冠婚葬祭の儀式用や生花需要に、都市近郊の花き専門経営が供給する形態をとってきたが、近年は需給構造が大きく変わってきている。
(2)まず、需要構造についてみれば、切花の用途別需要は業務用40〜60%、店頭用30〜40%生花用10〜20%と推定されるが、その動向をみると店頭用の大衆需要、次いで業務用が急増してきており、今後ともこの傾向が続くものと予想される。このような傾向を反映して切花の品目も、従来のキク・ユリ等から洋花へ重点移行しており、今後の伸びが予想される品目として、パラ、カスミソウ、カーネーション、スターチス、ストック、トルコキキョウ、洋ランなどがあげられる。
(3)このような需要構造の変化に対応して、切花の供給構造も大きく変化しており、従来の都市近郊・旧産地の専門経営に代わって、道央、道南の稲作地帯における複合経営が急増している。これらの新興の切花産地は、産地形成の経緯によって地場あるいは道内市
場中心の初発段階のものと道外移出割合の高い銘柄産地に区分することができる。
(4)新興産地の代表であるT町の産地形成は生産組合主導型の典型であろう銘柄産地形成のポイントは生産組合が中心となって、①農業高校の先生と連けいを取り、後継者を事前に養成したこと、②市場に仲間を送り修行させたこと、③先進農家での修行、④先進産地・市場への視察研修、⑤組合員間の技術平準化の推進、⑥基幹品目の共選体制(カーネーションの一本共選)を確立したこと、⑦生産資材の共同入札制を設けたことなどが挙げられる。
(5)花きの収益性は表1のとおりである。花きは、米、麦と異なり10a当りの粗所得(土地生産性)は高いが時間当りの粗所得(労働生産性)は低い。しかし、冬期間の遊休労動や老齢者の労働力も効率的に燃焼できるので、生産調整が強化されつつある本道稲作地帯で、新作目として導入するメリットは大きいものと推定される。
花きの新規導入に際しては、価格及び技術面でのリスクが大きいので、作り易い品目から徐々に導入すべきであり、したがって、当初は水稲を基幹とした複合経営から出発するが、花きが基幹作目になった時点で、労働競合の面から専門化すべきである。
(6)経営指標として、高収益花き作複合経営と花き作専門経営の営農類型、品目別投入産出係数と作業体系を策定した。

10.成果の具体的数字

表1  花きの収益性と生産性(10a当たり)
作\区分 在圃
期間
収量 粗生産額 物財費 粗所得 投下労
働時間
時間当
粗所得
期待
粗所得
水稲 1年 8.3俵 129.0千円 24.3千円 104.8千円 18.8時間 5,574円 104.8千円
秋小麦 1 6.6俵 57.4 20.6 36.8 6.1 6,033 76.8
春小麦 1 5.0俵 43.5 17.3 26.2 6.2 4,246 66.2
カーネーション
(春植・直定)
1 48,000本 2,640.0 1,974.8 665.2 459.0 1,449 705.2
カーネーション
(秋植・直定)
1 76,800本 41,608.0 3,481.2 1,126.8 826.6 1,363 1,166.8
カーネーション
(春植・ポット)
1 48,000本 2,880.0 2,287.4 592.6 580.8 1,020 632.6
宿根スターチス
(ミスティブルー)
3 12,666本 2,633.4 2,170.0 463.4 478.2 969 503.4
カスミソウ 2 10,615本 1,776.5 1,261.2 515.3 537.6 959 555.3
デルフィニュウム 2 14,250本 1,355.0 874.8 480.2 394.2 1,218 520.2
トルコキキョウ 1 19,200本 2,112.0 949.4 1,162.6 499.8 2,326 1,202.6
ユリ
(ハイブリッド系)
1 8,640本 5,616.0 5,218.2 397.8 424.4 937 437.8
注1)期待粗所得には、粗所得に転作奨励金4万円が加算されている。
 2)在圃期間2年以上の作物は、在圃期間の平均値とする。
 3)花きの10a当たり投入・産出は、100坪ハウス2棟分とする。
 4)物財費は、消耗品費、原価償却費(但し、施設・機械は含まれない)と販売経費である。


11.成果の活用面と留意点
(1)普及上の留意点
 作業体系や投入経費については、ほぼ全道の稲作地帯に適用できるが、収益性を試算するための価格水準は、銘柄産地価格を適用しているので注意されたい。投下労働時を新産地に適用する場合は除草労働と収穫労働を1.5〜2倍に見積る必がある。

12.残された問題とその対応
花きの中央卸売市場が整備されていないことと、品目が多すぎるため、正確な花きの品目別・月別価格資料を入手できなかったので十分な価格分析ができなかった。他日を期したい。