完了試験研究成績  (作成 平2年1月)
1.課題の分類  総合農業 営農 経営 7-7-1
           北海道 経営
2.研究課題名  地域農業診断における地域農業情報の利用
           (地域農業診断にもとずく農業経営情報の評価およびシステム化)
3.予算区分  道費
4.研究期間  (昭60年〜平1年)
5.担当  道立中央農試経営部経営科
6.協力・分担関係  十勝農試経営科、根釧農試経営科


7.目的
 農業情報の合理的な処理による農業生産性および農業所得の向上を目指し、地域の農業情報をシステム化し、これを利用した地域農業診断モデルを開発し、地域農業の振興を目標とする農業情報の効果的な提供および利用を図る支援システムのあり方を検討する。

8.試験研究方法
1)農業情報利用の現状とニーズ調査 (昭和62年栗山町、昭和63年南幌町)
2)地域農業情報のシステム化の検討
3)地域農業診断モデルの開発と適用

9.結果の概要・要約
(1)農業情報の現状は、道央耕種地帯では組織的な提供がなされておらず、①適時性、②容易性に問題がある。ニーズについては、農家の経営形態、基幹作物、経営主の年齢などによる違いが認められたので、これに応じた効果的な情報提供が望まれる。道央耕種地帯では、病害虫情報、土壌診断情報に対するニーズが大きかった。作物では特にメロン作農家の技術情報ニーズが強かった。
(2)地域の各機関に所蔵されている地域農業情報をシステム化する手順を明確にし、フォーマットの統一(集落区分、属人、属地の統一)を行い、パソコン上に簡易言語によるミニ・データベースを作成した(表1)。①各機関におけるOA化の進展で既存データが活用可能となり再入力が不要。②情報処理機器の既存資源の利用や価格低下などから情報システム化のコストはそれほど大きくはない。③情報の種類が公表されることを前提とした公共財的なものよりは入手によって利益が得られる経済財(戦略)の性格が強まるものほど公開・利用は困難性を増す。
 このように地域情報のシステム化を進めるためにはコスト面よりは、情報の特性の違いにより制約があることが判明した。
(3)地域農業情報の利用場面として農業診断モデルを開発した(図1)。特徴は①センサスなど特定の統計資科に依存せず地域のデータベースを活用、②集落単位の診断、③農家の営農に関する意向を重視。また、診断項目としては①生産概況、②生産環境、③部分診断(作物別、集落別)、④総合診断である。
(4)栗山町における診断モデルの適応結果では、基幹作物である米、たまねぎ、じゃがいも、メロンは土壌特性に応じた栽培が行われており、これらの作物に特化した集落の農業販売額が大きい。集落の類型化では、おおよそ7グループに区分された(図2)。農家の意向を考慮した総合診断では、各基幹作物ごとにそれぞれ問題を抱えていること、集落毎に集約化と規模拡大の志向があり、これらを踏まえた経営発展のための条件づくりが必要であることが判明した。
 このような認識が地域機関において共通化され、情報のシステム化の有効性を確認できた。

10.成果の具体的数字

表1  地域農業データベース一覧
  ファイル名 内容 所蔵場所 年次 備考
1 HANBAI 地域の販売実績(組勘) 農協 昭和60年〜63年 非公開
2 KASHITUKE 農家の借入れ実績(組勘) 農協 昭和60年〜63年 非公開
3 SHIHYO 作物毎の所得率、労働時間 研究会 昭和61年 非公開
4 YASAI 野菜出荷実績 農協 昭和61年〜63年  
5 SAKUTIKE 作物別作付面積 役場 昭和60年〜63年  
6 TENSAKU1 転作実績 役場 昭和60年〜63年  
7 TENSAKU2 助成金 役場 昭和60年〜63年  
8 KOME1 1等米出荷 役場 昭和60年〜63年  
9 RYOSHITU 良質米作付実績 役場 昭和60年〜63年  
10 KIHON 集落別の農地、家族 役場 昭和60年〜63年  
11 DOJHOU 土壌 改良普及所 平成元年度  
12 KAIRYOKU1 整備水準(用水、排水等) 土地改良区 平成元年度  
13 KAIRYOKU2 賦課金水準 土地改良区 平成元年度  
14 KAIRYOKU3 土地改良事業計画 土地改良区 平成元年度  
15 NOUCHI1 農地の利用権設定実績 農業委員会 昭和60年〜63年  
16 NOUCHI2 農地の売買実績 農業委員会 昭和60年〜63年  
17 NOUCHI3 農地の集落別所有状況 役場税務 昭和60年〜63年  
18 NOUGAI 農外所得 農民協 昭和60年〜63年  
19 ANK アンケート 農協 昭和60年  


図1  集落の類型化


図2  地域農業診断モデルの構成






1.地域の農業生産概況 (品目別農産物販売額、土地、労働生産性 etc.)
2.農業生産環境 (基盤整備、土壌、農地、労働力の賦存量 etc.)
3.部分診断
 (1)主要作物別 (後継者、作付面積、意向 etc.)
 (2)集落類型別 (主要品目、専業率、販売額、意向 etc.)
4.総合診断
 (計画されている生産環境の変化や、農家の意向を反映した地域農業分析と解決すべき問題点 etc.)


11.成果の活用面と留意点
 情報のデータベース化に際しては地域の各機関の協力が不可欠で、とくに経済データについては、その取扱方法などについて十分な協議が必要である。地域計画策定等における前処理として利用が可能である。その場合には類型化された集落の特性(土地、労働力の賦存量、兼業、集約化などの農家の意向)に十分留意すべきであり、計画段階では異質な集落の補完、補合的な結合も検討する必要がある。

12.残された問題とその対応
 情報化の進展は、データの扱いの容易さを加速化しているが、システム化には地域の各機関におけるOA化段階から情報利用の向上が必要であり、気象など外部情報の利用も含め今後とも地域データの活用方法の開発が要請されている。