【普及奨励事項】
                        作成平成3年1月
1.課題の分類 北海道 畑作 てんさい
2.場所名 北海道立中央、上川、北見、十勝、根釧農業試験場
3.新品種候補系統名 てんさい「HT 3」

4.来歴
「HT 3」はスウエーデンのヒレスヘッグ種子会社が育成した、二倍体単胚の一代雑種である。ヒレスヘッグ種子会社で育成した、二倍体単胚雄性不稔系統「MS-289-0」と二倍体多胚花粉親系統「2X/20」の交配により昭和60年に育成された。
1)昭和62年北海道糖業株式会社が輸入し、「Hill mono 8302」の系統番号で輸入品種検定予備試験を行った。
2)昭和63年から「HT 3」の系統名で中央、上川、北見、十勝農試等が輸入品種検定試検に供試し、平成2年まで試験を実施した。
3)平成元年から平成2年まで、十勝、北見農試で品質特性検定試験、十勝農試で栽培特性検定試験と褐斑病抵抗性検定試験、中央農試で耐湿性検定試験、根釧農試で抽苔耐性特性検定試験を行った。
4)平成元年から平成2年まで、全道18ケ所で現地検定試験を行った。

5.特性
1)形態的特性「HT 3」は「スターヒル」と同程度の葉長で、葉色が緑、葉形がやや皮針で、葉
姿がやや開平型である。クラウンは小さく、露肩は中で根形は短円錐形で分岐根が少
ない。
2)根重根重は「モノホマレ」、「スターヒル」より劣り、「モノエース・S」並である。
3)根中糖分根中糖分は「モノホマレ」、「スターヒル」より高く、「モノエース・S」に近い高
糖性を示す。
4)耐病性てんさいの主要病害である褐斑病に対しては、「スターヒル」同様に弱く、その他の
病害についても「スターヒル」との差はほとんどない。
5)抽苔耐性「モノホマレ」、「スターヒル」と同様に抽苔耐性は強く、当年抽苔することはほと
んどない。
6)品質有害性非糖分の含有率は、アミノ態窒素とカリウムが「モノホマレ」、「スターヒル
」、「モノエース・S」よりやや低く、ナトリウムが「モノホマレ」、「モノエース・
S」よりかなり低く、「スターヒル」並である。また、不鈍物価は「モノホマレ」、
「モノエース・S」、「スターヒル」より低く、品質は良好である。
7)耐湿性耐湿性は「スターヒル」、「モノエース」より強い。

6.試験成績
各農試における成績(昭和63年〜平成2年の3ヶ年平均)

系統名または
品種名
根重
(t/10a)
根中糖分
(%)
糖量
(kg/10a)
不純
物価
(%)
対「モノホマレ」比(%)
根重 根中糖分 糖量 不純物価



HT 3 7.58 17.03 1,291 3.65 93 105 97 87
スターヒル 7.92 16.65 1,321 3.96 97 102 100 94
モノエース・S 7.57 17.18 1,302 3.93 93 106 98 93
モノホマレ 8.16 16.26 1,327 4.21 100 100 100 100



HT 3 5.69 18.15 1,034 3.12 87 103 90 97
スターヒル 6.29 17.85 1,123 3.19 97 101 98 99
モノエース・S 5.95 18.26 1,086 3.21 91 103 94 100
モノホマレ 6.51 17.67 1,151 3.21 100 100 100 100



HT 3 6.38 17.95 1,144 4.16 93 103 96 88
スターヒル 6.66 17.77 1,182 4.49 97 101 99 95
モノエース・S 6.39 17.70 1,128 4.79 93 101 94 101
モノホマレ 6.84 17.51 1,196 4.72 100 100 100 100



HT 3 6.30 17.34 1,089 3.44 97 103 100 92
スターヒル 6.50 17.09 1,108 3.57 100 101 100 96
モノエース・S 6.22 17.50 1,087 3.53 96 104 99 95
モノホマレ 6.50 16.85 1,093 3.72 100 100 100 100


HT 3 6.71 17.16 1,152 3.39 90 103 93 93
スターヒル 7.04 17.11 1,205 3.54 95 102 97 98
モノエース・S 6.43 17.40 1,118 3.41 89 105 93 94
モノホマレ 7.42 16.72 1,242 3.63 100 100 100 100
注)北農試「モノエース・S」は平成元年〜2年の2ケ年平均。

7.配布しうる種子量 平成3年 800㎏、平成4年以降 1,500㎏

8.普及対象地域及ぴ普及見込面積
道央、道南地域およびこれに準ずる地帯。
平成3年 800ha、平成4年以降 1,500ha

9.栽培上の注意
1)根中糖分や品質を低下させる多肥栽培はさける。
2)「スターヒル」と同様に褐斑病に弱いので、適期防除に留意する。
3)その他の栽培法は「スターヒル」に準ずる。