【普及奨励事項】
1.課題の分類
2.場所名  北海道農業試験場 北海道立中央農業試験場 北海道立北見農業試験場
3.新品種候補名  「試交21-15」(天心)

4.来歴
北海道向けの乾腐病抵抗性と高貯蔵性を有した多収性品種の育成を目的とした。米国で育成された細胞質雄性不稔系統を種子親とし、北海道産の「そらち黄」よリ選抜された自殖系統を花粉親とした一代雑種である。
育成者 日本農林社

5.特性の概要
1)種子特性および苗生育
種子千粒重は、4.12㎏で「ツキヒカリ」よリ軽いが、発芽率及ぴ苗の生育は「ツキヒカリ」、「北もみじ」と同程度で、移植後の生育も良好である。
2)葉部生育
草姿は「そらち黄」等の在来種と同程度にやや開張し、葉鞘もやや太い。葉部の生育程度は「ツキヒカリ」と差異はなく、葉色等その他の葉部形質についても、「ツキヒカリ」、「北もみじ」と差異はない。
3)早晩性
球の肥大開始は、遅れる年次もあるが、概ね「ツキヒカリ」と同程度でやや遅い方である。倒伏は「ツキヒカリ」よリ5日、「北もみじ」よリー週間程度遅いが、倒伏後の枯葉が早まる傾向があるため、収穫期は「ツキヒカリ」と同程度となる。なお、北見地方では、年次によって「北もみじ」より2週間以上倒伏が遅れることがある。総じて、本系統は「ツキヒカリ」よリやや遅い晩生に属する。
4)耐病虫性
乾腐病に対しては、同病抵抗性の「ツキヒカリ」、「北もみじ」と同程度で、「ひぐま」等の大球型品種より明らかに強い。乾腐病に対しては「北もみじ」よりやや多い傾向にあるが、特に感受性とはいえない。生育の遅れた年次には生育後期にボトリチス属菌に罹病しやすく、風乾中および貯蔵中の腐敗が多発することがある。
5)収量性
球の肥大性は、「ツキヒカリ」よリ明らかに勝り、一球重が重く、総収量、規格内収量とも「ツキヒカリ」、「北もみじ」よリ多収を示す。年次によって、裂皮球や変形球が多発する事もあるが、総じて規格内率は「ツキヒカリ」と同程度に高い方である。
6)球の外観品種
球はやや柔らかい。外皮色は「ツキヒカリ」よりやや淡い黄銅色を示す。特に北見地方でその傾向が著しい。球形は地球型で「北もみじ」よりやや甲高で首部が太い。揃いは良好である。
7)貯蔵性
4月以降の貯蔵後期に発根が早まる傾向が認められるが、高貯蔵性品種である「ツキヒカリ」、「北もみじ」と同程度に萌芽が遅い。なお、生育の遅れた年次に、主としてボトリチス属薗による貯蔵中の腐敗が多発する傾向が認められる。

6.試験成績概要


品種名
及び
系統名
規格内収量(kg/a) 同左比(%) 平均
1球重
(g)
規格内

(%)
倒伏

(月日)
貯蔵前
腐敗率
(%)
貯蔵後
健全率
(%)
63 1 2 平均 63 1 2 平均


試交21-15 648 522 544 571
(585)
126 117 124 123
(122)
183
(189)
96.6
(96.4)
8.15
(8.20)
2.8
(3.2)
85.2
ツキヒカリ 515 444 437 465 100 100 100 100 151 94.9 10 1.9 77.0
北もみじ 513 458 472 481 100 103 108 103 158 94.7 10 1.9 87.1
ひぐま 566 504 - (535) 110 113 - (111) (181) (91.0) (8.12) (5.8) 63.4



試交21-15 612 480 371 480 123 132 117 124 200 82.1 8.19 9.0 (35.0)
ツキヒカリ 500 363 316 393 100 100 100 100 172 78.4 12 7.4 (53.3)
北もみじ 517 369 424 437 104 102 134 111 168 84.6 8 3.3 (33.3)
ひぐま 444 436 397 426 89 120 126 108 206 75.5 4 13.0 -



試交21-15 713 656 629 666
(671)
101 111 108 106
(105)
232
(237)
95.4
(94.4)
8.18
(8.15)
3.6
(3.6)
33.0
(37.3)
ツキヒカリ 704 591 582 626 100 100 100 100 229 91.3 14 2.5 66.1
北もみじ 794 582 581 652 113 99 100 104 223 95.5 10 2.2 65.2
ひぐま 785 - 633 (709) 112 - 109 (110) (267) (89.0) (8.8) (5.4) (29.6)


試交21-15   909 428 669   146 127 139 229 95.2 7.29 2.7 98.7
ツキヒカリ   624 338 481   100 100 100 182 87.8 25 2.9 98.7
北もみじ   610 280 445   98 83 91 157 92.1 7.21 2.3 97.3


試交21-15 802 1034 836 891 90 147 120 116 322 87.9 - 3.9 57.5
ツキヒカリ 893 706 696 765 100 100 100 100 251 96.3 - 1.6 59.0
北もみじ 839 684 716 746 94 97 103 98 247 97.3 - 6.5 51.2


試交21-15 655 405 601 554 125 (65) 122 101 275 75.2 8.17 0.3 66.1
ツキヒカリ 526 621 492 546 100 100 100 100 245 83.0 9 1.9 74.8
北もみじ 594 584 457 545 113 94 93 100 219 92.9 4 1.8 57.8

試交21-15 (686) 668 568 641 (109) 120 119 116 240 88.7 8.13 3.7 62.6
ツキヒカリ (628) 558 477 554 (100) 100 100 100 205 88.6 7 3.0 71.5
北もみじ (651) 548 488 562 (104) 98 102 101 195 92.9 3 3.0 65.3
注)貯蔵後健全率は昭63年、平成1年の平均。北農試の( )は、昭63、平成1年の平均。
中央農試の( )は、昭63年のみの値。北見農試の( )は、昭63年、平成2年の平均、但し、貯蔵後健全率は昭63年のみの値。岩見沢市は、平成1、平成2の平均。但し、貯蔵試験は平成1年のみ、なお、平成2年の低収は湿害による。北見市の( )は一斉収穫により、規格外(青切り)が多発したことによる低収。

7.適応地域および用途
全道のタマネギ栽培地帯における春まき露地移植栽培に適するが、網走管内では倒伏の遅れにより、外皮の着色不良や貯蔵腐敗が多発する事がある。大球型の多収性を示すことから、業務用に適する。

8.保有種子量
平成3年度 25㎏、4年度 250㎏

9.栽培上の留意点
「ツキヒカリ」、「北もみじ」等従来の品種と同様でよいが、生育が遅れた場合にボトリチス属菌による腐敗が発生しやすいので、生育後期の防除に努める。また、晩生に属するので多肥栽培を避け、根切り処理による枯葉の促進が必要である。