1.課題の分類 北海道 果樹 繁殖−オウトウ 繁殖 2.研究課題名 組織培養によるオウトウわい性台木の繁殖技術確立試験 3.予算区分 道単 4.研究期間 昭和63年〜平成2年 5.担当 中央農試・野菜花き第一科 6.協カ・分担関係 なし |
7.目的
オウトウわい性台木の組織培養による増殖方法について検討する。
8.試験研究方法
1)採取組織の培養に関する試験
(1)茎頂培養法
材料および殺菌: | 中央農試園芸部果樹園に栽植されている道南農試選抜系統チシマザクラ「C-84」を 供試材料とした。昭和63年4月、越冬芽を採取し、次亜塩素酸ナトリウム(有 効塩素0.4〜0.5%)で殺菌し、約2mmの大きさに茎頂組織を切リ取リ、培地に置床。 |
培地条件: | Linsmaire&Skoog(LS)培地(シュークロース3%、寒天0.7%)に所定の6-Benzylaminopurine (BA)を0.3、1.0、3.0㎎/L加えた3種類の培地で検討した。なお、pHは、5.7に調整。 |
培養条件: | 温度25℃、照度3000〜5000Lux、16時間照明、20〜30日で継代培養。 以下の培養試験も同様。 |
材料および殺菌: | 長沼町に栽植されていたチシマザクラの腋芽を含む節約10mmを昭和63年6月15日 に採取し、常法によリ殺菌し、節の両端を切断、約7mmに調整し、培地に置床。 |
培地条件: | LS培地に、BA 3.0㎎/L,GA3 1.0㎎/Lを加えた。 |
材科: | 継代培養中に得られたまだ展葉しない2〜3mmの芽の塊を芽数2〜3に分割し、材料とした。 |
培地条件: | LS培地に所定のBA0.1、0.3、1.0、3.0mg/L加えた、4種類の培地で検討した。 |
材科: | 伸長シュートを作るために培養されたロゼットシュートを分割し、供試した。 |
培養条件: | LS培地にBA1.0㎎/Lおよび所定のGA30、0.1、1.0、3.0㎎/L、GA4+70、0.1、1.0、3.0、 5.0㎎/Lを加えた培地で検討した。 |
材料: | 継代培養中に得られたロゼット状シュート |
培地条件: | LS培地、LS培地の無機塩を1/2にした培地(1/2LS)に所定のIndolebutyricacid(IBA)を 0.1、1.0㎎/Lを加えた4種類の培地で検討した。 |
材料: | GA4+7を加えた培地で得られた伸長シュートおよぴLS培地BA1.0mg/Lで継代培養中に得ら れた伸長シュート |
培地条件: | 1/2LS培地にIBAを1.0mg/L加えた。 |
9.試験結果の概要・要約
(1)越冬芽を利用する方が夏期の休眠芽より培養効率は高くなる。
(2)初代培地は、LS培地、BA1.0〜0.3mg/Lで培養し、培養40日後からは、LS培地BA1.0mg/Lで20〜30日間隔で継代培養する。
(3)培養5ケ月〜8ケ月はロゼット状シュートの分割移植によって増殖をくり返す。(増殖率2〜3倍/20日)
(4)培養8ケ月以降はロゼット状シュートの分割移植、展葉しない芽の培養(増殖率14倍/20日)を併行して増殖をくり返す。
(5)発根は前培地のGA4+7濃度が低いと良好な結果を示したので、ロゼット状シュートをLS培地BA1.0㎎/L、GA4+70.1㎎/Lに移植し、伸長シュートを得る。(伸長シュート獲得数10本/株/40日)。
(6)伸長シュートを約2cmに切り1/2LS IBA1.0㎎/Lの培地に移植して発根させる。
(7)ロゼット状シュートからの発根も容易であるが、鉢上げ後の活着は極めて困難である。
(8)鉢上げ後の活着は容易であるが、休眠に入りやすい。休眠は越冬させると解除される。
10.成果の具体的数字
第1表 BA濃度のシュートの生長
BA 濃度 |
5月6日(培養24日後) | 6月5日(培養53日後) | ||||||
生存数/置床数 | 幅 | 高さ | 葉数 | 生存数/置床数 | 幅 | 高さ | 葉数 | |
㎎/L 0.3 |
4/6 | cm 0.8 (0.3〜2.0) |
cm 0.6 (0.3〜1.0) |
枚 0.8 (0〜2) |
0/6 | - | - | - |
1.0 | 4/6 | 1.2 (0.3〜2.0) |
0.8 (0.5〜1.0) |
1.3 (0〜2) |
4/6 | 2.4 (1.5〜5.0) |
1.4 (1〜2) |
6.8 (4〜14) |
3.0 | 4/6 | 2.1 (0.5〜3.0) |
0.7 (0.3〜1.0) |
1.8 (0〜4) |
2/6 | 5.0 (5.0) |
2.5 (2.0〜3.0) |
12 (12) |
第2表 培養経過
1〜3ケ月 | 5ケ月〜8ケ月 | 8ケ月〜18ケ月 | 18ケ月〜 |
芽数の増加しない ロゼット状シュート の生長 |
芽数の増加による増 殖、およびロゼット 状シュート分割移植 による増殖 |
分割移植による増殖 芽の移植による増殖 |
分割移植による増殖 芽の移植による増殖 伸長シュートが得られる |
第3表 BA濃度と展葉しない芽の培養(培養20日後)
BA濃度 | 置床数 | 枯死数 | 展葉数 | 株当り 芽数 |
株当りロゼット シュート数 |
葉の状態 |
㎎/L 0.1 |
個 4 |
個 3 |
個 1 |
1 (1) |
1 (1) |
正常葉 |
0.3 | 4 | 1 | 3 | 3.3 (2-5) |
3.3 (2-5) |
正常葉 |
1.0 | 10 | 1 | 9 | 14.2 (12-21) |
8.7 (5-16) |
ヤ柳 |
3.0 | 8 | 3 | 5 | 0.8 (7-13) |
1.8 (1-3) |
柳葉 |
第4表 GA4+7濃度とシュートの伸長
GA4+7 | 置床数 | 株当り伸長シュート数 | 葉の形態 | ||
20日後 | 40日後 | 計 | |||
0mg/L | 15本 | 0本 | 0本 | 0本 | ヤヤ柳葉 |
0.1 | 15 | 0.5 | 10.9 | 11.4 | ヤヤ柳葉 |
1.0 | 15 | 0.7 | 10.3 | 11.0 | 柳葉 |
3.0 | 15 | 0.6 | 14.2 | 14.8 | 柳葉 |
5.0 | 15 | 0.9 | 4.6 | 5.5 | 小葉・柳葉 |
第5表 前培地のGA4+7の濃度における
伸長シュートからの発根(移植後40日)
前培地の GA4+7濃度 |
置床数 | 発根 個体 |
発根率 |
0.1mg/L | 53個 | 45個 | 85% |
1.0 | 37 | 26 | 70 |
3.0 | 33 | 20 | 61 |
第6表 前培地のGA4+7添加と
無添加の比較(移植後40日間)
前培地 | 置床数 | 発根 個体 |
発根個体の | |
根数 | 根長 | |||
BA 1.0 | 11 | 11 (100%) |
9.6本 (3-16) |
4.6cm (3-7) |
BA 1.0+ GA4+71.0 |
18 | 16 (89%) |
5.6 (2-14) |
1.8 (1-3) |
11.成果の活用と留意点
オウトウわい性台木の増殖法の1つとして利用する。
12.残された問題とその対応
台木養成までの年限短縮