1.課題の分類 野菜 野菜 栽培 イチゴ 栽培一般・繁殖 北海道 2.研究課題名 イチゴの空間採苗による無病苗の大量増殖法 (寒地型優良無病苗の大量増殖法に関する研究) 3.予算区分 民間との共同研究 4.研究期間 昭和62年〜平成元年 5.担当 道南農試園芸科 6.協力・分担関係 北海三共株式会社 |
7.日的
育苗中における土壌病害汚染回避のための無病培土(園芸用粒状培上)のイチゴ育苗適応性を検討するとともに、ウィルスフリー化処理したイチゴ苗の大量増殖法を開発し優良苗の普及推進をはかる。
8.試験方法
1)園芸用粒状培土のイチゴ育苗適応性試験
(1)培地量および育苗管理法による育苗効率向上試験
初年次 | 2年次 | |
育苗管理法 | 水耕育苗・土耕育苗法 | 同左 |
培地の種類 | 粒状園芸培土・籾がらくんたん | 同左 |
鉢当培地量 | 200mL・300mL | 300mL |
N含有量(mg/L) | 少肥120・中肥150・多肥180 | 中肥180・多肥200 |
(2)本ぽの種類における育苗培地の適応性試験
本ぽの種類 | 水耕栽培 | 一般土耕栽培 | 一般土耕栽培 |
供試苗 | 水耕育苗苗 | 水耕育苗及土耕育苗苗 | 水耕育苗及土耕育苗苗 |
水耕施肥量 (養液EC) |
低 | 鉢上げ後 | 10日〜 | 20日〜 | 30日〜 | 40日 | 鉢上げ後 | 10日〜 | 20日〜 | 30日〜 | 40日 |
0.4 | 0.4 | 0.6 | 0.8 | - | - | - | - | ||||
中 | 0.4 | 0.6 | 0.8 | 0.8 | 0.4 | 0.6 | 0.8 | 1.0 | |||
高 | 0.6 | 0.8 | 0.8 | 0.8 | 0.6 | 0.8 | 1.0 | 1.0 |
2)ウィルスフリー化処理苗の大量増殖法確立試験
(1)無病苗の採苗法試験(親株の採植密度とN含有量)
品種 | 宝交早生・夏秋77号 | 同左 |
採苗時苗大 | 3葉・4葉・5葉 | 2葉・3葉・4葉 |
鉢当培地量 | 200mL・300mL | 300mL |
N含有量(mg/L) | 少肥120・中肥150・多肥180 | 同左 |
(2)空間採苗における子株の育苗法試験
品種 | 宝交早生・夏秋77号 | 宝交早生・夏秋77号・盛岡16号 |
基肥量(mg/L) | 少肥120・中肥150・多肥180 | 少肥100・中肥150・多肥200 |
春追肥量(mg/L) | − | 少肥50・中肥75・多肥100 |
親株栽植本数(株) | 3株・4株・5株・6株・8株・10株 | 3株 |
9.結果の概要・要約
1.園芸培土は苗素質の充実良化に極めて高い効果が認められた。粒状のため通気性が良いことや保水性・毛管上昇が良いことなどに起因すると考えられ、イチゴ育苗における無病培地として適応すると判断された。
2.収量性には、苗素質と活着性が大きな影響力をもつが、園芸培土は特に重量的形質(葉重・クラウン重・根重)の苗充実が優れており、また活着性も良好であり、結果的に水耕栽培や土耕栽培ともに多収性が認められた。
3.育苗培地量は少ないことが経済的であるが、収量性から300mL/鉢が良好である。
4.育苗培地の肥料成分は180mg〜200㎎/Lが適当であった。
5.採苗方法は、無病苗採苗を前提にしたため空間垂下方式を試みた。親株の培地量は1株当5L程度が良好で、厚さ10cm程度で0.05㎡(培地1㎡=20株植)で良い。
6.空間垂下方法は、子株を着地させずに3次〜4次苗まで採苗するので1m〜1.2mの高設台に親株箱を置く。垂下中の子株は、葉は普通に経日増加するが根は伸長できずに茎部肥大の状態に止まっており、これら全子株を同時に採苗し鉢上げ育苗するが4次の2葉苗においても適水分管理であれば、180㎎〜200㎎/Lの多肥条件でも活着は順調に進み苗素質は良化する。しかし大苗傾向で苗素質がなお良化し多収性を示すので、ランナ発生を促進させるように親株の保温時期(ハウス搬入)を早めることも良策と考えられる。
10.成果の具体的データ
第1図 育苗法と培地およびN含有量
第2図 本ぽ種類と育苗培地適応性
第3図 親株の栽植密度と採苗数
第4図 親株のN含有量と採苗数
第5図 空間採苗における子株の育苗株
第6図 採苗時苗大と育苗N含有量の収量性
11.成果の活用面と留意点
1)当培土は粒状であり、水分が少ないため粘着性が弱く、鉢の底穴から流出しやすいので底面に寒冷紗の切片を敷いて充填する。
2)通気性が良いため乾燥しやすいので灌水に留意する。
12.残された問題点