【指導参考事項】
成績概要書                   (作成平成3年1月)
1.課題の分類  北海道 花き 栽培−トルコギキョウ 栽培一般
2.研究課題名  トルコギキョウの栽培法に関する試験
3.予算区分  道単
4.研究期間  昭和63年〜平成2年
5.担当  中央農試園芸部野菜花き第二科
6.協力・分担関係

7.目的
トルコギキョウについて、本道の立地条件を活かし、府県の端境期に向けて移出を拡大していくための作型開発および品質向上を図るための栽培法を検討し、本道特産花きの生産安定と拡大に資する。

8.試験研究方法
1.試験実施場所:中央農試園芸部圃場
2.土壌条件:褐色低地土(細粒質)
3.施設:無加温パイプハウス(間口5.4×奥行20m)
1)播種時期に関する試験(昭和63年〜平成2年)
処理区別:3月10日・4月10日(昭和63年),2月14日・3月14日・4月14日(平成元年),
2月9日・3月12日・4月13日・5月11日(平成2年)
供試品種:嵯峨の紫,嵯峨の雪,紫の峰(平成2年),あずまの雪(平成2年)
2)育苗温度に関する試験(昭和63年〜平成2年),圃場,プランター(平成2年)
処理区別:処理温度(昼温−夜温),昭和63年(20-20,35-35),平成元年(20-20,35-20),
平成2年(30-15,30-22.5,30-30℃)
供試品種:嵯峨の紫,嵯峨の雪,紫の峰(平成2年),あずまの雪(平成2年)
種種期:3月20日(昭和63年),3月14日(平成元年),3月12日・4月13日(平成2年)
3)土壌pHに関する試験(平成元年),〔ポット試験〕
処理区別:土壌pH5段階,供試品種:紫苑,播種期:3月10日
4)液肥窒素施用法について(昭和63年〜平成2年),〔枠試験〕
処理区別:液肥窒素濃度(0,100(昭和63・平成元年),200,300,400(平成2年),500ppm(平成2年))
供試品種:朝の峰(昭和63年),嵯峨の紫(平成元年),紫の峰(平成2年)
播種期:3月10日(昭和63年),3月14日(平成元年),3月12日(平成2年)

9.結果の概要・要約
1)播種時期に関する試験
播種時期が遅くなるにつれて到花日数は短くなり、それに伴い切花長、切花重が減少し、切花としてのボリュームが減少した。したがって5月の播種は切花品質の面から不安定である。また2月播種、5月定植では定植までに苗が老化する。以上のことから5月中旬定植、無加温ハウス栽培(8月下旬〜9月上旬採花)では3月中旬播種が適当である。
2)育苗温度に関する試験
ロゼット発生には品種間差があることがわかった。またその原因は育苗中の高い夜温にありその発生限界温度は20℃前後と思われる。したがって播種期が遅れるほどロゼット発生の可能性は高い。夜温が20℃以上ではロゼット発生の危険性がある。
3)土壌pHに関する試験
pH3.86の区は定植直後からクロロシスをおこし生育は極端に劣り採花には至らなかった。pH5.5〜6.5で生育は同等であったが、後作を考慮にいれて野菜畑土壌診断基準に準じ好適土壌pHは6.0〜6.5が適当である。
4)液肥窒素施用法について
窒素濃度が高まるにつれて切花重、有効蕾数は高まるが、切花長は無窒素区を除いては差はみられなかった。切花重は窒素濃度300ppm以上でその伸びは緩慢となった。また300ppm区の総窒素施用量は3kg/aであった。褐色低地土において、好適液肥窒素濃度は300ppm(1回当り.0.3kg/a,10回施用)が標準である。

10.成果の具体的数字
1)播種時期に関する試験(平成2年度成績)
供試品種 播種
定植
採花始
(月.日)
到花日
切花長
(cm)
切花重
(g)
嵯峨の紫 2.9 5.11 8.8 180 65 52
3.12 5.11 8.12 154 68 61
4.13 6.11 8.28 137 60 35
5.11 7.4 9.16 128 55 34
紫の峰 3.12 5.11 7.31 142 58 57
4.13 6.11 8.19 128 57 48
5.11 7.4 9.11 123 49 36

2)育苗温度に関する試験(平成2年成績)
播種期
月.日
供試品種 処理温度
(昼-夜
温℃)
採花始
(月.日)
到花
日数
採花率
(%)
ロゼット
株率
(%)
切花長
(cm)
切花重
(g)
3.12 嵯峨の紫 30-15 8.16 157 100 0 61 72
30-22.5 8.9 150 100 0 61 78
30-30 8.14 155 100 0 52 67
あずまの雪 30-15 8.10 151 100 0 60 90
30-22.5 8.10 151 94 6 57 80
30-30 8.7 148 75 25 58 104
4.13 嵯峨の紫 30-15 8.29 138 100 0 52 35
30-22.5 8.25 134 100 0 56 57
30-30 8.29 138 100 0 51 57
あずまの雪 30-15 9.1 141 100 0 60 82
30-22.5 8.27 136 94 6 52 66
30-30 8.29 138 58 42 54 73

3)土壌pHに関する試験
跡地土壌
pH(H2O)
採花始
(月.日)
切花長
(cm)
切花重
(g)
3.86      
4.36 9.21 50 30
5.61 9.16 63 105
6.61 9.16 67 102
7.34 10.4 66 112

4)液肥窒素施用法について(平成2年成績)
窒素
濃度
(ppm)
採花始
(月.日)
到花
日数
採花率
(%)
切花長
(cm)
切花重
(g)
有効
蕾数
(個)
分枝数 茎径
(mm)
0 8.13 154 100 45 19 3.6 0.7 4.6
200 8.9 150 100 56 46 8.5 2.0 5.7
300 8.9 150 100 56 49 9.6 2.3 6.0
400 8.7 148 100 54 50 9.9 2.6 5.7
500 8.9 150 100 55 52 11.4 2.7 5.8

11.成果の活用面と留意点
播種時期の結果については、中央農試で実施し、無加温条件下で検討していることを考慮する。
〈栽培指標〉
播種時期:5月中旬定植、無加温ハウス栽培(8月下旬〜9月上旬採花)では3月中旬播種が適当である。
育苗温度:夜温が20℃以上では品種によってロゼット化の危険がある。
土壌pH:野菜畑の土壌診断基準に準じて6.0〜6.5が適当である。

12.残された問題とその対応
育苗方法の改善,開花調節法の検討,品質向上のための栽培管理法の検討