1.課題の分類 北海道 花き 栽培−ラークスパー 栽培一般 2.研究課題名 ラークスパーの栽培法に関する試験 3.予算区分 道単 4.研究期間 平成元年〜平成2年 5.担当 中央農試園芸部野菜花き第二科 6.協カ・分担関係 |
7.目.的
ラークスパーについて、本道の立地条件を活かし、府県の端境期に向けて移出を拡大していくための作型開発および品質向上を図るための栽培法を検討し、本道特産花きの生産安定と拡大に資する。
8.試験研究方法
1.試験実施場所:中央農試園芸部圃場
2.土壌条件:褐色低地土(細粒質),露地:褐色森林土(細粒質)
3.施設:無加温パイプハウス(間口5.4×奥行20m)
1)発芽温度に関する試験(平成元〜2年)
処理区別:平成元年:15,25℃,平成2年:15,20,25℃,人工気象箱(自然日長)を使用,昼夜恒温供試品種:ブルースパイヤー,ホワイトスパイヤー
播種期:5月15日(平成元年),6月12日(平成2年)
2)無加温ハウス栽培における播種時期に関する試験(平成元〜2年)
処理区別:播種期(3月,4月,5月,6月(2年)下旬)
供試品種:平成元年,5品種,平成2年,改良極早生千鳥草,ブルースパイヤー
3)露地栽培における播種時期に関する試験(平成元年)
処理区別:播種期(3月20日,4月20日,5月19日播種),ハウス栽培と同じ条件で実施
供試品種:ダズラ,ブルースパイヤー,改良極早生千鳥草,ホワイトスパイヤー,ピンクスパイヤー
4)栽植密度に関する試験(平成元〜2年)
処理区別:条間15cm×株間(10,15,20cm),平成元年:露地,平成2年:無加温ハウス
供試品種:ブルースパイヤー
5)土壌pHに関する試験(平成元年)〔ポット試験〕
処理区別:土壌pH5段階,供試品種:ブルースパイヤー
6)窒素施用法に関する試験(平成2年)〔枠試験〕
処理区別:窒素施用量:0,0.5,1.0,1.5,2.0㎝/a,供試品種:ブルースパイヤー
9.結果の概要・要約
1)発芽温度に関する試験
処理時期が年次間で異なったために昼温が平成2年では処理温度より大きくはずれた。そのために年次間で発芽の傾向に差が生じた。処理温度が高いほど成苗数は少なくなった。播種後育苗時は15℃前後で管理するのが適当である。
2)無加温ハウス栽培における播種時期に関する試験
播種時期が遅くなるにつれて到花日数は短くなり切花長、切花重など切花品質は劣る傾向を示した。
5月播き以降では定植後立枯れが発生し採花率も劣った。
3)露地栽培における播種時期に関する試験
無加温ハウスに比較して到花日数は遅くなる傾向にあるが播種期が遅くなるにつれてその差は明瞭ではなくなった。露地では切花長は短く、切花重は軽い傾向にあり、さらに雨に当たることにより花が傷み切花品質は劣った。3月播きは定植後の立枯れが多く採化率が低下した。以上のことから露地栽培おける播種時期は無加温ハウス栽培に準ずるが、本種の露地での栽培には問題が多い。
4)栽植密度に関する試験
露地、ハウスとも株間の差による切花長は変わらなかったが、切花重は株間が広がるにつれては重くなった。しかし過繁茂になる傾向にあった。以上のことから株間は10〜15cm程度が適当である。
5)土壌pHに関する試験
土壌pHの低い区では生育が極端に劣った。生育はpH6.39の区が最もよかった。土壌pHは6.0〜6.5が適当である。
6)窒素施用法に関する試験
窒素施用量が多くなるにつれて調整量は高まったが、切花長、切花重、花穂数などは窒素施用量間で大きな差は認められなかった。以上のことから褐色低地土における窒素施肥量は1kg/aが標準である。
10.主要成果の具体的数字
1)発芽温度に関する試験(品種名:ブルースパイヤー)
処理 温度 (℃) |
発芽本数(100粒播種) | 成苗数(本) (鉢上げで きた本数) |
||||||
播種後11日 | 播種後14日 | 播種後20日 | ||||||
元年 | 2年 | 元年 | 2年 | 元年 | 2年 | 元年 | 2年 | |
15 | 0 | 0 | 16 | 20 | 62 | 60 | 72 | 48 |
20 | - | 0 | - | 15 | - | 42 | - | 41 |
25 | 7 | 0 | 24 | 0 | 52 | 3 | 56 | 9 |
2)無加温ハウス栽培における播種時期に関する試験(平成2年成績,品種名:ブルースパイヤー)
播種期 | 採花始 (月.日) |
到花日 数 |
採花率 (%) |
切花長 (cm) |
切花重 (g) |
花蕾数 (個) |
花穂長 (cm) |
着花密 度 |
花穂数 (本) |
調整時 茎数(mm) |
3.23 | 7.10 | 109 | 90 | 135 | 75 | 26 | 42 | 0.64 | 8.0 | 6.5 |
4.23 | 7.20 | 98 | 98 | 125 | 72 | 23 | 44 | 0.51 | 8.0 | 6.5 |
5.23 | 8.13 | 82 | 85 | 93 | 55 | 17 | 35 | 0.48 | 8.2 | 7.4 |
6.22 | 9.7 | 77 | 63 | 73 | 33 | 15 | 31 | 0.48 | 5.6 | 5.9 |
3)露地栽培における播種時期
播種 期 |
採花始 (月.日) |
到花 日数 |
採花 率(%) |
切花 長(cm) |
切花 重(g) |
3.20 | 7.14 | 116 +4 |
75 -19 |
111 -45 |
81 -38 |
4.20 | 7.21 | 92 +2 |
99 -1 |
112 -11 |
75 -6 |
5.19 | 8.7 | 80 0 |
50 -15 |
77 -17 |
39 -8 |
4)栽植密度に関する試験.平成2年度調査結果(無加温ハウス)
株間 (cm) |
採花始 (月.日) |
到花日 数 |
採花率 (%) |
切花長 (cm) |
切花重 (g) |
調整重 (g) |
花蕾数 (個) |
花穂長 (cm) |
着花密 度 |
花穂数 (本) |
10 | 7.3 | 102 | 100 | 122 | 52 | 38 | 24 | 39 | 0.62 | 7.0 |
15 | 7.3 | 102 | 100 | 128 | 76 | 46 | 24 | 41 | 0.58 | 8.7 |
20 | 6.30 | 99 | 95 | 128 | 86 | 52 | 24 | 42 | 0.57 | 10.1 |
5)土壌pHに関する試験
pH (H2O) |
EC (mS/cm) |
切花長 (cm) |
切花重 (g) |
花穂数 (本) |
3.81 | 1.06 | 66 | 18 | 8.8 |
4.29 | 0.56 | 90 | 43 | 9.3 |
5.40 | 0.21 | 120 | 160 | 14.3 |
6.39 | 0.25 | 132 | 255 | 21.8 |
7.00 | 0.30 | 119 | 194 | 22.3 |
6)窒素施用法に関する試験
窒素施用 量(kg/a) |
採花始 (月.日) |
切花長 (cm) |
調整重 (g) |
花穂数 (本) |
0 | 7.10 | 146 | 58 | 13.2 |
0.5 | 7.6 | 142 | 71 | 15.6 |
1.0 | 7.6 | 136 | 78 | 14.8 |
1.5 | 7.7 | 133 | 78 | 16.1 |
2.0 | 7.6 | 141 | 81 | 16.6 |
11.成果の活用面と留意点
本試業は中央農試で実施されていることを考慮する。
〈栽培指標〉
播種後鉢上げまでの温度管理:15℃前後に管理する。
播種時期:3月下旬播きで6月下旬から7月上旬採花(到花日数100〜120日)
4月下旬播きで7月中下旬採花(到花日数85〜100日)
露地栽培は無加温ハウス栽培に準ずるが切花品質の面で不利である。
栽植密度:条間15cm,株間10〜15cmが適当である。
土壌pH:6.0〜6.5が適当である。
窒素施肥量:1㎏/a(褐色低地土)が標準である。
12.残された問題とその対応
開花調節法の検討