【指導参考事項】
成績概要書            (作成平成3年1月)
1.課題の分類  果樹 ブドウ 遺伝・育種
          北海道 果樹 ブドウ 遺伝・育種
2.研究課題名  醸造用ブドウの特性調査
          (醸造用ブドウ品種地域適応性試験)
3.予算区分  道単
4.研究期間  昭和61年〜平成2年
5.担当  中央農試 園芸部果樹科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
醸造原料ブドウの需要増加に対応し、醸造用ブドウ品種の多様化を図るため、導入品種・系統の本道における特性を検討する。

8.試験研究方法
(1)場内試験:長沼町(中央農試圃場)
 試験年次:昭和63年〜平成2年
 供試品種・系統数:20(他に対照品種 4,参考品種 2)
 反復樹数:5樹
 栽植距離:2.5m×2.5m(160樹/10a)
 栽植年次:昭和63年4月
(2)現地試験−1:富良野市
 試験年次:昭和61年〜平成2年
 供試品種・系統数:20(他に対照品種 4)
 反復樹数:5樹
 栽植距離:2.7mx2.0m(185樹/10a)
 栽植年次:昭和61年5月
(3)現地試験−2:仁木町
 試験年次:昭和61年〜平成2年
 供試品種・系統数:20(他に対照品種 4,参考品種 2)
 反復樹数:5樹
 栽植距離:2.0m×2.0m(250樹/10a)
 栽植年次:昭和59年4月(一部品種は昭和61年4月)
(4)本試験の供試樹は全て挿し木による自根苗を使用し、栽培は垣根仕立てによる片側水平コルドン整技とした。また病害虫防除は各試験とも道の病害虫防除基準によった。

9.結果の概要・要約
(1)昭和53年に当場に導入した醸造用ブドウ38品種・系統について場内で特性調査を行ない、耐寒性、熟期などから選抜した白ワイン用12品種、赤ワイン用8品種・系統について場内及ぴ現地2ケ所で品種特性を検討した。
この結果から各品種・系統の主要な特性の評価を行なった。(第1表)
(2)白ワイン用品種では、対照品種に比べ耐寒性の優る品種は認められなかった。収量性は「ロッター グートエーデル」、「バイザー グートエーデル」の両品種でやや優った。熟期は「シーガーレーベ」で早く、「ブービェー」でやや早かった。果実糖度は「エベール」で高く、「ヘルダー」、「ジョイレーベ」でもやや高かった。特に耐病性の高い品種は認められなかった。
(3)赤ワイン用品種では、対照品種に比べ耐寒性、収量性の優る品種・系統は認められなかった。熟期は「フリューブルグンダー」で早く、「ドルンフェルダー」でやや早かった。
果実糖度は「へロルドレーべ」、「S-358」でやや高かった。特に耐病性の高い品種・系 統は認められなかった。

10.主要成果の具体的数字
第1表 品種特性評価
品種名(系統名) 耐寒性 収量性 熟期 糖度 病害の発生 備考
ベト病 灰色
カビ病






ブービェー  
ヘルダー  
ムスカテラー ×  
ノープリング  
ペルレフォンアルツァイ  
ロッターグートエーデル  
ジルヒャー  
ユベール  
ショイレーベ  
ジーガーレーベ  
バイサーグートエーデル  
フォンタナラ  
ミュラートルガウ 対照品種
セイベル5279 対照品種
ケルナー 参考品種
オプティマ × 参考品種






ドルンフェルダー  
フリューブルグンダー × ×  
ヘルフェンシュタイナー  
ヘロルドレーベ ×  
ロートベルガー  
S-358  
シュバルツエルプリング  
カベルネソービニヨン ×  
ツバイゲルトレーベ 対照品種
セイベル13053 対照品種(萎縮)
注)☆:対照品種より優る、早い、高い、少ない。
  ◎:対照品種よりやや優る、やや早い、やや高い、やや少ない。
  ○:対照品種と同程度。
  △:対照品種よりやや劣る、やや遅い、やや低い、やや多い。
  ×:対照品種より劣る、遅い、低い、多い。
評価は白ワイン用品種と赤ワイン用品種に分けて行った。白ワイン用品種は「ミュラー トルガウ」を基準としたが、べと病については「セイベル 5279」を基準とした。赤ワイン用品種は「ツバイゲルトレーベ」を基準としたが、灰色かび病については「セイベル5279」を基準とした。

11.成果の活用面と留意点
(1)醸造適性については、「醸造用ブドウの果実成分と醸造適性に関する試験」成績(流通加工科)を参考にする。
(2)醸造企業との契約栽培に当たっては、品種特性に適合する契約内容とする。

12.残された問題とその対応
(1)本道により適応性の高い品種が必要であり、現在醸造用ブドウ新品種育成試験を実施中である。