【指導参考事項】
成績概要書                         (作成平成3年1月)
1.課題の分類  北海道 野菜 裁培−葉根菜 施設・資材
2.研究課題名  葉根菜に対するマルチ用フィルム「地温抑制近紫外線反射特殊ポリオレフィン
          系フィルム」の実用化に関する試験
3.予算区分  受託
4.研究期間  (平成1〜2年度)
5.担当  北海道立中央農業試験場 園芸部
6.協力・分担関係

7.目的
春まき夏どり作型の高畦全面マルチ栽培における「地温抑制近紫外線反射特殊ポリオレフィン系フィルム」の実用性について検討する。

8.試験研究方法
1.検定フィルム 地温抑制近紫外線反射特殊ポリオレフィン系フィルム(以下特殊P・Oと略称する)
2.試験方法及び栽培方法
試験年度 1年(試験Ⅰ) 2年(試験Ⅱ) 2年(試験Ⅲ)
対照及び参考
フィルム
白黒、シルバーポリ
黒ポリ、透明ポリ
白黒 白黒、シルバーポリ、
黒ポリ
供試作物 ダイコン キャベツ レタス ブロッコリー キャベツ ダイコン キャベツ
試験規模 1区6.75㎡ 2反復 1区21.0㎡ 2反復 1区5.4㎡ 2反復
供試土壌 暗色表層疑グライ土(中粒質)
マルチ方法 単畦高畦全面マルチ 畦間45cm
マルチ期 7月11日 5月23日 7月12日
播種又は定植期 7月17日 6月7日 7月17日
株間 25cm 40cm 35cm 40cm 40cm 25cm 40cm
施肥量 1、1、0.8 2、1.5、2 1.8、1.8、1.8 1、1、0.8 2、1.5、2
病害虫防除 3回 2回 3回 3回
灌水 降雨成り行き

9.結果の概要・要約
(試験Ⅰ)
(1)地温の推移について:最高地温は、特殊P・Oが量も低く(裸地より-2〜-1℃)保持され、変動も少なかった。白黒、シルバーポリがこれについだ。黒ポリはこれより1℃前後高く、変動も大きかった。透明ポリでは高温となり変動も極めて大きかった。
(2)ダイコン:特殊P・O、白黒、シルバーポリの生育及び肥大が良好で多収となった。品質面の障害は特殊P・Oは少なかったが、白黒では空洞とす入りの発生がありシルバーポリでは、赤芯が僅かに発生した。黒ポリ及び透明ポリでは生育収量共に不安定となり品質面の障害も多かった。
(3)キャベツ:特殊P・O、白黒の球肥大が良好で多収となった。その他のフィルムはこれより肥大が劣っていた。
(試験Ⅱ)
(1)レタス:白黒フィルムに比べて、規格内球数割合及び球肥大が同等かやや優り、規格内多収傾向となった。
(2)ブロッコリー:規格内球数割合及び花蕾の発育が同等がやや優り、規格内多収傾向となった。
(3)キャベツ:規格内球数割合及び球肥大がやや優り、規格内多収となった。
(試験Ⅲ)
(1)ダイコン:裸地に比べて、マルチ区の生育促進及び多収効果顕著であった。マルチ区の中では、初〜中期の生育は、シルバーフィルムが良く、特殊P・Oはこれに次いだ。
コナガ、モンシロチョウの発生が多く、裸地及び黒フィルムでは、甚しい害となったが、特殊P・Oでは食害程度が少なく経過した。収穫時では根の肥大が良好で、規格内多収となった。
根内部の障害発生程度も、白黒フィルムと同様に少ない方であった。
(2)キャベツ:裸地に比べて、マルチ区の生育促進及び多収効果が顕著であった。マルチ区の中では、初〜中期の生育は、白黒フィルムと同様に良好であった。虫害程度は、ダイコンと同様に、少なく経過した。収穫時では、球の肥大は中庸であったが、規格内球数割合が高く、規格内多収となった。
(総括)
供試資材は、葉根菜の夏秋どり高畦全面マルチ栽培において、地温の抑制効果が明らかでありそれに伴って、生育及び収量面での安定効果が、対照の白黒及びシルバーフィルムと同等かやや高く得られた。また、モンシロチョウ、コナガの食害発生程度が、これらの対照フィルムより明らかに少なく、実用性が高い資材であった。

10.成果の具体的数字
[試験Ⅰ]
(1)地温測定(畦 中央 深さ5cm)
         ①最高地温                ②最低地温
資材名 8月上旬 8月中旬 8月下句 8月上旬 8月中旬 8月下句
平均値 CV 平均値 CV 平均値 CV 平均値 CV 平均値 CV 平均値 CV
特殊P・O
29.5
8.9
23.8
5.1
22.6
7.5
22.8
4.8
20.7
4.4
19.4
3.6
白黒 29.2 7.8 24.5 6.0 23.2 8.2 22.8 5.7 20.9 3.9 19.8 4.1
シルバーポリ 30.1 7.5 24.0 5.6 23.1 7.1 23.5 4.6 20.9 4.1 19.7 4.1
黒ポリ 33.4 13.3 25.6 6.7 23.6 9.3 22.6 5.8 20.3 5.4 19.0 6.0
透明ポリ 43.0 10.2 34.8 12.6 30.0 14.6 25.9 6.0 22.3 3.6 21.3 5.9
裸地 30.1 10.1 25.7 9.9 24.3 10.1 22.6 5.0 18.3 13.3 17.2 9.9

(2)ダイコン(収穫9月21日、1区当り25株)
資材名 8月27日
虫害程度
規格別重量 規格内
平均根重
規格内 小根 規格外
特殊P・O 2
22.9

0.8

2.4

26.1
g
1,090
白黒 2 21.5 1.4 2.3 25.2 1,075
シルバーポリ 2 23.2 2.2 0 25.4 1,105
黒ポリ 4 17.7 1.1 2.5 21.3 885
透明ポリ 5 11.1 2.3 0.8 14.2 1,009
 注)虫害程度(コナガの食害程度):1軽〜5甚

(3)キャベツ(収穫10月4日、1区当り15株)
資材名 8月27日
虫害程度
規格別重量 規格内
平均根重
規格内 小根
特殊P・O 3
22.15

0.90

23.05
g
1,582
白黒 4 21.00 0.84 21.84 1,500
シルバーポリ 3 15.85 0.75 16.60 1,219
黒ポリ 5 12.60 3.00 15.60 1.260
透明ポリ 4 13.60 1.52 15.12 1,360

[試験Ⅱ]
(1)レタス(収穫7月21日)
資材名 規格内
収量
調整球重
特殊P・O kg/a
381.7
g
751.4
白黒 386.5 743.9

(2)ブロッコリー(収穫7月25日)
資材名 規格内
収量
調整球重
特殊P・O kg/a
134.3
g
253.1
白黒 128.5 248.1

(3)キャベツ(収穫8月8日)
資材名 規格内
収量
調整球重
特殊P・O kg/a
759.8
g
1,540
白黒 671.2 1,450

[試験Ⅲ]
(1)ダイコン(収穫9月13日)
資材名 規格内
収量
対比 規格内
平均根重
虫害発生程度
8月16日 9月1日
特殊P・O kg/a
682
107 g
993
1〜2 1〜2
白黒 690 100 948 2〜3 2〜3
577 84 831 3〜4 3
シルバー 636 92 932 2 2〜3
裸地 543 79 789 4 3

(2)キャベツ(収穫10月5日)
資材名 規格内
収量
対比 規格内
平均根重
虫害発生程度
8月16日 9月1日 10月5日
特殊P・O kg/a
631
104 g
1,264
1〜2 1〜2 2〜3
白黒 609 100 1,292 2 3 3〜4
526 86 1,115 2〜3 3 4
シルバー 618 101 1,392 1 2〜3 3〜4
裸地 327 54 786 4 3〜4 3〜4
 虫害発生程度(モンシロチョウ、コナガの食害程度 0無〜4甚)

11.成果の活用面と留意点

12.残された問題とその対応