1.課題の分類 総合農業 生産環境 土壌肥料 3-2-2-b 野菜 野菜 土壌肥料 施肥改善 北海道 2.研究課題名 ほうれん草の内部品質向上のための栽培管理対策 (高品質野菜の安定生産に向けた合理的な土壌管理法の確立) 3.予算区分 道単 4.研究期間 (昭和62年〜平成元年) 5.担当 道南農試土壌肥料科 6.協力・分担関係 なし |
7.目的
野菜に対する消費者の二一ズは多様化し、外見品質のみならず栄養価や安全性、嗜好性など内部品質に目が向けられる時代となった。このような背景の中で、先にほうれん草の内部品質指標値の設定を行った。今試験では指標値(硝酸含量、ビタミンC含量)の達成を目指した栽培管理法の技術組み立てを図ることを目的とした。
8.試験研究方法
1)ほうれん草の硝酸含量の簡易判定法
2)栽培条件と内部品質の変化
・N用量試験(場内) | ・N用量現地試験 | ・N肥料形態試験 |
・随伴陰イオン形態試験 | ・塩安施用試験 | ・塩加施用現地試験 |
・水分管理(灌水期間)圃場試験 | ・堆肥施用試験 |
9.結果の概要・要約
1)ほうれん草の硝酸含量の簡易判定は、メルコクァント硝酸イオン試験紙で可能であった(図1)。
2)ほうれん草の硝酸含量の低減とピタミンC含量の向上には、施肥N量の低減化の効果が最も大きかった。(図2)。
3)栽培後期の灌水を抑制する事でほうれん草のビタミンC含量を高めることが可能であった(図3)。
4)現在のほうれん草畑の問題点は土壌の残存N量の高蓄積(79ハウス、平均38.3㎎)であり、この解消が品質向上のための当面の対策と考えられた。
5)土壌の残存N量評価には硝酸イオン試験紙と、コンパクトイオンメーターの利用が可能であり、硝酸イオン試験紙を用いた施肥早見表を作成した(表1)。
6)ほうれん草の内部品質を重視したN施肥量として、当面露地栽培15㎏、ハウス、雨よけ栽培10㎏とすぺきと考えられた。
7)本成績の知見を加え、「夏どりほうれん草の内部品質指標値とその栽培および選択指針」(平成元年1月)の改訂を行った(表2)。
10.成果の具体的数字
図1 メルコクァント硝酸イオン試験紙を用いたほうれん草の
硝酸含量の簡易判定(1989)
図2 窒素施肥量とほうれん草の収量及び硝酸、
ビタミンC含量の関係(露地栽培、1988)
表1 メルコクァント硝酸イオン試験紙を用いた
N施肥量の早見表 (生土分析用)
硝酸試験紙 表示NO3-ppm |
N施肥量(10a当り) | 想定NO3-N量 mg/100gsoil |
|
10kg | 15kg | ||
0 | 10 | 15 | 0 |
9 | 14 | 1.7 | |
10 | 7 | 12 | 3.3 |
5 | 10 | 5.8 | |
25 | 2 | 7 | 8.3 |
N無施用 | 3 | 12.5 | |
50 | 他作物の作付* | N無施用 | 16.6 |
〃 | 他作物の作付* | 24.9 | |
100 | 〃 | 〃 | 33.2 |
図3 灌水試験におけるほうれん草のビタミンC含量
表2 夏どりほうれん草の内部品質指標値とその栽培および選択指針(1991.1改訂)
指標値* | 簡易判定法 | 将来目標 | 生産者の栽培指針 | 消費者の選択指針 | |
硝酸 | 300mg 以下 |
30倍希釈液 をメルコフ ァント硝酸 イオン試験 紙で判定 |
①指標値の再 検討 (低含量へ) ②迅速測定法 の開発 |
①土壌の残存N量を評価し 減肥する(硝酸イオン試 験紙による施肥量早見表 を活用する) ②N施肥量はハウス、雨よ け栽培10kg、露値栽培15 kg以下とする ③残存N量がほうれん草の N施肥量を超える圃場で は他作物の作付あるいは 除塩等の対策を講ずる ④収穫1週間前以降は灌水 を行わない ⑤遮光処理は行わない ⑥適品種を選択する ⑦指標値達成のため簡易判 定法を利用し、栽培技術 の改善をはかる |
①葉色の濃いもの を選ぶ ②低硝酸と高ビタ ミンCを求める 場合には、葉/ 茎比の高いもの を選ぶ |
ビタミンC | 30mg 以上 |
葉柄搾部汁 液の屈折計 示度 (Brix) 3.0%以上 |
①指標値の再 検討 (高含量へ) ②迅速測定法 の開発 |
11.成果の活用面と留意点
1)土壌の残存N量が安定した状況(5mg以下)で、品種(低硝酸、高ビタミンC)の選定を行う。
12.残された問題とその対応
1)堆肥施用と内部品質(ほうれん草に対する堆肥の適正施肥量とN施肥対応)
2)分析対象土層深の検討