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1.課題の分類 総合農業 生産環境 土壌肥料 北海道 2.研究課題名 北海道耕地土壌の理化学性の実態・変化の方向とその対応 (土壌環境基礎調査・定点調査) 3.予算区分 補助(土壌保全) 4.研究期間 (昭54〜) 5.担当 中央(土改・土肥,・環保・栽1)・上川、 道南、十勝、根釧、北見、天北の土壌肥料 部門各科 6.協力分担関係 関係各農業改良普及所 |
7.目的
北海道の耕地土壌の理化学性の実態およぴ変化の方向について明らかにし、適正な土壌環境の維持に役立てる。
8.試験研究方法
地域、地目、土壌の種類を考慮して、全道耕地252地区に1260カ所の定点を選定し、5年を1サイクルとする調査を行う。
調査内容:土地調査、土壌分析、かんがい用水分析、作物体分析、土壌管理実態
今回のとりまとめ項目
| 物理性: | 心土のち密度、心土の仮比重、心土の孔隙率、作土の厚さ |
| 作土の化学性: | 全炭素、全窒素、CEC、pH、交換性塩基(CaO,Mg0,K2O)、 可給態りん酸(BRAY法、TRUOG法)、可給態窒素 |
9.結果の概要・要約
1)調査項目の分布形態
心土のち密度、心土の仮比重、心土の孔隙率、作土の厚さおよびCEC、pH、水田可給態窒素については正規分布、その他の全炭素、全窒素、交換性塩基、可給態りん酸、畑地可給態窒素については対数正規分布と認められた。
2)土壌理化学性の実態・変化方向
(1)水田:近年(昭和55年から昭和60年にかけて)心土のち密度がやや増加し、作土はやや厚くなった。全炭素、全窒素、可給態窒素は、かつて(昭和54年から昭和55年にかけて)顕著に減少し、その後、可給態窒素はやや回復した。りん酸は全期間増加している。苦土・カリは近年増加が著しい。
(2)普通畑:かつて心土のち密度がやや増加し、孔隙率は低下するなど、堅密化の傾向が
みられたが近年は変化がない。作土は年次とともに厚くなる傾向にある。全炭素、全窒素、CEC、可給態窒素が近年減少している原因は作土深の増加による心土の混入にあると考えられた。苦土、カリ、りん酸は全期間を通じて顕著に増加している。
(3)草地:作上表層の全炭素・苦土・カリ、りん酸は近年顕著に増加した。
3)土壌診断基準および施肥対応の観点からみた変化方向の評価
(1)水田:心土のち密度、カリについて基準値内の割合が増加し、適正化する方向にある。りん酸、苦土については基準値の範囲をこえて蓄種が進んでいる。
(2)普通畑:心土のち密度、pH、りん酸は適正化の方向にある。カリは著しく蓄積し、苦
土は蓄積が進んでいる。
(3)草地:りん酸はやや蓄積方向にある。カリは基準値以上・以下に2極分化している。
苦土については蓄積が進行している。
4)結論
以上のように、作土化学性の変化は予想以上に速く、高品質・安定生産、コスト低減のためには一般の農家圃場について最低5年に一度程度の土壌診断とそれに基づく施肥対応を押し進める必要がある。
10.主要成果の具体的数字
表1 土壌理化学性の経年変化の方向
| 地目・年次 項目 |
水田 | 普通畑 | 草地 | |||||
| 昭45→55 | 昭55→60 | 昭45→55 | 昭55→60 | 昭45→55 | 昭55→60 | |||
| 物 理 性 |
心土のち密度 | ＋ | ＋ | データなし | ||||
| 心土の仮比量 | データなし | |||||||
| 心土の孔隙率 | データなし | −− | データなし | |||||
| 作土の厚さ | ＋ | ＋＋ | ＋＋＋ | データなし | データなし | |||
| 作 土 の 化 学 性 |
全炭素 | −− | −− | ＋＋＋ | ||||
| 全窒素 | −−− | − | − | −−− | ||||
| CEC | −−− | −−− | ＋ | |||||
| pH(H2O) | ＋ | ＋ | ||||||
| 交換性 | CaO | ＋ | ||||||
| Mg0 | ＋＋＋ | ＋＋ | ＋＋＋ | ＋＋＋ | ||||
| K20 | ＋＋＋ | ＋＋＋ | ＋＋＋ | ＋＋＋ | ＋＋＋ | |||
| 可給態りん酸 | ＋＋＋ | ＋＋＋ | ＋＋＋ | ＋＋＋ | ＋＋ | ＋＋＋ | ||
| 可給態窒素 | −−− | ＋＋ | データなし | −− | データなし | − | ||
| ＋: | 5%水準で有意に増加 | ＋＋: | 1%水準で有意に増加 | ＋＋＋: | 0.1水準で有意に増加 |
| −: | 〃 減少 | −−: | 〃 減少 | −−−: | 〃 減少 |
表2 施肥対応の観点からみた、土壌養分変化の評価
| 地目 | 要素 | 基準値内の地点 割合(%)の変化 |
施肥率平均値 (%)の変化* |
総合評価 |
| 水田 | P2O5 | 33→19 | 92→75 | 蓄積が進行 |
| K2O | 40→64 | 114→105 | 正化している | |
| MgO | 5→4 | 5→4 | ほぼ施肥不要 | |
| 普通畑 | P2O5 | 39→43 | 95→92 | ほぼ適正 |
| K2O | 32→20 | 68→50 | 著しく蓄積 | |
| MgO | 48→48 | 84→68 | 蓄積が進行 | |
| 草地 | P2O5 | 42→42 | 104→85 | やや蓄積 |
| K2O | 12→13 | 91→85 | 基準値以上、以下に2極分化 | |
| MgO | 21→19 | 89→76 | 蓄積が進行 |
11.成果の活用面と留意点
一般農家圃場において、定期的な土壌診断の実施による土壌環境の監視体制を確立する必要があり、組織的な体制づくりが望まれる。
12.残された問題とその対応
物理性の変化については今後さらに総合的な検討が必要と考えられる。