【指導参考事項】
成績概要書                  (作成 平成3年1月)
1.課題の分類  総合農業 作業技術 作業体系−ヒマワリ5-(6)
          北海道 物理
2.研究課題名  ヒマワリ栽培の一貫機械化体系の確立(補遺)
          −短稈・食品用品種適応技術−
3.予算区分  受託
4.研究期間  (昭和62年〜平成2年)
5.担当  中央農試農業機械部機械科
6.協力分担

7.目的
短稈種及び食品用品種を対象として、防除(尿素散布を含む)、収穫乾燥技術について検討する。

8.試験研究方法
1)試験期日及び場所  平成2年6月〜9月、北竜町
2)供試品種  油用短稈種:Sunwheat101、S102、スナック種:IS924
3)供試機
 (1)短稈用ハイクリアランスブームスプレヤ:散布幅9.5m
 (2)普通型コンバイン:刈幅3.7m刈取ヘッダ付
 (3)汎用型コンバイン:刈幅2.0m、刈取ヘッダ付
 (4)静置型乾燥機(2坪型)
4)試験項目
 (1)防除機の改良と作業性:散布幅稈及び散布稈、タンク容量増による散布能率と薬剤寸着性能
 (2)普通型及び汎用型コンバインの収穫精度及び作業能率
 (3)静置型乾燥機によるスナック種の乾燥

9.結果の概要・要約
1)短稈種に対する散布能率と薬剤の付着性(表1)
散布幅9.5m、散布高さ1.0m、ポンプ圧力15㎏/c㎡、散布量100L/10a(N1.87㎏/10a)の条件で草丈88㎝の頭花上から作業速度0.32m/sの2回撒きで散布し、毎時作業能率が0.57haであった。菌核病防除は、イプロジオン50%水和剤1,000倍液を250L/10a目標で散布(速度0.4m/s)した。薬剤粒子の付着状況は、頭花中央に青色付着紙を用いて行った結果、粒径が横、下向きとも0.25〜0.30の範囲であり、粒子数は真上が濡れた状態で横、下向きでは566〜856粒/c㎡と均一であった。したがって短稈種では、ブームスプレヤにより上部からの散布で対応できる。
2)普通型及び汎用型コンバインによる短稈種及びスナック種の収穫(表2)
短稈種及び長稈兼用の刈取ヘッダをそれぞれ製作し、普通型でSW101、IS924、汎用型でSW201を対象に収穫試験を行った。短稈種の茎長は1.0m以内で、子実含水率は普通型のとき28.2%と適期刈であり、汎用型では56%と高水分であった。刈取ヘッダのデバイダの高さは平均45cm、倒伏状態のとき先端5cmであった。試験は主に、コンケーフ間隙を変えて行った結果、総損失は普通型で短稈種のとき0.9〜7.9%スナック種で8.6〜11.2%、汎用型で高水分であったが、3.9〜8.3%であった。汎用型による短稈種の能率は、0.25ha/hであった。
3)食品用品種の乾燥(表3)
スナック種子実の乾燥は、静置型乾燥機2台を用い、張込量は1.3t、熱風温度は50℃(風量3%増)、55℃で行った。4〜5時間で切返しを行い、乾燥速度は55℃処理で毎時1.9%、50℃処理で毎時1.5%であった。灯油1L当りの蒸発量は、55℃で13.7㎏、50℃で17.0㎏であった。

10.成果の具体的数字
表1 薬剤の付着性能
開花方位 頭花状況 付着粒子直径
(㎜)
付着粒子数
(粒/c㎡)
備考
上向き 真上 粒子重合で計測不能 均一な濡れ 付着紙上ランオフ
南東 横向き 0.25 566.4
横向き 0.26 856.7
北東 下向き 0.30 527.5
注)1)散布方向:南→北
  2)開花方位:北東
  3)付着紙:青色付着紙を頭花中央に取り付け
  4)付着粒数:1c㎡当りの粒数を2反復計測
  5)付着粒径:付着粒子を拡大して0.01mmで読み取り

表2 収穫試験結果
調査項目 コンバイン 普通型 汎用型
品種 短稈(SW101) 長稈(スナックIS924) 短稈(SW201)
NO 1 2 3 4 1 2 3 1 2 3 4
作業速度(m/s) 0.39 0.43 0.32 0.38 0.24 0.36 0.46 0.37 0.41 0.35 0.41
平均刈高さ(cm) 47 44 47 50 30 25 25 50 45 45 40
ディバイダ高さ(cm) 先端37,後部52 先端5,後部15 先端40,後部50
コンケープ間隔(mm) 24-15 27-18 30-21 32-25 27-18 30-21 32-25 18-15 20-15 20-20 23-20
穀粒流量(kg/h) 1694 1453 1347 1267 1185 1840 1464 1168 792 908 1157
排稈流量(kg/h) 8013 7256 6947 11377 2598 4997 3306 3851 3762 4242 4163
損失
(%)
脱穀部 0.71 0.61 1.12 2.93 0.62 0.79 1.10 0.18 0.26 0.30 2.31
選別部 0.19 4.91 6.83 4.94 0.55 0.2 0.22 3.21 3.69 5.32 6.04
刈取部 - - - - 7.42 7.5 9.88 2.52 - 0.91 -
総損失 0.90 5.67 7.95 7.87 8.59 8.49 11.2 5.91 3.95 6.53 8.35
穀粒
内訳
(%)
整粒 79.4 86.6 88.6 85.1 47.2 35.8 37.8 64.4 60.4 63.4 66.6
未熟粒 12.3 7.8 5.4 6.8 32.8 40.9 37 20.6 20.7 23.2 21.5
脱ふ粒 2.9 0.4 1.6 0.6 2.5 2.2 1.7 0.1 0.0 0.1 -
子実外 5.4 4.2 4.9 5.5 - - - - - - -
破砕粒 2.8 2.0 2.2 1.7 4.2 3.9 5.0 1.8 0.9 1.1 1.5
0.6 0.2 0.1 0.4 3.8 4.5 5.3 0.3 0.9 0.2 0.2
夾雑物 2.0 2.0 2.1 5.4 9.5 12.7 13.2 12.9 17.1 12.1 10.2
収量
(kg/10a)
子実重(含水率) 234.5(28.2) 335.5(29.6) 360(56.4)
花託重( 〃  ) 1006.5(88.6) 1600.0(85.5) 1501(90.9)
茎 重( 〃  ) 391.5(76.6) 1264.0(70.5) 1511(85.1)
備考 直立、適期刈 倒伏、刈遅れ 直立、高水分

表3 乾燥試験結果
乾燥機種類 静置型−1 静置型−2
熱風設定温度(℃) 55 50
風量(m3/min) 37.1 41.6
乾燥開始(年月日時刻) 8/30,18:56 8/30,18:56
乾燥終了(年月日時刻) 8/31,18:00 8/31,20:00
正味乾燥時間(時間分) 23°4' 27°4'
原料張り込み量(kg) 1,164.3 1,164.3
原料水分(%) 50.63 47.68
容積重(kg/L) 0.32 0.32
乾燥仕上がり量(kg) 506.6 610.0
仕上がり水分(%) 6.07 7.86
殻水分(%) 8.50 10.75
子実水分(%) 5.00 5.50
容積重(kg/L) 0.24 0.24
軽減水分量(%) 44.56 39.82
毎時乾燥速度(%/h) 1.94 1.47
入気温度(℃) 23.8〜24.7 23.8〜24.7
温度(%) 81〜85 81〜85
熱風温度(℃) 53.2±2.3 50.5±2.3
排風温度(℃) 27.2〜32.3 30.7〜32.5
穀温(℃) 28〜30 28〜30
風量比(m3/s-t) 0.53 0.60
燃料消費量(L) 40.8 32.6
灯油1Lの蒸発量(kg) 13.7 17.0

11.成果の活用面と留意点
1)防除作業時は、防除マスクや防除衣等を付け農薬被曝を回避する。
2)長稈種は、倒伏を避けるため6月上旬、草丈25m前後のとき培土を行う。
3)静置型乾燥機でヒマワリ子実を乾燥するときは、上限穀温を55℃とし切返しを行う。

12.残された問題点とその対応