【指導参考事項】
成績概要書                   (作成平成3年1月)
1.課題の分類  総合農業 作業技術−8-農業施設
          北海道 農業物理 施設機械
2.研究課題名  寒冷エネルギーを利用した冷熱蓄熱技術の開発
3.予算区分  経常
4.研究期間  昭和62年〜平成2年
5.担当  北農試 農地施設研
6.協力・分担関係

7.目的
冬季に無尽蔵に存在する雪・冷気等の自然冷熱エネルギーを蓄熱し、農産物貯蔵等の安価な冷熱源とするため、アイスポンドにおいて人為的に効率よく氷を製造するためのシステムとその制御技術の開発および氷の保存方法の検討を行う。

8.試験研究方法
北海道農試場内に10m×14m,深さ2m,容量200m3のアイスポンドを建設し、自動製氷システムおよび制御プログラムを開発した。製氷性能を評価してシステムおよびプログラムを改善しながら、三冬の製氷実験を行い、積算寒度と製氷厚さとの関係を明らかにした。また、製造した氷の断熱・保存方法を検討し、氷冷熱を貯蔵庫冷房に使用した場合の氷の消失経過を測定した。

9.結果の概要・要約
1)製氷システムは、貯水槽から圧送した水を2個の特殊ノズル(散水角度180度、フルコーンタイプ)を用いて厚さ0.2〜0.4mmに散水し,この薄水膜を凍結させる作業を自動的に繰返してアイスポンドの底から氷層を積上げる方法である(図1)。
2)自動製氷制御プログラムは2モードからなり、製氷モードでは1回の散水時間を30秒一定とし、コンピュータが積算寒度を計算し、それに基づき水膜の完全凍結時期を推定して散水間隔を決める。融雪モードで降雪量(降水量)をセンサが感知し、それに応じた水量の散水により雪をシャーベット状に溶かした後、その厚さに応じた積算寒度の間待機し凍結させる(図2)。両モードは自動で切り替わる。
3)製氷モードでの製氷では、積算寒度に応じた厚さの氷が自動的に製造された。融雪モードでの製氷では、シャーベット厚が30〜40mmでは製氷モードでの製氷速度と大差ないが、それ以上では未凍結部の発生や空気の混入が避けられなかった。
4)88/89および89/90冬季は暖冬であったが、3回の製氷実験から一冬に厚さ1.7〜1.9mの氷を製造できることがわかった(図3)。最も製氷効率の高かった88/89冬季の結果から、厚さ1mmの氷の製造に要する積算寒度は約4.3Khと求められ、この値から道内の他の主要地での製氷可能厚さを推定すると、約4.0〜5.1mとなった(表1)。
5)氷の断熱・保存方法は、3月上旬から中旬までに製氷を終了し、アイスポンド周囲の残雪を氷表面にかけ、その上に厚さ20mmのマット状断熱材と園芸用シルバーシートを敷き、さらに反射性シート(表面白色、裏面シルバー)をテント状に展張した。これにより、太陽光線が約97%遮断され雨水の侵入が完全に防がれた。
6)90年3月上旬に厚さ約1.85mの氷に約0.9mの厚さの雪をかけ、3月下旬より氷融解水を用いてぱれいしょ5t収容の貯蔵庫を7月末まで2℃に冷房し、さら最大能力で連続冷房した結果、氷上の雪は6月末まで残存し、氷は9月中旬に完全に消失した。

10.成果の具体的数字


図1 アイスポンドにおける自動製氷システム


図2 自動製氷制御プログラムの基本フローチャート


図3 積算寒度と氷の厚さの変化
   (88/89冬季の場合)

表1 道内主要地の積算寒度と製氷可能厚さの推定値
場所 札幌 帯広 北見 旭川
年間積算
寒度(Kh)*
9453 17264 22007 18658
氷の厚さ(m) 2.2 4.02 5.12 4.34
対札幌比 1.83 2.33 1.97
*:AMeDAS 1980〜89の10年間平均気温から計算

11.成果の活用面と留意点
実用規模アイスポンドの設計の基礎資料となる。適用地域は冬季に小雪であることが望ましく、多雪なほど潜熱畜熱量の小さい氷となる。散水用配管およびノズル凍結防止対策については、対象地の最低外温に応じて別途検討が必要である。

12.残された問題とその対応
実用規模アイスポンドを設計・建設し、実証試験を行う。