1.課題の分類 総合農業 作業技術−8 北海道 物理 2.研究課題名 厳寒地乳牛舎の環境調節 (厳寒地乳牛舎環境調節方式の低コスト改善) 3.予算区分 道単 4.担当 根釧農試 酪農施設科、酪農第二科 5.研究期間 (昭62年〜平成2年) 6.協力・分担関係 なし |
7.目的
乳牛舎の環境不良の原因を究明し、舎内環境を改善するための換気法を明らかにする。
8.試験研究方法
1)乳牛舎構造、環境実態調査(昭和62年〜平成2年)
繋ぎ牛舎:3棟(セミモニタ型、マンサード型、切り妻型)、フリーストール牛舎:2棟(セミモニタ型、切り妻型
2)既存乳牛舎改造法試験(昭和62年〜平成2年)
①入気方式と舎内環境
自然換気方式(棟換気の有無、壁面開口率)、強制換気方式(スロット入気、部分入気)
②自然換気方式に関する模型実験
模型の縮尺(1/40、1/30、1/25)、簡易風洞の寸法(90cm×90cm×5.4m)、棟換気の有無、
屋根勾配(2/10、3/10)、壁面開口率(0%、2.1%、5.0%、14.6%、22.9%)、開口部位置
9.結果の概要・要約
1)牛舎構造と環境
①牛舎3棟(セミモニタ型、マンサード型、切り妻型)の換気方式は自然・強制併用式が2棟、強制換気方式が1棟であった。フリーストール牛舎2棟(セミモニタ型、切り妻型)の換気は自然換気方式であった。窓の開口率3%未満の牛舎は3棟、6%は1棟、19.1%は1棟であった。これらのうち4棟は出入口を開放した全開口率が6〜11%であった。
②窓・出入口開放時の換気回数は牛舎構造などの影響で換気不良部は10回/h未満である。一方、開放部付近では100回/h以上と一様でなかった。天井付近や換気不良部はアンモニア濃度がやや高く、換気回数も低かった。厳寒期は窓や出入口を閉じることがあるので、開口率が減少するため換気回数の低下による舎内環境の悪化が懸念された。
2)換気および入気方式と舎内環境
①棟と窓・出入口を開放(開口率14.3%)した時の自然換気方式の換気回数は62.4回/hであったが、棟と出入口を閉鎖(開口率5.1%)すると換気回数は12〜15回/hに減少した。
②入気口の間隔を2.5cmとしたスロット入気方式では外気温-6.9℃に対し、舎内平均温度は5.9℃で分布はほぼ一様であった。長さ1.8mの入気口を2ヶ所開放した部分入気方式では外気温-10.5℃に対し舎内温度の分布は-1.1〜7.5℃と変動が大きく、入気口直下に低温部が認められた。
3)自然換気方式に関する模型実験
①切り妻型牛舎(開口11.7m、奥行30.8m)の縮尺1/40模型(棟約3mm開放、開口率0%)に送風(3.0〜3.3m/s)すると内部で風上側で下降気流、風下側で上昇気流を生じ、棟から排煙された。窓を開くと屋根沿いに風下への気流と床に平行して風上への気流を生じ、棟や窓から排煙された。
②縮尺1/25模型内に発熱体(表面温度約32℃)を入れ内部温度と外気温との差を調べた。屋根勾配3/10、棟開放条件の温度差割合は壁面の開口率5.0%で低下したが、開口率14.6%以上では棟閉鎖条件との差は少なかった。屋根勾配が2/10では開口率を変えても棟開放の効果は少なかった。
開放条件では壁面の開口率5.0%付近から換気効果が高まるものと推察された。また、同一開口率で開口部(窓に相当)の高さを変えた時、模型内と外気との温度差の変化は屋根勾配3/10に比較し2/10では少なかった。
10.主要成果の具体的数字
表1 牛舎構造および内部環境
調査 牛舎 |
飼養方式 | 牛舎構造 | 繁養 頭数 |
換気 方式 |
断熱 状態 |
開口率(%) | 換気回数 (回/h) |
NH3濃度 (ppm) |
||
窓 | 出入口 | 計 | ||||||||
A | 繋ぎ・対頭 | セミモニタ・木造 | 48 | 自然・強制 | ウレタン | 6.0 | 5.2 | 11.2 | 17〜176 | - |
B | 〃・対尻 | マンサード・ブロック | 42 | 自然・強制 | 合板 | 2.7 | 6.0 | 8.7 | 10〜16 | 〜3 |
C | 〃・対頭 | 切り妻・プロック | 52 | 強制 | FP板 | 2.0 | 4.1 | 6.1 | 8〜64 | - |
D | フリーストール | セミモニタ・木造簡易 | 47 | 自然 | なし | 19.1 | 10.8 | 29.9 | - | 〜5 |
E | 〃 | 切り妻・プロック | 43 | 自然 | なし | 1.7 | 6.0 | 7.7 | 12〜126 | 〜3 |
図1 強制換気牛舎の入気方式と舎内温度の分布(℃)
(左:部分開放入気、右:スロット入気)
図2 棟換気の有無および壁面開口率と模型牛舎内の
温度差割合(屋根勾配:2/10)
図3 棟換気の有無および壁面開口率と模型牛舎内の
温度差割合(屋根勾配:3/10)
11.成果の活用と留意点
1)強制換気(負圧換気)方式は冬期にはスロット入気とし、窓や戸口をできるだけ開放しない。
12.残された問題とその対応
1)スケールアップ模型による主要牛舎構造について換気効果の検討
2)強制換気(正圧換気)方式に関する検討(分散ダクト方式など)