(統一様式)【指導参考事項】
成績概要書                         (作成 平成3年1月)
1.課題の分類  総合農業 作業技術 作業体系6
          北海道 物理
2.研究課題名  農用トラクタ利用による間伐材の伐出工程・利用技術の確立
3.予算区分  共同研究
4.研究期間  昭和63年〜平成2年
5.担当  中央農試農業機械部
      林業試験場林業経営部
6.協力分担関係

7.目的
民有林を対象に、身近に保有する機材を使って、簡便な方法で間伐を促進することをねらいに、一般農用として導入されているトラクタの森林作業への活用について検討した。農用トラクタが林内で性能を十分に発揮できるための技術改善と効率的な伐出方法を明らかにし、新たな森林作業の技術体系を組立てる。

8.試験研究方法
1)試験年次 昭和63年〜平成2年 3ケ年
2)試験場所 中央農業試験場・林業試験場の実験圃場及び実験林
        道有林苫小牧経営区146林班64小班内・カラマツ人工林(昭36年植栽)
3)供試機(1)トラクタ異径四輪駆動79.5ps、最低地上高366mm、重量3,391㎏
 (2)チッパ①チッパ70直装式、刃数3枚、細断長4,7,10㎜の3段
②チッパ10直装式、刃数4枚、細断長5〜18㎜
 (3)ウィンチ直装式、PT0駆動、ワイヤ9㎜φ、50m卷
4)試験項目
①森林作業の事例調査
②異材作業に適するカラマツ人工林の現況
③林内走行試験と付属作業機の性能
④間伐木の伐出作業
⑤間伐材の利用

9.結果の概要・要約
1)民有林のカラマツ人工林は345,000ha(全体の約70%)を占め、間伐が必要な3〜6齢級が75%に達している。農用トラクタが集材作業に利用できる適地は道東地方に広く分布している。
2)トラクタ単体による林内走行限界は二輪駆動で傾斜15度前後、四輪駆動では傾斜22度 前後であった。
3)林内での1回当りけん引材積は、全幹材の元引きで6本以下(約1m3)、短幹材(材長1.5m)では25本程度を見込むことができる。
4)集材作業でウィンチを介してけん引するときの1回当りけん引材積は全幹材で1〜1.2m3(6〜7本)、全木材の元引きで0.8〜0.9m3、末引きで0.6〜0.7m3であった。
5)巻取り作業は傾斜度や材引き傾斜方向、大きさ等によって異なるが、ウィンチの強度を考慮すると、全幹材、全木材で5本、短幹材(材長1.5m)で約10本以下が安全である。林内のウィンチ作業においては集材キャップを装者することによって、全幹材20%、短幹材では40%程度の所要動力軽減効果がみられた。
6)チッパの細断所要動力は、供給材の元口径が12cmの時30.1psであった。連続供給できる材の元口径は12cmが限界であるが、負荷の状況に応じて間欠供給操作をすれば径12cm以上の材の細断も可能である。適用トラクタは50〜70ps級である。
7)細断作業能率は、1.5mの短幹材を供し、バラ積み方式で行った結果、時間当り8.7〜9.0m3(7.3〜7.6t、460〜500本/h)であった。また、フレコン詰め方式では時間当り4.9m3、(4.1t、380本/h〕と処理能力は減少した。
8)間伐木の伐出試験は全幹材と短幹材を使用し、緩斜地〜中斜地において4処理行った。 1ha当りの間伐必要人数は全幹材・引き上げ作業区で30.9人と多く、引き下げ作業では全幹材、短幹材とも24〜25人とほぼ変わらなかった。
9)短幹による集材は材の取扱いや処理が容易なこともあり、損傷木の発生はみられなかった。伐出作業で処理能力に差がないことを考慮すると、短幹での集材が有利である。
10)損傷の多くは保証具を取付けなかった木に発生し、「当て板」を製作し取付けた立木には損傷はみられず、十分な立木保証効果が認められた。

10.成果の具体的数字
表1 木寄せ巻取り作業性(林内でのウィンチ巻取り作業)
作業 材引き
方法
材の
種類
材積量
(m3)
傾斜
(度)
巻取り速度
(m/s)
ウィンチ巻取り
抵抗力
(kg)
抵抗馬力
(ps)
引上げ 元引き 短幹材 0.27
(7本)
4.5 0.74 165.5
(134.3)
1.6
(1.3)
引下げ 末引き 全木材 0.18
(2本)
△10.0 0.71 227.7
(145.4)
2.2
(1.4)
元引き 0.21
(2本)
0.74 234.5
(190.7)
2.2
(1.8)
全木材 0.31 △18.5 0.72 303.9
(194.3)
2.9
(1.9)


図1 民有林カラマツの齢給別面積


図2 空荷走行時の傾斜別スリップ率

表2 集材走行性(経営道でのけん引作業)
キャップ
有無
材引き
方法
材の
種類
材積量 傾斜
(m3)
作業
速度
(m/s)
スリップ

(%)
けん引 けん
引力
(kg/m3)
抵抗力 馬力
(kg)  (ps)
元引き 全幹材 0.46
(3本)
3.5 0.40 3.9 292.3 1.6
(282.9 1.5)
618.5
(557.5)
0.68 4.2 325.0 2.9
(305.1 2.8)
716.9
(668.8)
1.19
(7本)
4.0 0.64 6.9 817.8 7.0
(756.6 6.5)
688.4
(636.9)
末引き 全木材 0.18
(2本)
5.0 0.67 4.1 161.4 1.4
(147.3 1.3)
882.0
(804.9)
元引き 0.21
(2本)
3.8 183.6 1.6
(176.1 1.6)
874.3
(838.6)
注)登板、四輪駆動、けん引抵抗力・馬力は最大値、( )内は平均値

表3 細断作業能率
チップス
収納方法
材の
種類
エンジン
回転数
(rpm)
PTO
回転数
(rpm)
本数
(本)
材積量
(m3)
作業
人員
(名)
所要
時間
(min)
作業能率
本数
(本/時)
材積
(m3/時)
地上バラ
積み
短幹材
(1.53m)
2,100 540 87 1.7 2 15.7 333 6.5


図3 短幹材の元口直径と細断抵抗力の関係

表4 1ha当り間伐に必要な人数と損傷木の発生程度
処理区 A
(緩,全,下)
B
(緩,短,下)
C
(中,全,下)
D
(緩,全,上)
必要人数(人/ha) 25.3 23.7 24.3 30.9
損傷本数(本) 82-5 76-0 79-7 71-11
損傷割合(%) 6.1 0 8.9 15.5


図4 各区の集材距離別工程能力

11.成果の活用面と留意点
トラクタは四輪駆動が望ましく、安全フレームに防護網の装備が必要である。

12.残された問題とその対応