1.課題の分類 畜産 豚 育種 北海道 畜産 2.研究課題名 豚産肉能力の現場直接検定法に関する試験 (種豚の選抜法に関する試験) 3.予算区分 道単 4.研究期間 昭61年〜平元年 5.担当 滝川畜試 研究部 養豚科 6.協力分担 なし |
7.目的
日令や大きさの異なる育成豚から1回の測定で得られる情報によって、その豚個体の産肉能力が評価できる現場直接検定法を確立する。
8.試験研究方法
(1)90kg到達日令の推定
(2)90kg時背脂肪厚の推定
(3)選抜指数式の作成
9.結果の概要
(1)昭和60年〜62年生れのランドレース育成雌187頭を用いて、日令や大きさの異なる時期に、体量、体長、胸囲、背脂肪厚を測定した。その時の日令、体量、体長、胸囲、背脂肪厚を用いて重回帰分析により90㎏到達日令と90㎏時背脂肪厚を推定する式を作成した。推定式の有効性を平成元年生れのランドレースと昭和59〜61年生れの大ヨークシャーの成績を用いて検討した。
(2)90㎏到達日令と90㎏時背脂肪厚の推定は、表1の組合せにあるように体重秤がある場合は方式Aを用い、体重秤がない場合で、測定者が1人の時は方式Bを用い、測定者が異なる時は、体長は測定者による測定誤差が大きいと考えられるので、体長を含まない方式Cを用いて行なうぺきと判断された。
(3)雌の4ヵ月令で背脂肪厚の実測値と推定値との相関は、いずれの推定式もO.4前後であった。しかし、その時の体重と胸囲の平均値以上の豚では、どの推定式も相関が、0.7前後になった。このことから少なくとも体重55㎏、胸囲79㎝以上で推定すべきと考えられた。
(4)90㎏時選抜指数値と各方式による90㎏時推定選抜指数値は、ランドレース雌の5ヵ月令で90㎏時選抜指数値、方式A、方式B、方式Cで、それぞれ97.9、106.0、100.1、97.7であった。90㎏時選抜指数値との相関は、それぞれ0.798、0.828、0.951であった(表2)。
(5)方式Aによる推定指数値は、90㎏時選抜指数値よリ大きいが、その相関は高かった。方式Bによる推定指数値は、90㎏時選抜指数値にほぼ近く、その相関も高かった。方式Cによる推定指数値は、90㎏時選抜指数値にほぼ等しく、その相関もがなリ高かった。これらの関係は、不断給餌条件下にある大ヨークシャーでも、ほほ同様であった。
このことから体尺値のみによる推定値を用いても豚の産肉能力の選抜が可能あると判断された。
(6)90㎏到達日令と90㎏時背脂肪厚の推定値を用いた選抜指数式が、ランドレースと大ヨークシャーおよびこれらの交雑種であるF1育成豚の産肉能力の選抜に適用できる。
10.主要成果の具体的数字
表1 体重秤の有無や測定者が1人の時と異なる時における90kg到
達日令と90kg時背脂肪厚の推定に用いる形質とその組合せ
組合せ 方式 |
体重秤 の有無 |
測定者 | 90kg到達日令の推 定に用いる形質 |
90kg時背脂肪厚の 推定に用いる形質 |
方式A | 有 | 不定 | 体重、日令 | 体重、背脂肪厚 |
方式B | 無 | 同一 | 体長、胸囲、日令 | 胸囲、背脂肪厚 |
方式C | 無 | 不定 | 胸囲、日令 | 胸囲、背脂肪厚 |
・体重と日令による90kg到達日令推定式
YDAY=-0.0138XBFi+1.059XDAYi+109.29
・体重と背脂肪厚による90kg時背脂肪厚推定式
YBF=-0.0137XBWi+0.883XBFi+1.433
YDAY=推定90kg到達日令、YBF=推定90kg時背脂肪厚、
XDAYi=推定時日令、XBWi=推定時体重、XBFi=推定時背脂肪厚。
・選抜指数式
I=273.7-1.024YDAY-4.436YBF
YDAY=推定90kg到達日令、YBF=推定90kg時背脂肪厚。
表2 ランドレース雌における90kg選抜指数値と90kg時推定選抜指数値
およびその相関係数
区分 | 90kg時選抜指数値と推定指数値 | 相関係数 | |||||
実測値 | 方式A | 方式B | 方式C | 方式A | 方式B | 方式C | |
4ヵ月令 | 97.9 | 105.3 | 97.4 | 96.3 | 0.794 | 0.786 | 0.842 |
5ヵ月令 | 97.9 | 106.0 | 100.1 | 97.7 | 0.798 | 0.828 | 0.951 |
6ヵ月令 | 97.9 | 97.4 | 91.6 | 88.3 | 0.662 | 0.717 | 0.754 |
11.成果の活用面と留意点
(1)日令や大きさの異なる育成豚から1回の測定で得られる情報によって、その豚個体の産肉能力が評価できる。
(2)適用できる品種は、ランドレース、大ヨークシャーおよびそれらのF1育成豚である。
(3)発育などの産肉形質は、季節の影響などを受けるので、同一農場で、同一時期に生まれた豚と比較するものとする。
(4)日令は120〜180日令の間で、体重は55kg以上、胸囲は79cm以上の豚に適用している。
12.今後の問題点
(1)今後BLUP法などで、両親や兄弟の記録も用いて精度を高める必要がある。
(2)他の品種での検討。