1.課題の分類 畜産 牛 栄養飼養 新得畜試 北海道 家畜 2.研究課題名 蒸煮木質飼科における適用原料の拡大とし好性の向上 (地域性に立脚した木質飼料の開発) 3.予算区分 道単(共同研究) 4.研究期間 昭62年〜平元年 5.担当 新得畜試 酪農科 6.協力・分担関係 林産試 利用部 物性利用科 |
7.目的
利用価値の低い間伐材および端材等を蒸煮処理木質飼料として利用し、地域の林業及び畜産経営の安定化が検討されている。これに資するため、蒸煮処理木質飼料の適用樹種の拡大と処理条件、樹皮の利用、形状と栄養価およびし好性向上の方法を検討した。
8.試験研究方法
(1)蒸煮処理シラカンバにおける処理条件とTDN含量の関係、また、割箸工場に既存のボイラー能力を想定した低圧・長時間の処理と、木質飼料の栄養価を検討した。
(2)蒸煮処理木質飼料の樹種として、シラカンバ以外の広葉樹およびカラマツ、またチシマザサの栄養価を検討した。
(3)蒸煮処理したシラカンバのし好性を向上するため、ペレット処理および配合飼料の混合給与の効果を検討した。
9.結果の概要・要約
(1)蒸煮処理シラカンバは16㎏/c㎡-7.5分の処理により、期待されるTDN含量60%がほぼ得られた。
(2)割箸工場に既存のボイラーを利用した低圧(6㎏/c㎡)での長時間の蒸煮処理により、シラカンバ(150分)、シナノキ(240分)ともTDN含量50%程度を期待できる。
(3)蒸煮処理シラカンバの樹皮の混合はTDN含量を低下させ、またチップ、解繊、ペレットの形状の違いはTDN含量に影響を及ぼさなかった。
(4)ダケカンバ、ミズナラ、シナノキの蒸煮処理広葉樹およびチシマザサのTDNは50%前後
を期待できる。
一方,蒸煮処理カラマツについては栄養価を期待できない。
(5)蒸煮処理シラカンバはペレット処理により採食速度が向上する傾向が認められ、し好性向上の方法として有効であり、また、配合飼料の混合給与も一定の効果があると考える。
10.成果の具体的数字
表1 蒸煮処理シラカンバに
おける処理条件と栄養価
処理条件 | TDN | ||
圧力 | 時間 | めん羊 | 牛 |
㎏/c㎡ | 分 | −DM中%− | |
15 | 3 | 51.1 | - |
16 | 5 | 50.0 | - |
〃 | 7.5 | 57.1 | 58.7 |
〃 | 10 | 57.5 | 61.4 |
表2 割箸廃材の低圧長時間処理と栄養価
樹種 | 処理条件 | TDN | ||
圧力 | 時間 | めん羊 | 牛 | |
㎏/c㎡ | 分 | −DM中%− | ||
シラカンバ | 6* | 150 | 52.1 | 51.1 |
シナノキ | 〃 | 240 | 50.5 | 47.7 |
表3 蒸煮処理ダケカンバ、ミズナラ、シナノキ、
カラマツおよびシマザサの栄養価
樹種 | 処理条件 | TDN | ||
圧力 | 時間 | めん羊 | 牛 | |
㎏/c㎡ | 分 | −DM中%− | ||
タケカンバ | 15 | 4 | 50.8 | - |
〃 | 16 | 10 | 49.5 | 51.5 |
ミズナラ | 〃 | 7 | 49.0 | - |
シナノキ | 〃 | 〃 | 44.5 | - |
カラマツ | 18 | 5 | 9.9 | - |
〃 * | 〃 | 16 | 12.0 | - |
チシマザサ | 16 | 10 | 45.9 | - |
図1.蒸煮処理シラカンバの採食状況(シラカンバ乾物給与量3.7kg/頭・日)
11.成果の活用面と留意点
(1)蒸煮処理木質飼料は、その樹種や処理条件により栄養価に違いがあり、十分確認のうえ利用することが必要である。
(2)蒸煮処理シラカンバのペレット処理はし好性の向上方法として有効であるが、製造および輸送コスト、また、取扱いの利便性などの総合的に検討して実施すぺきと考えられる。
12.残された問題とその対応
(1)道内における肉用牛に対する蒸煮処理木質飼料の給与効果の実証。
(2)道内における肉牛および乳牛の飼養により適合した給与方法の検討。