【指導参考事項】
試験成績概要書                             (作成 平成3年1月)
1.課題の分類  畜産 肉用牛 肥育 新得畜試
          北海道 家畜
2.研究課題名  冬期無畜舎によるヘレフォードおよびアバディーンアンガス去勢牛の育成肥育
           (冬期無畜舎飼養による低コスト肥育法の確立)
3.予算区分  道単
4.研究期間  昭63年〜平成2年
5.担当  新得畜試肉牛科
6.協カ・分担関係  なし

7.目的
ヘレフォードおよびアバディーンアンガスは放牧時の増体が比較的に高く、この特性を利用した牛肉生産方式として、放牧を取り入れた育成肥育方式(2シーズン放牧方式)が検討されてきた。しかし、この方式では、冬期間は牛舎で飼養するのが一般的であり、牛舎等の施設投資が必要となる。そこで、冬期間も屋外で飼養することができれば、設備投資を最小限に抑えることができるものと思われる。本試験では冬期無畜舎による育成肥育方式について検討した。

8.試験研究方法
試験1.冬期無畜舎による肥育(昭63〜平元)
目的:屋外で無畜舎により仕上げ肥育する場合の適切な濃厚飼料の給与量を、牛舎内の肥育
を対照に比較検討する。
供試牛:ヘレフォード育成去勢牛、16頭
処理:屋外肥育(濃厚飼料給与量2処理)、対照区(牛舎内肥育)
試験2.冬期無畜舎による育成肥育(周年屋外飼養による牛肉生産方式の実証)(昭63〜平2)
目的:冬期屋外育成期の濃厚飼料給与の有無が、その後の放牧期ならびに仕上げ肥育期の発
育、産肉性に及ぼす影響について検討する。
供試牛:ヘレフォードおよびアバディーンアンガス去勢牛、21頭
処理:冬期屋外育成期(給与区:濃厚飼料体重比0.4%、無給与区:濃厚飼料は無給与)放
牧育成期および屋外肥育期は両区とも同一飼養管理

9.結果の概要・要約
試験1.冬期無畜舎による肥育
(1)飼料および養分摂取量は屋外肥育の方が牛舎内肥育に比べて多かった(表1)。
(2)屋外無畜舎肥育の場合、トウモロコシサイレージ自由採食下で濃厚飼料を乾物で体重比1.4%給与したところ、牛舎内肥育と同じ増体(日増体重1.24㎏)が得られた。
(3)1㎏増体に要したTDN量は牛舎内肥育に比べて屋外肥育は31〜53%高、冬期屋外肥育は飼料効率が劣ることが示された。
(4)枝肉成績および胸最長筋の理化学的性状については、屋外肥育は牛舎内肥育と変わらなかった。
試験2.冬期無畜舎による育成肥育(周年屋外飼養による牛肉生産方式の実証)
(1)屋外育成期の日増体量は、ヘレフォードおよびアバディーンアンガスともに給与区の方が無給与区に比べて有意(p<0.05)に高かった(表2)。
(2)放牧期の日増体量は、ヘレフォードおよびアバディーンアンガスともに無給与区の方が給与区に比べて優れていた。
(3)屋外肥育期の日増体量は、処理間および品種間に有意な差は認められなかった。目標仕上げ体重の650㎏に達するのに無給与区は給与区に比べて肥育期間が1か月間延長した。
(4)枝肉成績については、ほとんどの項目で処理間に有意な差は認められなかった。

10.成果の具体的数字
表1 増体成績および養分摂取量
  屋外0.8%区 屋外1.4%区 対照区
開始時月齢(か月) 21.1 21.2 21.2
開始時体重(kg) 458 452 453
終了時月齢(か月) 25.5 25.6 25.6
終了時体重(kg) 579 614 616
日増体量(kg) 0.92a 1.24b 1.24b
DM摂取量(kg) 1,549 1,781 1,340
TDN摂取量(kg) 1,169 1,429 1,028
1kg増体に要したTDN量(kg) 9.66 8.82 6.31
a.b:異なる文字は処理区間において5%水準で有意差がある。

表2 増体成績
  給与区1) 無給与区2)
ヘレンフォード アンガス ヘレンフォード アンガス
頭数 5 4 6 6
屋外育成期
開始時体重(㎏) 228 247 233 252
終了時体重(㎏) 336 398 298 330
期間日増体量(㎏) 0.63 0.88 0.38 0.45
放牧育成期
終了時体重(㎏) 493 510 466 485
期間日増体量(㎏) 0.90 0.64 0.96 0.89
屋外肥育期
終了時月齢(か月齢) 24.6 24.6 25.6 25.4
終了時体重(㎏) 663 657 646 654
期間日増体量(㎏) 1.27 1.08 1.13 1.05
1)給与区:屋外育成期の濃厚飼料給与量を体重当たり0.4%とした。
乾草は0.3㎏、トウモロコシサイレージは自由採食とした。
2)無給与区:屋外育成期は濃厚飼料を無給与とした。
乾草およびトウモロコシサイレージは給与区に同じ。

11.成果の活用面と留意点
(1)冬期に屋外無畜舎で肥育することは、牛舎内肥育に比べて飼料効率が大きく劣ることから、一般的には推奨できない。
(2)糞尿の堆肥利用および春先のパドックの泥ねい化防止のためには、屋外パドックはコンクリート床とし堆肥盤を設置した方が良い。

12.残された問題とその対応
(1)出荷時期を考慮した放牧利用型の牛肉生産方式の検討。
(2)積雪寒冷地における簡易畜舎による育成肥育方法の検討。
(3)冬期屋外飼養時の飼料効率改善策の検討。