1.課題の分類 畜産 全家畜 ふん尿処理 土肥環保 北海道 家草合同 総合 2.研究課題名 寒地における豚糞の堆肥化技術に関する試験 (家畜ふん尿の処理・利用技術の体系化) 3.予算区分 道単 4.研究期間 昭61〜63年 5.担当 滝川畜試 研究部 草地飼料作物科、畜産資源開発科 6.協力・分担関係 なし |
7.目的
寒地における豚糞の腐熟を促進し、また副資材の有効利用をはかって低コスト・寒冷地型の堆肥化技術を確立する。
8.試験研究方法
(1)夏および冬期における回分式腐熟試験
(2)冬期における連続式腐熟試験
(3)夏期における連続式層熟試験
9.結果の概要・要約
(1)夏および冬期における回分式腐熟試験
1)夏期においては稲わらと混合することで温度は上昇し、水分調整を兼ねた切り返しのみで50℃以上が約2か月間持続した。発熱終了時において有機物等の分解はほぼ横ばいとなっており、約2か月の堆積で腐熟はほぼ終了するものと考えられた。
2)冬期でも稲わらと混合することで温度は上昇したが、発熱期間は極めて短く切返しを行っても、温度の上昇は見られずついには凍結してしまい、腐熟の程度はかなり低いものと考えられた。
(2)冬期における連続式腐敗試験
1)初回のみ副資材(稲わら、もみがら、おがくず)と混合し、以降品温の低下時に豚糞を添加することによって、発熱の継続は可能であった。
2)発熱回教は2〜4回、発熱期間は約70〜160日であり、豚糞添加により寒冷期(12〜2月)をのりきることができる。(表1)
3)後熟期においても有機物や繊維の分解は進んでおり、後熟後の分解率は夏期の回分試験の腐熟が終了した堆肥のそれにほぼ等しかった。
4)大腸菌群は発熱期間中は検出されたが、後熟後では検出されなかった。
後熱後におけるコマツナの根長に阻害は認められなかった。
5)後熟前と比べると後熟後においては汚物感・悪臭は感じられなかった。
6)3)〜5)より、後熟させることは必要である。
7)副資材当たりの豚糞処理量は4〜16倍であった。
(3)夏期における連続式腐熟試験
1)稲わら、おがくず、もみがら、豆がら、パーク、チップについて検討した。
発熱回数は4〜5回、発熱期間は130〜150日であり、副資材当りの豚糞処理量は回分式の2〜6倍に対し、連続式では7〜27倍であった。(表1)
2)いずれの場合も後熟は必要であり、もみがら、バークについてはより長い後熟期間を設けることが望ましい。
(4)以上の結果から、下記のように要約する。
1)連続添加により冬期間でも腐熟を進めることは可能である。しかし、触感、有機物の分解率、コマツナの発芽試験からみて、後熱は必要である。また、この方法により副資材の大幅な節減が可能である。
2)夏期においては回分式でも腐熟は進行する。しかし、連続添加については冬期と同様に後熟は必要であるが副資材の大幅な節減が可能である。
10.成果の具体的数字
表1 連続式腐熟試験の概要
副資材 | 発熱期間 (後熟期間) |
発熱 回数 |
発熱 日数 |
積算 日数 |
有機物分解率 | C/N比 | 豚糞処理量 | ||||
後熟前 | 後熟後 | 開始時 | 後熟後 | 回分 | 連続 | ||||||
冬 期 |
稲わら | 12/21〜3/7 (〜7/28) |
4 | 80 | 33 | 48% | 60% | 17 | 9 | - | 16 |
もみがら | 12/21〜2/26 (〜7/28) |
4 | 70 | 30 | 36 | 52 | 25 | 13 | - | 9 | |
おがくず | 1/25〜7/28 | 2 | 160 | 94 | 52 | - | 30 | - | - | 4 | |
夏 期 |
稲わら | 8/16〜12/21 (〜5/19) |
4 | 130 | 38 | 52 | 55 | 27 | 11 | 5 | 19 |
もみがら | 8/16〜12/21 (〜5/19) |
4 | 130 | 29 | 38 | 40 | 31 | 15 | 2 | 10 | |
おがくず | 8/16〜12/22 (〜5/19) |
4 | 130 | 79 | 58 | 65 | 36 | 12 | 2 | 7 | |
豆がら | 8/17〜12/20 (〜5/19) |
5 | 130 | 34 | 51 | 59 | 26 | 11 | 6 | 27 | |
バーク | 8/16〜1/15 (〜5/19) |
5 | 150 | 49 | 40 | 46 | 28 | 12 | 2 | 8 | |
チップ | 8/17〜1/15 (〜5/19) |
5 | 150 | 40 | 47 | 58 | 46 | 12 | 2 | 9 |
11.成果の活用面と留意点
(1)連続式腐熟では発熱期間および後熟期間を考慮すると、堆肥の施用は冬期調製では次年度の秋以降、夏期調製では次年度の春以降が望ましい。
(2)連続式腐熟では豚糞の添加時期を知るために、堆肥の熱発生の程度を把握することが必要である。
(3)開始時および豚糞添加後の水分含量はおおむね60%とする。したがって、感覚的な把握が必要である。
12.残された問題とその対応
(1)敷料の混入した豚糞の処理の検討
(2)腐熟期間の短縮化の検討
(3)堆肥製造のシステム化の検討