【指導参考事項】
成績概要書                      (作成3年1月)
1.課題の分類  草地 家畜飼養 粗飼料給与 D-3
          北海道 家草合同
2.研究課題名  馬におけるチモシー1番乾草の栄養価
          (軽種馬用自給飼料の品質改善に関する調査研究)
3.予算区分  受託
4.試験研究期間  昭和63〜平成2年
5.担当  中央農試 畜産部 畜産科
6.協力・分担関係
    日高中部地区農業改良普及所
    農林水産省家畜改良センター新冠牧場
    日本中央競馬会競走馬総合研究所

7.目的
日高地方の軽種馬生産農家の牧草の栽培はチモシーが主体で、早生品種の利用が90%以上を占めている。そこで、刈取時期を異にしたチモシー早生品種の1番乾草の馬での栄養価および養分摂取量を調べ、合理的な飼料給与の資とする。併せて、栄養価の推定方法を 検討する。

8.試験研究方法
1)消化試験:馬3頭およびめん羊3頭を用いた全糞採取法
2)供試乾草:静内町で慣行的な方法で調製されたチそシー早生品種1番乾草8点

9.結果の概要・要約
1)日高地方の乾草調製は7月に入ってから始める例が多い。7月に収穫した乾草の組成は粗蛋白質(CP)6%、ADF42%、リグニン7%、乾物消化率は40%以下、DCPは2%、可消化エネルギー(DE)は2Kcal/gDM以下であった。
2)刈取が遅くなると、不消化細胞壁物質およびリグニン含量が高くなり乾物消化率、DE含量が低くなり、低下の程度牡反芻家畜で評価される場合より大きかった。
3)乾物摂取量は反芻家畜でみられるような消化率の低下にともなう減少はみられないが、栄養価が低くなるため養分摂取量は減少した。
4)出穂期(6月中旬)までに刈取った1番乾草を馬に給与すると、繁殖雌馬の分娩後3か月間を除いた時期のDEおよびCPの要求量を充足することが出来た。
5)チモシー早生品種1番乾草のDE含量は、リグニン含量、酵素による乾物分解率および低消化性繊維(Ob)含量から推定可能であると考えられた。簡易な方法として、5月1日から刈取までの日数からの推定が可能で、1日当たり0.02Kcal/gDM低下した。
6)反芻家畜で評価された消化率や栄養価をそのまま馬に適用することは出来ず、また栄養価の変動要因を反芻家畜の場合と同様に考えることは適当でないことが示唆された。

10.主要成果の具体的数字

表1 乾草の化学組織、消化率、栄養摂取量
刈取月日 品種 化学組成(乾物中) エネルギー
消化率
(%)
DE1)
(Kcal/gDM)
摂取量(体重600kg)2)
CP(%) ADF(%) リグニン(%) CP(g) DE(Mcal)
6月8日 クンプウ 7.4 35.1 3.8 56 2.52 773(61) 26.3(91)
6月17日 ホクオウ 8.8 40.7 5.6 46 2.07 1230(98) 28.9(100)
6月22日 センポク 10.2 40.6 4.9 50 2.24 1316(105) 28.9(100)
6月28日 センポク 5.4 43.3 6.3 40 1.76 619(49) 20.2(70)
7月1日 ノサップ 7.6 39.2 6.1 43 1.90 953(76) 23.8(82)
7月6日 ホクオウ 5.9 41.9 7.6 37 1.56 821(65) 21.7(75)
7月24日 センポク 5.2 44.7 8.7 31 1.38 649(52) 17.2(60)
7月28日 センポク 5.4 44.2 8.4 33 1.49 732(58) 20.2(70)
1):可消化エネルギー、2):( )は離乳までの3か月間の要求量に対する充足率

表2 乾物消化率、摂取量および細胞壁物質の消化率、可消化率、不消化率
刈取月日 乾物 細胞壁物質(%)
消化率(%) 摂取量2) 消化率 可消化率(乾物) 不消化率(乾物)
6月8日 57 62 1.74 2.00 52 63 34.7 42.1 32.1 24.7
6月17日1) 49   2.33   42   28.8   39.7  
6月22日 53 63 2.15 1.61 52 69 35.9 47.6 33.1 21.4
6月28日 42 57 1.91 1.54 42 63 32.1 48.1 44.3 28.3
7月1日 45 56 2.09 1.40 40 58 28.0 40.6 42.0 29.4
7月6日 39 60 2.32 0.98 31 58 21.7 40.5 48.2 29.4
7月24日 31 52 2.08 0.92 28 51 21.1 38.5 54.4 37.0
7月28日 33 52 2.26 1.36 30 52 22.9 39.7 53.5 36.7
1):6月17日刈取の乾草はめん羊には供試しなかった。2):体重100kg当たり

可消化エネルギー(Y:Kcl/gDM)の推定
Y=3.32-0.23X(r=0.985)リグニン含量(X:%)
Y=-0.63+0.06X(r=0.962)酵素分解率(X:%)
Y=5.48-0.06X(r=2-0.945)0b含量(X:%)
Y=3.17-0.02X(r=-0.913)生育日数(X:日)

11.成果の活用面と留意点
1)本試験の成績はチモシー早生品種の1番乾草に適用する。

12.残された問題点とその対応
1)チモシーの中晩生品種および2,3番草の栄養価
2)他のイネ科牧草やマメ科牧草の栄養価