【指導参考事項】
成績概要書                (作成 平2年12月)
1.課題の分類  草地 永年草地:放牧 管理・利用 − C-4
          北海道 家草 合同
2.研究課題名  草地利用法の変換による植生制御
3.予算区分  経常
4.研究期間  完.(昭和60年(1985)〜平成2年(1990))
5.担当  北農試・草地管理研
6.協力・分担関係

7.目的
草地利用法、即ち採草、輪換放牧、定置放牧の各利用法と草地の植生の変化の関係を明確にする。
さらに、利用法の変換により草地の植生を制御する可能性を検討する。

8.試験方法
供試草地は、1981年に更新し、以後、放牧利用を行った草地を用いた。1985年より1区50aの採草利用区、輪換放牧利用区、定置放牧利用区を設け、各草地における草種構成の変化を調査した。採草区は年3回の刈取を行った。輪換放牧区は年6回の放牧を行った。定置放牧区は草量に応じて頭数を増減し常時滞牧させた。また、1987年より輪換放牧区の一部を兼用利用(1番草採草後4回放牧)に定置放牧区の一部を採草利用に変換し、草種構成の変化を調査した。施肥量(kg/10a)は、1985年に採草区でN:P2O5:K2O=10:20:9、輪換放牧区、定置放牧区で6:14:5とし、1986年以降は各区とも、N:P2O5:K2O=10:15:12とした。供試牛はアバディーンアンガスの繁殖牛とした。調査は5月中旬に各区3ヶ所、再生草の草種構成(重量割合)を調査した。

9.成果の概要
採草利用における収量および放牧利用における放牧強度の概要は表1に示すとおり。
春の再生草における草種構成割合の推移を、オーチャードグラス(OG)、ケンタッキーブルーグラス(KB)、シロクローバ(WC)、その他について、図1に示した。
①採草利用区では、2年目にOGが増加したが、3年目以降にはKBも増加し、OGとKBが約40〜50%で優占する植生となった。WCは2年目以降ほとんど消失し、その他は徐々に減少した。②輪換放牧利用区では、2年目、3年目とKBが増加し、4年日以降は増加が止まって、KBが約60%で優先する植生になった。OGは除々に減少したが、3年目以降は約20%で維持された。WCには大きな変化がなかった。
③定置放牧区では、2年目にKBが約60%に増加し、その後は安定して、KBが優占する植生になった。OG、WC、その他は、2年目以降、約10〜20%で推移した。
④輪換放牧利用から兼用利用(1番草採草後4回放牧)へ変換した場合では、変換後依然としてKBが優占したが、OGが多少回復する傾向がみられた。
⑤定置放牧から採草へ利用法を変換した場合では、2年間の定置放牧により、OGは10%に減少したが、採草への変換によって、約40%に増加した。一方、KBは変換後わずかに減少し、OGとKBが優占する植生となった。また、WCは変換後徐々に減少した。
以上から、草地利用法を変換することによって、植生の制御を行うことが可能であると判断した。
例えば、草地を4牧区(牧区1:放牧利用、牧区2:採草利用、牧区3:兼用利用A(1番草採草後 放牧)、牧区4:兼用利用B(1・2番草採草後放牧))に分け、年次とともに各利用法を循環する利用システムを用いるならば、OG、KB、WCの草種構成を長期間、良好な状態に維持することが可能であると考えられる。

10.総括的な成果の具体的数字
表1 採草利用における収量および放牧利用における放牧強度
  採草
Y(㎏/10a)
輪換放牧
G(頭日/ha)
定置放牧
G(頭日/ha)
輪放→兼用(1番草後放牧) 定放→採草
Y(kg/10a)
Y1(kg/10a) G(頭日/ha)
1985 873 570 504 輪換放牧 定置放牧
1986 980 720 701
1987 841 838 787 517 449 1070
1988 856 793 847 548 529 1190
1989 908 907 1026 401 671 1168
注) Y:1〜3番草の合計収量.G:放牧強度(牛体重500kg換算).Y1:1番草収量.


図1 草地の利用法の違いが草種構成に及ぼす影響
(●:OG、○:KB、▲:WC、△:その他、↓:利用法の変換時期)

11.成果の活用面と留意点
①本試験は、植生の制御についての原則を明らかにすることを目的としたため、放牧の各処理法が現実に行いうる放牧とは異なっている点に注意する必要がある。
②成果は、オーチャドグラスとケンタッキーブルーグラスの混在した草地に適用できるが、両草種の構成比率に極端な差がある場合や、他の草種からなる草地については、適用できない。

12.残された問題とその対応
本試験で得られた原則を利用した具体的な草地の利用方式を示す必要があるが、これについては現在、各利用方式を毎年変換して植生を良好に保ち、かつ高い生産をあげる利用方式について実証中である。