【指導参考事項】
完了試験研究成績         (作成平3年1月)
1.課題の分類  総合農業 営農 経営 5-3-8
          北海道 経営
2.研究課題名  養液栽培の技術構造と収益性
3.予算区分
4.研究期間  (昭63〜平1年)
5.担当  道立中央農業試験場経営部経営科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
近年、北海道各地で養液栽培が行われるようになった。しかし、養液栽培の収益性に関する資料は乏しい。
このことから、北海道で最も早くから数戸の農家が共同で養液栽培を行っている上川支庁管内のH町を取り上げ、養液栽培の収益性を調査分析し、今後の指導指針の参考に供する。

8.試験研究方法
1)北海道、調査対象地における養液栽培の現況
2)養液栽培の技術と収益性
 (1)施設の内容と投資額
 (2)品目、荷姿ごとの粗収益、費用、所得、利益
 (3)生産組合の所得分配

9.結果の概要・要約
1.養液栽培の規模と構成農家
(1)ミッパとハイセロを栽培するA、B、C生産組合は、A、B生産組合が6棟(1,998㎡)、C生産組合が5棟(1,665㎡)である。カイワレダイコンとクレソンを栽培するD生産組合は、前者が2棟(666㎡)、後者が3棟(999㎡)である。
(2)構成農家は、A生産組合が4戸、B生産組合2戸(昭和63年2戸のうちI戸が死亡したため1戸となる)、C生産組合2戸、D生産組合3戸である。耕地規模は、平均5haで町平均とほぼ同じである。
2.養液栽培の収益性と農業所得
(1)100㎡当り品目別の所得についてみると、所得が最も多いのがカイワレダイコンで173.3万円、次いでミッパが44万円、ハイセロとクレソンは10.5万円、8.4万円であった。所得率では、ミッパが50%、カイワレダイコンはミッパの半分の25%、ハイセロとクレソンは17%、6%となっている。構成員1時当り所得では、カイワレダイコンが約2,500円、ミッパが1,400円、ハイセロとクレソンは300円以下であった。
ハイセロは、ミッパの生産調整品目として面積のlO%前後取り入れているものである。
(2)構成農家の1戸当り所得(生産組合から支払れる労賃と利益の配当)をみると、表2であ る。A-4農家を除き、夫婦2人で最低200万円、最高431万円、平均293万円となっている。
農家ごとの所得合計に占める養液部門の割合は、平均48%である。後継者がいるA-3、A-4 農家を除くと、40%から50%前後の農家が多く、特に耕地規模の小さいC-1,D-3農家は67%、90%を占めており、養液栽培によって家計費を補っていることが認められる。

10.成果の具体的数字
表1 養液栽培の所得(100㎡当り)
品目
ミッパ(ウレタン付き) ハイセロ カイワレ
ダイコン
(ポットB)
クレソン
集団名 A B C 平均 A B C 平均 D D
生産量   kg
1,219
kg
1,083
kg
1,538
kg
1,264
kg
839
kg
1,013
kg
1,262
kg
1,086
ポット
267,547
kg
1,327
労働時間 時間 474 402 558 437 502 463 677 529 1,397 1,078
うち雇用 63 223 212 157 67 257 257 187 694 536
粗収益 千円 889.8 788.7 1,120.80 921.2 480.3 578.3 892.9 620.6 6,750.80 865.3
経営費 399.9 455.7 610.3 481.3 410.6 500.4 704.1 515.2 5,017.70 781.1
所得 489.9 333.0 510.5 439.9 78.7 77.9 188.8 105.4 1,733.10 84.2
所得率 % 55.1 42.2 45.5 47.8 16.4 13.5 21.1 17.0 25.7 6.3
構成員1時間
当り所得
1,192 1,861 1,476 1,423 181 378 450 310 2,467 155
注 粗収益は荷姿ごとの販売数量に過去の販売価額を用いた。

表2 養液栽培による所得の増加
構成
農家
労働力 作付面積(ha) 所得(万円) 養液部門へ
の出役時間
(時間)
水稲 秋小 その他 合計 養液部門 同左割合
A-1 1 1 2.45 2.51 0.05 5.01 574.8 238.0 41 2,698
A-2 1 1 2.05 1.96   4.01 498.3 210.4 42 2,288
A-3 2 2 7.09 2.73   9.82 956.3 200.7 21 2,143
A-4 2 1 3.30 0.83   4.13 296.7 87.4 29 733
B-1 1 1 6.34 1.17   7.51 852.1 428.7 50 2,710
C-1 1 1 2.81   0.37 3.18 528.5 356.7 67 3,504
C-2 1 1 3.50 0.70   4.20 455.0 249.3 55 2,137
D-1 1 1 5.20 1.05 0.16 6.41 741.4 387.4 52 3,798
D-2 1 1 5.30   1.66 6.96 784.4 340.3 43 3,022
D-3 1 1 1.01   0.14 1.15 479.5 431.3 90 4,514
1.2 1.1 4.34 1.10 0.23 5.67 685.2 293.0 48 2,755
注1.生産組合からの所得は、生産組合から支払われた労賃、利益配当。
  粗収益の算出は、荷姿ごとの販売数量に過去の販売価額を用いた。
 2.個別経営部門の所得は、昭和63年。

11.成果の活用面と留意点
養液栽培の定着には、販路の確保が前提となる。このため継続的出荷の体制を地域で作り上げることが必要である。

12.残された問題とその対応
ミニトマトなど他品目の収益性の解明が残されている。