1.課題の分類 総合農業 経営 2-5-27 北海道 総合農業 経営 2.研究課題名 農業雇用労働力需給の実態と農業振興施策の課題 3.予算区分 経常 4.研究期間 (昭63〜平2年) 5.担当 北海道農試・農村計画・農業組織研 今井健 6.協力・分担開係 なし |
7.目的
(1)北海道における産業構造の歴史的・地域的特質をふまえて地域労働市場及ぴ農家の離村・兼業就業の構造を解明すること。
(2)集約作物の導入、生産の組織化など農業生産における農家就業の拡充・安定化及ぴ農産加工など関連産業も含め地域における就業の拡大方策、通年就業の可能性などを解明すること。
(3)地域経済再編における農家就業改善の意義と役割を解明すること。
8.試験研究方法
(1)北海道全体及ぴ地域の労働市場、農家の就業に関する資料の整理、分析。
(2)水田地帯(冨良野地域)を対象とした、地域の労働市場及び農家の就業構造に関する実態調査並びにその分析。
9.結果の概要・要約
今日地域農業再編にとって重大な課題となっている、農業(関連)雇用労働力不足の社会経済的な構造と要因を解明するために、北海道の全農協252(回答率97.2%)を対象として、産官学共同でアンケート調査を行い、既存の統計では得られないデータを得、以下の点を解明した。
①今日の農業労働力不足の状況は、経営および労働力供給構造の変化から戦後第3の画期と位置づけることができるが、農業雇用を必要とする農業経営の性格及ぴ農業雇用労働力の給源の性格は異なる。(図1)
②農業雇用者の不足について、北海道全体で9割近い農協が問題となっており、地帯別には図2のように差異があり、野菜を主とした農協(地帯)でもっとも切実となっている。農業労働力の需要拡大の主要な要因は、野菜等の労働集約的作物の作付増大と、産地形成下における集出荷加工等の地域農業施設の拡充である。
③農業労働力の主たる供給は、農村近在の市街地に居住する既婦女性労働力にあり、地域滞留的な低賃金労働力の存在を前提として農業雇用労働力市場は形成されている。雇用形態は臨時雇用が一般的であり、就業条件の劣悪さと雇用の不安定性が、労働力供給の制限的要因となっている。その雇用の安定化が地域経済に対しても重要な役割を果たすことになる。(表1)
④農業(関連)労働力雇用は、それぞれの雇用主体毎に行われ、相互に競合関係が生じており、農協等における地域的な労働力需給調整が必要とされている。(表2)しかし、農業雇用に関する制度的・政策的な制約があり、農業雇用労働力の雇用・需給調整に関する地域での組織的対応は不十分である。
10.成果の具体的数字
図1 経営外労働力への依存
図2 地域における農業雇用者の過不足
表1 雇用形態(農家の雇用、構成比)
常雇 | 季節 | 日雇い | パート | 合計 | |
渡島檜山 | 0.0 | 21.1 | 68.4 | 10.5 | 100.0 |
後志 | 0.0 | 31.6 | 63.2 | 5.3 | 100.0 |
胆振日高 | 13.0 | 21.7 | 45.3 | 21.7 | 100.0 |
石狩 | 0.0 | 23.5 | 64.7 | 11.8 | 100.0 |
空知 | 5.4 | 27.0 | 54.1 | 13.5 | 100.0 |
留萌宗谷 | 6.3 | 37.5 | 37.5 | 18.8 | 100.0 |
上川 | 5.7 | 37.1 | 45.7 | 11.4 | 100.0 |
網走 | 0.0 | 40.0 | 57.1 | 2.9 | 100.0 |
十勝 | 3.4 | 41.4 | 51.7 | 3.4 | 100.0 |
釧路根室 | 28.0 | 60.0 | 8.0 | 4.0 | 100.0 |
合計 | 6.3 | 34.9 | 49.0 | 9.8 | 100.0 |
表2 農業被雇用者の募集をめぐり農協他との関係(構成比)
時々競合 | 競合激 しい |
相互に 補い合 |
無関係 | 合計 | |
渡島檜山 | 42.1 | 10.5 | 15.8 | 31.6 | 100.0 |
後志 | 58.8 | 11.8 | 17.6 | 11.8 | 100.0 |
胆振日高 | 20.0 | 10.0 | 35.0 | 35.0 | 100.0 |
石狩 | 23.5 | 0.0 | 11.8 | 64.7 | 100.0 |
空知 | 44.4 | 5.6 | 16.7 | 33.3 | 100.0 |
留萌宗谷 | 11.8 | 5.9 | 23.5 | 58.8 | 100.0 |
上川 | 47.1 | 26.5 | 17.6 | 8.8 | 100.0 |
網走 | 48.5 | 6.1 | 15.2 | 30.3 | 100.0 |
十勝 | 45.8 | 12.5 | 12.5 | 29.2 | 100.0 |
釧路根室 | 5.3 | 5.3 | 10.5 | 78.9 | 100.0 |
合計 | 37.3 | 10.2 | 17.4 | 35.2 | 100.0 |
11.成果の活用面と留意点
農業雇用に関する労働力の供給および需要構造は、地域によって異なる。また、農業雇用に関する現行制度の運用にも十分配慮する必要がある。
成果:「北海道における農業雇用に関する農協アンケート調査結果」
(1990年11月・北農試、北海道大学、北農中央会)
「農業労働者の性格と地域における需給構造」
(1991年3月「日本農業経済学会」誌掲載予定)
12.残された問題とその対応
地域における農業雇用労働力の募集・需給調整システムの形成・運営方法に関し、今後関連研究課題の中で実施する。