【指導参考事項】
成績概要書       (作成平成6年1月)
1.課題の分類
2.研究課題名:豆類地帯別栽培指針
3.予算区分:道単
4.研究期間:平成4〜5年
5.担当:中央農試 畑一、情報課、専技室
    十勝農試 豆一、豆二、専技室
    上川農試 専技室
    北見農試 専技室
    道農政部 農業改良課、畑園課
6.協力.・分担:道内各地域農業改良普及所

7.目的
道産豆類は、貿易の自由化等厳しい環境におかれているが、適地・適品種・適切な条件で栽培し、良質豆類の安定生産に寄与するため、本指針を作成した。

8.結果の概要・要約
1)活用したデータ
(1)気象
参考にした気象データは、道立中央農試のHARlSで保存されている全道162箇所の地域気象観測所(アメダス:日本気象協会提供)の1983〜1992年のlOカ年の観測値である。なお、集計は独自に開発したプログラムによった。
(2)アンケート調査
全道60の農業改良普及所に依頼し、気象(晩霜・初霜の最早・最晩)、栽培{播種期(始、期、終)、開花(始、期)、収穫(始、期、終)}について、5ha以上栽培している市町村を対象に調査した。
(3)収量
農林水産省北海道統計情報事務所の、昭和58年から平成4年までの10カ年のデータを活用して、回帰分析を行い、市町村別の平均値、標準偏差、変異係数(安定度)相関係数、回帰係数等を求めた。これらの結果から・市町村の地帯区分を行うとともに、市町村別に目標収量(平成10年度)を設定した。
2)栽培地帯区分の設定
大豆、小豆、菜豆別に、気象条件やアンケート、これまでの収量実績から、大豆は6区分、小豆は4区分、菜豆は2区分に地帯区分を行った。
(1)大豆
大豆は、多数の品種があり、道内各地で栽培可能であるが、気温との反応性が高いことから、おおむね積算気温によって地帯区分を設定した。また、開花期前後の低温による障害、登熟期の霜害、コンバイン収穫期の降水確率等を考慮し、適品種を選定した。
(2)小豆
小豆は生育期問の気象条件、特に平均気温との反応が高く、また、降霜に弱いため、栽培はその2要因によって制限される。一方、全道的な気温変動はオホーツク海高気圧の影響を受けやすい道東と、その影響が比較的少ない道央以南とに分けられる。
以上の要因により地帯区分を設定した。
(3)菜豆
菜豆は生育期問が短く、畑作地帯ではどこでも栽培可能であるが、地帯により低温年には霜害を被り、また、成熟期前後の降雨により著しく品質を劣化させる。気温の比較的高い地帯では小粒化が問題となる。これらの要因を考慮して地帯区分を設定した。

9.成果の具体的数字
1)栽培地帯区分の設定理由
(1)大豆
地帯区分 該当地域 熟期 適応品種 積算気温(6-9月)
及び無霜期間
網走(中央部を
除く)、上川北
部の一部、宗谷
南部の一部
早生
中生の早
(奥原1号)
トヨコマチ
夏期の気温が低く
、積算気温2000℃
前後、無霜期間
125〜130日
十勝(中央部を
除く)、網走中
央部、上川中
央部、留萌、後
志の羊蹄山麓
中生の早
〜中
トヨコマチ、トヨムスメ
キタムスメ、北見白
カリユタカ、スズヒメ
音更大袖
大袖の舞
トカチクロ
夏期の気温がやや
低く、積算気温
2000℃前後(上川、
留萌地方は2000〜
2100℃)、無霜期
間130〜140日。
十勝中央部、
上川中南部、
日高、後志(羊
蹄山麓を除く)
中生 トヨムスメ、
キタムスメ
北見白、カリユタカ
スズヒメ、スズマル
音更大袖、大袖の舞、
ユウヒメ、ツルムスメ、
トカチクロ
積算気温2100℃
〜2200℃、無霜期
間135〜150日。
空知、石狩、
胆振東部と
西部、渡島北部
中生〜
中生の晩
トヨムスメ、カリユタカ
ツルムスメ、スズマル
キタホマレ、ツルコガネ
ユウヒメ、生光黒
積算気温2100
〜2200℃、無霜期間
150〜160日。
桧山北部、
渡島南部
中生の晩
〜晩生
中生光黒
ユウヅル
積算気温2200℃
前後、無霜期間
160日以上。
桧山南部 晩生 ユウヅル
(白鶴の子)
(晩生光黒)
積算気温2300℃
前後、無霜期間
165日以上。

(2)小豆
地帯区分 該当地域 適応品種 平均気温(6〜9月)
及び無霜期間
早生
種地帯
Ⅰ-1
(道東)
網走(中央部を除く)、
十勝(中央部を除く)。
ハヤテショウズ
サホロショウズ
平均気温15.5〜16.7℃
または無霜期間130日
未満の地帯。
Ⅰ-2
(道央、
道北)
上川の北部・東部
及び南部、空知北
部、羊蹄山麓。
ハヤテショウズ
サホロショウズ
アケノワセ
同上
早・中生
種地帯
Ⅱ-1
(道東)
十勝中央部、
網走中央部。
エリモショウズ
ハツネショウズ
ハヤテショウズ
サホロショウズ
平均気温15.5〜16.7℃
で無霜期間150日以上、
または平均気温16.8〜
18.3℃で無霜期間130
〜149日の地帯。
Ⅱ-2
(道央、
道北)
上川中部・西部、
空知北西部、
留萌北部及び
中部山間、石狩
南部、胆振東部
・西部の一部、日高、
羊蹄山麓周辺。
エモリショウズ
寿小豆
ハツネショウズ
アケノワセ
サホロショウズ
同上
中生
種地帯
留萌中南部沿海、
空知中南部、
石狩中北部、
後志、胆振西部の
一部、桧山北部、
渡島北部、南部。
エリモショウズ
寿小豆
ハツネショウズ
アカネダイナゴン
カムイダイナゴン
平均気温18.4℃以上
で無霜期間で170日未満
または平均気温16.8
〜18.3℃で無霜期間
150日以上の地帯。
中・晩生
種地帯
桧山南部、渡島西
部。
アカネダイナゴン
カムイダイナゴン
エモリショウズ
平均気温18.4℃以上
で無霜期間170日以上
の地帯。

(3)菜豆
地帯
区分
該当地域 適応品種 気象の特徴
道東
十勝及び網走 大正金時
北海金時
丹頂金時
福白金時
福粒中長
姫手亡
十育A-52号
気温は比較的低くしば
しば低温に見舞われる
。8月下旬から9月上
旬にかけて雨が多い。
晩霜は遅く変動が大き
い。初霜は早い。
道央
上川、空知
石狩、胆振
留萌
大正金時
北海金時
丹頂金時
福白金時
福粒中長
姫手亡
十育A-52号
気温は高く、低温の来
襲は比較的少ない。
晩霜は早く初霜は遅い。

2)栽培地帯区分図 省略

10.成果の活用と留意点
地帯別の栽培上の留意点と特記事項は本成績に示したが各地帯共通留意点と特記事項は以下のとうりである。
(1)大豆
[1]輪作体系のもとで栽培を行い、地力の維持、向上を図るため有機物の施用を心がける。
[2]地域の気象条件、土壌病害の発生前歴(茎疫病、シストセンチュウ)を考慮して適品種を選択する。
[3]発生が増加傾向にあるダイズわい化病に対する対策として、低抗性品種を利用する。
さらに農薬による防除(播溝施用及ぴ茎葉散布)を行うとともに、圃場や周辺の雑草化したクローバの除去に努める。
[4]健全な種子の確保及び適切な種子更新を行い、根粒菌接種及び種子消毒を励行する。
[5]圃場の透排水対策を行い、耕起、砕土、整地を丁寧こして、出芽、初期生育の整一化
を図る。
[6]品種の特性に応じた適正な株数(個体数)を確保する。
[7]播種後の適正な雑草防除に努める。
[8]病害虫の防除を適正に行う(ハト害、タネバエ、ダイズわい化病、菌核病、茎疫病、マメシンタイガ、ダイズシストセンチュウ)。
[9]コンバイン収穫にあたっては、わい化病個体や青い未成熟個体は事前に刈り取り、茎
水分に注意して(35〜40%以下)適期に収穫し、汚粒が発生しないよう注意する。
(2)小豆
[1]輪作体系のもとで栽培を行い、地力維持、向上を図るため有機物の施用を心がける。
[2]地域の気象条件、土壌病害の発生前歴(落葉病、茎疫病、萎ちょう病)を考慮して適品種を選択する。
[3]健全な種子の確保及び適切な種子更新を行い、根粒菌接種及び種子消毒を励行する。
[4]安定、良質生産のために生育期間、登熟期の気象条件を考慮し播種期を決定する。
[5]圃場の透排水対策を行い、耕起、砕土、整地を丁寧にして、出芽、初期生育の整一化
を図る。
[6]適正な株数(個体数)め確保に努める。
[7]播種後の適正な雑草防除に努める。
[8]病害虫防除を適正に行う(菌核病、輪紋病、灰色かび病、炭そ病、・フキノメイガ、アブラムシ等)。
[9]成熟期の判定を的確に行って速やかに刈り取り、その後の収穫管理を適正に行う。
(3)菜豆
[1]輪作体系のもとで栽培を行い、地力の維持、向上を図るため有機物の施用を心がける。
[2]健全な種子の確保及び適切な種子更新を行い、根粒菌接種及ぴ種子消毒を励行する。
[3]金時類では良質生産のために登熟期の気象条件を考慮して播種期を決定する。
[4]圃場の透排水対策を行い、耕起、砕土、整地を丁寧にして、出芽、初期生育の整一化
を図る。
〔5]品種の特性に応じた適正な株数(個体数)を確保する。
[6]播種後の適正な雑草防除に努める。
[7]病害虫防除を適正に行う(菌核病、炭そ病、灰色かび病、かさ桔病、フキノメイガ等)。
[8]成熟期の判定を的確に行って速やかに刈り取り、その後の収穫管理を適正に行う。

11.残された問題とその対応
1)土壌の種類を考慮した地帯別栽培指針の作成。
2)小豆のⅢ、Ⅳ地帯における品質を考慮した最適播種期の確定。