【指導参考事項】
1.課題の分類
北海道 野菜 栽培     タマネギ    栽培一般
2.研究課題名 タマネギ移植苗の保存管理法に関する試験
3.予算区分 共同(民間)
4.研究期間 平成3年〜5年(1991年〜1993年)
5.担当 北海道立中央農業試験場
     園芸部 野菜花き第一科
     農産化学部 流通貯蔵科
6.協力・分担関係

7.目的
タマネギ移植用苗の保存管理方法を開発し、テープ式移植機の前作業の効率化に寄与する。

8.試験研究方法
1)苗の生育に伴う成分変化(1991〜1992年)
供試材料:供試品種「レオ」、1991年は4月8日〜5月24日、1992年は4月20日〜5月
21日にかけて経時的に苗をサンプリングし、成分変化を調査した。

2)保存温度と包装形態に関する試験(1991〜1993年)
(1)保存温度:2,5,10℃、室温(農試倉庫内:平均13〜15℃)
(2)包装形態:包装(ポリエチレンフイルム0.03㎜、ポリプロピレンフイルムO.035㎜:1991年のみ)、無包装
(3)保存日数:1991年5,11,15日間
  1992年4,6,9日間
  1993年5,9日間
3)苗の保存条件が収量及び品質に与える影響(1991〜1993年)
2)の試験に供試した苗をテープ式移植機を用いて定植し、移植機に対する適応性、定植後の活着、生育、収量、品質について調査した。

9.結果の概要・要約
1)苗中の主要な糖は、果糖、ブドウ糖とショ糖であった。苗の生育に伴い、苗重量当た りの果糖とブドウ糖含量は増加傾向を示したが、ショ糖については明らかではなかった。2)苗の保存は、所定の温度に設定した保冷庫及び倉庫(冷暗所)において実施した。
3)苗の保存温度は2〜5℃が適当であった。それ以上の高い温度では苗中の糖含量の減少が大きく、葉先の萎れや根の褐変など苗の保存状態も劣り、定植後の活着、生育及び収量 が劣った。
4)保存日数は、5日間以内が望ましい。低温で保存しても、保存日数が長くなるにつれて、欠株や規格外球の発生が増加し、低収傾向となった。
5)現地における実証試験においても、5℃、5〜6日間の保存で問題はなかった。
6)保存方法として、ポリエチレンフィルム(厚さO.03㎜)による包装が、無包装よリ、苗からの蒸散が抑制されることによリ保存状態が良く、定植後の生育及び収量も安定した。
また、包装保存は、保存中の苗への水分補給管理を省くことができた。


10.成果の具体的数字


図1 苗生育による保存苗(1991年)


図2 苗保存中の糖の変化(無包装、1992年)

表1 無包装による保存苗(1992年)   表2 包装による保存苗
   (ポリエチレンフイルム,1992年)
調査月日
(保存日数)
保存温度
苗重量
g
*発根 **葉の
しおれ
    苗重量
g
*発根 **葉の
しおれ
 
5.12(0) - 1.09 0 0   1.09 0 0  
5.16(4) 2 1.08 0 0   0.98 0 0  
5 0.87 0 0   0.96 0 0  
10 1.01 1 1   1.1 0 0  
***室温 0.71 1 1   1.12 0 0  
5.18(6) 2 1 0 0   1.08 0 0  
5 1.01 0 0   0.95 0 0  
10 0.84 1 2   1.03 0 0  
室温 0.99 1 2 根の褐変 1.04 0 1  
5.21(9) 2 1.13 0 0   1.11 0 0  
5 0.95 0 1   1.18 0 0  
10 1.05 1 2 根の褐変 1.15 1 1  
室温 1.1 2 2 根の褐変 1.03 1 1 根の褐変
*発根:無し;0,僅か(5mm以下);1, 甚だ(5mm以上);2
**葉のしおれ:無し;0,僅か;1, 甚だ(葉先3cm以上枯死;2
***室温:平均14.1℃(農試倉庫内)

表3 定植後の生育と収量(1993年)
包装
形態
保存
温度
(℃)
保存
日数
(日)
欠株

(%)
生育調査
(7月19日)
規格内
球重
(㎏/a)
同左比
(%)
規格外
球重
(㎏/a)
総収量
(㎏/a)
同左比
(%)
平均
一球重
(g)
規格内

(%)
葉数 草丈
当日巻取り(5月12日) 0 7.1 6.5 57.7 749 - 49 799 - 263 93.8
当日巻取り(5月17日) 0 3.1 5.7 54.6 668 (100) 96 764 (100) 248 87.4
無包装 2 5 6.5 5.1 53.8 555 83 126 681 89 230 81.5
5 5 5.6 4.4 47 515 77 133 648 85 218 79.4
10 5 7.1 6.5 45.2 350 52 189 538 70 181 65
*室温 5 6.7 4 48.1 288 43 284 571 75 188 50.3
**PE包装 2 5 7.3 5 53.5 655 98 106 761 100 265 86.1
5 5 5.3 4.6 48.2 649 97 66 715 94 234 90.8
10 5 8.1 4.2 49.6 508 76 109 616 81 213 82.4
*室温 5 6.9 4.6 51.7 305 46 289 594 78 197 51.4
当日巻取り(5月21日) 0 3.1 5.1 47.6 543 (100) 207 750 (100) 240 72.4
無包装 2 9 2.3 3.7 41.5 429 79 144 573 76 179 74.9
5 9 6.7 4.8 50 399 74 120 519 69 170 76.9
10 9 76.7 4 42.6 82 15 51 133 18 209 61.5
*室温 9 72.5 3.8 41.9 239 44 13 251 34 312 95
**PE包装 2 9 4.6 5.3 53.8 457 84 238 695 93 228 65.7
5 9 3.3 4.9 47.7 450 83 229 679 91 220 66.2
10 9 5 4.4 45.5 396 73 131 526 70 169 75.2
*室温 9 6.7 4.4 46.3 256 47 286 542 72 182 47.3
*室温:平均13.9℃(農試倉庫内)、**PE包装:ポリエチレンフイルム0.03mm

11.成果の活用面と留意点
1)苗は、テープに巻き取り立てて置き、光に当てずに保存する。
2)無包装の場合は、給水したむしろ等の上に置き、遮光と蒸散技術のためにシートで覆う。
3)天候等の理由により定植作業ができない等やむを得ない場合の保存技術をして適用する。

12.残された間認とその対応