1.試験の分類 総合農業 作物生産 夏作物 北海道 畑作・土肥 バレイショ バレイショ Ⅱ-4 2.研究課題名 ぱれいしょでん粉の品質特性と変動要因 (でん粉利用向け高加工適性バレイショの栽培技術の確立) (でん粉利用向け高加工適性バレイショの品質評価法) 3.予算区分 補助(特定農産物緊急対応) 4.研究期間 平成元年〜5年 5.担当 道立中央農試 農産化学部 品質評価科 道立十勝農試 研究部 土壌肥料科 6.協力・分担関係 |
7.目的
ばれいしょでん粉の品質特性値の相互関係を検討し、ぱれいしょでん粉を解析するのに用いる品質特性値の項目を選定する。これを用いて、ぱれいしょでん粉の特性に及ぼす施肥、塊茎重、生育時期、品種等の影響について検討し、ぱれいしょでん粉の品質向上・安定化を図ることを目的とした。
8.試験研究方法
1)施肥試験:窒素施肥量(0,5,10,15Kg/10a・4,6,8,10Kg/10a:紅丸)、窒素の肥料形態(硫安、塩安、硝安、尿素:紅丸)、尿素葉面散布処理(紅丸)、リン酸施肥量(10,20,30,60Kg/10a・14,28;14,42Kg/10a:紅丸)、カリ施肥量(0,11,22,33Kg/10a:紅丸、農林1号)
2)塊茎サイズ別試験:S,M,L,LL,(紅丸)
3)生育時期別試験:収穫時期(60日前、40日前、20日前、枯ちょう期・40日前、27日前、14日前、枯ちょう期、7日後:紅丸)
4)品種別試験:紅丸、コナフブキ、エニワ、トヨアカリ、ハツフブキ、アスタルテ、農林1号、男爵いも、メークイン、ワセシロ、キタアカリ
5)調査項目:糊化特性(最高粘度、ブレークダウン、糊化開始温度、最高粘度時温度)、平均粒子径、てん粉の無機成分、乾物塊茎の無機成分、でん粉価、収量
9.結果の概要・要約
1)糊化特性間の関係を検討した結果、最高粘度、ブレークダウン、最高粘度時温度の3項目はお互いに相関が高く、最高粘度は糊化特性を代表する特性値と考えられた(表1)。特に、最高粘度とブレークダウンの相関係数(r=O.940**)は高かった。
2)同一品種の中では最高粘度と平均粒子径は、独立した品質特性値と考えられた(表2)。
3)でん粉の特性とでん粉価の関係には、一定の傾向は認められなかった。
4)最高粘度、平均粒子径には、3要素の標準的な施肥量の前後で差異がなかった。
5)でん粉の平均粒子径には、塊茎重による差異が認められ、S(60g以下)の塊茎より得られたでん粉では、M,L,LLの塊茎より得られたでん粉に比べて平均粒子径が小さい傾向であった(図1)。
6)平均粒子径は枯ちょう期まで大きくなる傾向が認められた。最高粘度の上昇も黄変期以後は緩慢であったが、枯ちょう期まで高まる傾向が認められた(図2)。
7)最高粘度と平均粒子径をパラメーターとして用いることにより、主要でん粉原料用品種のでん粉特性の差異を表すことが可能であった(図3)。
10.成果の具体的数字
表1 糊化特性間の関係(1990〜1992年、中央及び十勝農試)n=512
ブレークダウン | 糊化開始温度 | 最高粘度時温度 | |
最高粘度 | 0.940** | -0.075 | -0.735** |
ブレークダウン | -0.351** | -0.893** | |
糊化開始温度 | 0.629** |
表2 糊化特性と平均粒子径及びでん粉価の関係(十勝農試、紅丸)
1991年(n=15) | 1992年(n=48) | 1993年(n=16) | ||||
平均粒子径 | でん粉価 | 平均粒子径 | でん粉価 | 平均粒子径 | でん粉価 | |
最高粘度 | -0.106 | -0.23 | -0.336* | -0.233 | 0.111 | 0.408 |
ブレークダウン | -0.17 | -0.243 | -0.253 | -0.084 | 0.15 | 0.171 |
糊化開始温度 | 0.224 | 0.371 | -0.095 | -0.088 | -0.057 | 0.34 |
最高粘度時温度 | 0.194 | 0.408 | 0.222 | 0.109 | 0.076 | 0.215 |
図1 塊茎重と平均粒子径、最高粘度
図2 収穫時期と最高粘度、平均粒子径
図3 最高粘度と平均粒子径からみた品種の特徴
11.成果の活用面と留意事項
てん粉特性の安定のためには、未熟いもの混入、品種の混合を避ける。
12.残された問題点とその対応
てん粉特性による用途別の適性の検討が必要である。