成積概要書【指導参考事項】(作成平成6年1月)
1.課題の分類 総合農業 生産環境
         北海道
2.研究課題名 春夏まきレタスの品質向上のための栽培管理対策
        (消費者二一ズの多様化に向けた道産野菜の晶質向上対策)
3.予算区分 道費
4.研究期間平成2〜4年
5.担当 道南農試 研究部 土壌肥料科
6.協力・分担関係 なし

7.目的 レタスの内部品質及び保鮮性とN施肥を中心とし栽培方法の関係を調査検討する。

8.試験研究方法
1)供試品種:カルマーMR(クリスプ・ヘッド型)
2)栽培方法:栽植密度;6250株/10a(4条千鳥植え/1.2m 40㎝x40㎝)、栽培条件;ハウス及び露地裁培、高畝、白黒ダブルマルチ、灌水条件:収穫2週間前停止(一部 収穫5,10日前停止)施肥量(kg/10a):NO,5,10,15,20,30(硝安),P20512(過石),K2014(硫加)、供試土壌:褐色低地土
播種期;4月20日〜6月14日、定植期;5月21日〜7月12日、収穫期;6月22日〜8月21日
3)保鮮性調査条件:0.02mmポリエチレンフィルムで包装し20℃、暗所で7日間静置
4)分析法:レタスのビタミンC含量はヒドラジン法で、硝酸及ぴ全糖含量はHPLCで測定。
5)保鮮性評価法:神奈川県農業総合研究所報告に準じて外観品質(萎凋、黄化、損傷、切り口渇変)について4段階で評価し、各評点の平均値から保鮮性を判定した。(4:収穫時に同じ、3:やや劣化、2:明らかに劣化、1:著しく劣化)

9.結果の続要・要約
1)レタスの結球重と保鮮性、結球葉のBrix及びビタミンC含量の間には負の相関関係が認められた(図1)。結球重600g以上、結球葉Brix3%以下のレタスは保鮮性の低下が著しかった(図2)。なお、本試験の結果から結球部600g以上のレタスは結球葉Brixが3.0以下である傾向が認められた(図2)。これらの結果とレタスの市場性を考慮して、高品質レタスの指標値を結球重では500gから600gとした。
2)定植後収穫までの期間が32日から42日の場合、収量3.8t/1Oa(結球部600g程度)及ぴ3.2t/10aにおけるN吸収量は、それぞれ9㎏/10a,7㎏/1Oaであった(図3)、レタスのN吸収量(Y) と吸収可能N量(推定値)(X)(跡地土壌硝酸態N量+レタス吸収N量)の間にはY=aX^3+bX^2+cX+d(a=3.1x10-4,b=-0,036,c=1.33,d=-3.05)の関係が認められ、9㎏/10a及ぴ7㎏/10aのN吸収量を得るのに必要な吸収可能N量(推定値)は、それぞれ13.5㎏/10a,10㎏/1Oaと考えられた(図4)。即ち土壌のN供給量が0㎏/10aの場合、結球重550g(500gと600gの平均)を得るには平均12㎏/10aのN施肥量が必要と考えられ、12㎏/1Oaを標準N施肥量とした。
3)N施肥量の増加によりレタスの保鮮性の低下、ビタミンC含量の減少、硝酸含量の増加が認められ(表1)、施肥日の算出に際しては、土壌からのN供給量を「ほうれん草の内部品質向上のための栽培管理対策(平成8年1月 道南農試)」に準拠して栽培前の土壌硝酸態N量で評価し、これを標準N施肥量(12㎏/10a)から差し引くぺきと考えられた。その理由として、レタスの栽培期間が40日前後であること、レタス栽培において硝酸含量の低下、保鮮性の向上など内部品質の向上の為には多水分条件での栽培はさけるべき(図5)であることから栽培期間中における土壌からのNの新たな放出、及び施肥Nも含めた土壌Nの流亡は無視できると考えたためである。
4)以上の事を、高品質レタスの品質指標値と栽培指針として表2に整理した。

10.成果の具体的数字


図1 結球重,保鮮性,内部成分の相互関係


図2 結球重とレタス保鮮性の関係及びBrixの関係


図3 N吸収量とレタスの収量の関係


図4 吸収可能N量(推定値)(kg/10a)とレタスの
N吸収量の関係(吸収可能N量(推定値):跡地硝
酸態N量+レタスN吸収量)

表1 N施肥量と保鮮性及び内部成分の関係
N施肥量(kg/10a) 0 5 10 15
結球重(g) 254 429 584 558
調整歩留まり率(%) 72 68 58 53
硝酸含量(㎎/100g) 73 70 106 140
ビタミンC含量(㎎/100g) 12.1 16 9.6 8.5


図5 レタスの硝酸含量に及ぼす水分管理の影響

表2 高品質レタスの品質指標値と栽培指針
指標値 栽培指針 600g以上のレタスとの比較 備考
結球重500〜600g
(八分結球)
(栽培期間30〜42日)
Brix3%以上
・標準N施肥邑12㎏/10a
・栽培前の土壌硝酸態N
 を差し引くこと
・保鮮性→向上
・ビタミンC含量→増加
・硝酸含量→減少
灌水停止時期は収穫
2週間前とする
(硝酸含量減少)

11.成果の活用面と留意点
1)本試験の供試品種はクリスプ・ヘッド型のカルマーMRである。
2)本試験の作型は春夏まき(マルチ)を対象としたものである。
3)本試験は沖積土壌を対象とした。

12.残された問題とその対応
1)レタスの内部品質、収量からみた最適土壌pF値の策定
2〉品種間比較調査