【指導参考事項】
完了試順成績      (平成6年1月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 病害虫
          北海道  病理昆虫  病害虫  野菜
2.研究課題名 たまねぎのネギアザミウマ防除効率化試験
        (たまねぎ病害虫の減農薬栽培技術確立試験)
3.予算区分 道費
4.研究期間 維・中・完(平成2〜5年)
5.担当
   北見農試 研究部 病虫科
6.協力・分担

7.目的
ネギアザミウマの発生動態を明かにし、被害解析から要防除水準を設定、発生モニタリング法を確立して、防除の効率化を図る。

8.試験研究方法
(1)発生実態調査 (2)発生動態調査 (3)被害解析と減農薬防除

9.結果の概要・要約
(1)発生実態調査
1)ネギアザミウマによるたまねぎの被害は、たまねぎ畑の周辺環境によって異なり、たまねぎ畑と水田が混在する地域では、たまねぎ畑が点在する畑作地域に比べ被害が少ないが、防風林や雑草地に隣接する畑での被害は多い(図1)。
(2)発生動態調査
1)たまねぎ圃場への成虫の飛来侵入は集中的で、分散も速く、寄生株率が10%になった10日後にはほぼ100%になった(表1)。
1)成虫の多飛来期は、たまねぎ圃場に設置した簡易トラップでも把握が可能であった(表1)がたまねぎの寄生株率も高まっていて、5日後には幼虫の寄生が認められた。
3)発生盛期には幼虫が主体で個体数も多いが、寄生程度指数による省力的な調査でも発生状況が推定出来る(図2)。
(3)被害解析と減農薬防除
1)ネギアザミウマの被害により草丈がわい小となり(図3)、倒伏期が遅れ、球の小形化によりり1球重が減少し、規格内球の収量が減収した(表2)。
2)被害の程度は7月の累積寄生虫数と相関関係があり、7月の株当り累積寄生虫数が1,000頭(30頭/日)以上で顕著になる傾向があった(図3)。
3)株当り寄生数と寄生程度指数の関係から、寄生程度指数20が要防除水準と推定された。4)防除の重点時期は7月で(表2,3)、防除開始から10日以内に2〜3回の連続散布が効果的であった。

10.主要成果の具体的数字


             図1 たまねぎ畑の周辺環境と被害


      図2 株当虫数(幼虫)と寄生程度


図3 7月累積虫数と草丈

表1 初期の発生推移とトラップ捕獲状況(1992)

N0.1 N0.2 No.3 N0.4 N0.5 No.6




























































6.2 0.1 20 0 0 0.2 10 0 0 0 0 0 0 0.2 10 0 0 0.1 10 0 0 0 0 0 0
25 1.3 70 6 0 1 60 5 0 1.1 80 1.0 0 1.1 60 2 0 0.8 70 2 0 1 60 2 0
30 23.1 100 31 60 14.3 100 20 10 18.1 100 13 50 22.9 100 10 60 10.5 100 15 80 9.5 100 14 60
7.5 6.5   7 100 6   3 90 8.1   7 100 7.4   10 100 6   12 100 7   9 100

表2 防除時期、回数と効果(1990)
調査項目 処理区分
ABCDE ABCD ABCE ABC ABD AB CD C D CONT
7月累積虫数 441 463 622 663 764 1095 1435 1690 2280 2788
草丈 85 86 85 88 80 87 74 75 68 65
収量 5.35 5.20 5.10 5.11 4.07 4.57 4.43 2.29 3.93 2.25
1球重 182 181 173 178 168 168 155 137 142 121
 処理月日:A=6.21 B=7.2 C=7.11 D=7.21 E=8.1

表3 7月防除と8月防除の比較(1992)
調査
月日
4回散布 2回散布 後期散布 無散布
幼虫 被害 幼虫 被害 幼虫 被害 幼虫 被害
6. 30 17.5 32.5 11.3 26.3     6.7 26.7
7. 6 45.8 48.3 31.7 45.4     57.9 53.3
10 30.0 48.3 52.1 47.1     77.1 58.3
15 8.3 19.2 20.0 56.3     93.4 84.6
20 1.7 44.1 27.1 55.0     97.5 98.8
30 49.2 56.6 29.2 62.9 63.3 91.7 71.7 98.3
収量(t) 5.57 5.10 4.79 4.03
 幼虫・被害ともに指数


図4 収量と7月累積虫数(幼虫)

I1.成果の活用面と留意点
(1)防除の重点時期は7月で、10日以内の間隔で2〜3回連続防除すると効果が高い。
(2)防除開始時期は成虫の寄生株率が1O%以上になったら10日以内、簡易トラップで多飛来が認められたら5日以内に設定する。
(3)2回目以降の防除は寄生程度指数が20、または寄生株率が50を目安に随時行う。
(4〕寄生調査は6月中旬から5日間隔、たまねぎの抽出芯葉を含む3葉で、無作意20株を調査するが葉身基部に潜んでいるので留意する。
(5)葉身基部に簡易トラップは6月中旬〜7月上旬にかけて、圃場周辺部に設置し、5日間隔で調査するがトラップの表面に土砂が付着すると粘着力が低下し、調査も困難になるので交換する。

12.残された問題点とその対応
1.発生量の予察技術確立
2.成虫の越冬場所の特定