【指導参考事項】                     (作成平成6年1月)
1.課題の分類 総合農業 生産環境 病害虫 V-3
         北海道
2.研究課題名
酸性水溶液の散布による野菜類細菌病の防除(葉面pHの調整による野菜類細菌病の防除)
3.予算区分 道費
4.担当 道南農試研究部病虫科
5.研究期間 昭和63年〜平成3年
6.協カ・分担関係

7.目的 酸性水溶液を利用し、野菜類に多発する各種細菌病の安全、有効かつ経済的防除技術を確立し、野菜類の安全多収生産に資する。

8.試験研究方法
発病調査、有効薬剤の検索、pH計測、微生物調査、薬害軽減試験、ハウス・ほ場試験

9.結果の概要・要約
1)酸性水溶液の散布によりキュウリ葉面pHは著しく低下すると考えられた。
2)散水により酸性水溶液はキュウリ葉から急速に流亡すると考えられた。
3)酸性水溶液処理によりキュウリ班点細菌病菌および野菜類軟腐病気はいずれも急速に死滅した。
4)キュウリ葉に散布された酸性水溶液の殺菌効果は散布後しだいに低下する傾向にあるが、殺菌効果は少なくとも散布後1週間目においても認められた。
5)ハクサイは種期とハクサイ軟腐病初発生期との関係を調査した結果、4月30目からは種までの日数をX、は種から軟腐病初発生日までの日数をYとすると、Y=54.44-0,270Xの回帰直線が得られた。相関係数は-0.878**であった。
6)5月中旬以降、ハクサイは種期が夏期に移行するにしたがって、ハクサイ軟腐病の発病程度は増大する傾向にあった。一方、8月10日以降には種したハクサイにおいては、軟腐病の発生程度はこれ以前のは種期のものに比較して極めて小さく、これらの時期には種したハクサイヘの軟腐病防除薬剤の散布の必要性は小さいものと考えられた。
7)夏まきハクサイにおいて、酸性水溶液の散布時期および回数とハクサイ軟腐病に対する防除効果との関係を検討した結果、一定の防除効果を得るためには、定植後まもない時期から酸性水溶液を定期散布する必果がある。
8)酸性水溶液の散布により生じる薬害発生の展着剤加用による軽減効果を検討し、有効な展着剤をいくつか認めた。特に、アルキルスルホコハク酸塩系展着剤の薬害発生軽減効果が高かった。
9)フマル酸水溶液(500倍)、フマル酸・フマル酸ニナトリウム混合水溶液(670倍,2,000倍)、DL-リンゴ酸水溶液(500倍)およびDL-リンゴ酸・リンゴ酸ニナトリウム混合水溶液(670倍。2,000倍)の散布はキュウリ斑点殺菌病に対し、対照薬剤と比較してほぼ同等の防除効果を示し、有効である。健全果実収量は対照薬剤と同等で、無散布に比較して、優る傾向にあった。なお、葉に葉斑が生じた試験例があったが、軽症であり、実用上支障がないものと考えられる。
10)マロン酸水溶液(500倍)およびマロン酸・マロン酸ニナトリウム混合水溶液(670倍,2,000倍)散布はハクサイ軟腐病に対し、対照薬剤と比較してほぼ同等の防除効果を示し、有効である。しかし、夏まきハクサイでは、効果が劣る例があった。なお、葉に薬斑が生じた試験例があったが、軽症であり、実用上支障がないものと考えられる。
11)酸性水溶液とストレプトマイシン水和剤との混合によって酸性水溶液の特性からストレプトマイシン水和剤の防除効果は安定すると考えられる。なお、混合散布による薬害の発生は認められなかった。

10.主要成果の具体的数字
平成5年度北海道農業試験会議新資材試験成績に掲載

11.成果の活用面と留意点
1)キュウリ斑点細菌痛
(1)酸性水溶液の散布によって葉面pHを低下させる方法によりキュウリ斑点細菌痛を防除できる。
(2)当該酸性水溶液は農薬としては未登録である。登録が得られた時点で以下の項目に留意して使用する。
(3)ぽぽ7日間隔で数回キュウリの茎葉全面に散布する。
(4〉市販農業との混用および交互散布の適否については不明であるので、注意する。特に、銅剤との混用および交互散布は薬害を助長する恐れがあるので行わない。
(5)当該酸性水溶液にはアルキルスルホコハク酸塩系展着剤(商品名:ペステン)を必ず添加して散布する(薬害軽減、3ml/10L)。
(6)散布に当り、農作物病害虫防除基準(北海道)に掲載された一般農薬の危害防止対策を遵守する。特に、調製後、直ちに使いきるとともに、散布終了後、散布器機を十分に洗浄する。
2)ハクサイ軟腐病
(1)酸性水溶液の散布によって葉面pHを低下させる方法によりハクサイ軟腐病を防除できる。
(2)当該酸性水溶液は農薬としては未登録である。登録が得られた時点で以下の項目に留意して使用する。
(3)マルチ栽培条件下で、移植後散布を早く開始するほど、また散布回数が多いほど防除効果が高まる傾向にあるが、発病前からほぼ7日間隔で4回散布することにより一定の防除効果が得られる。
(4)は種期と初発生期との回帰式(Y=54.44-0,270X)は道南地域における散布調始時期を決定するための参考となる。ここでYは【は種目から軟腐病初発生日までの日数】であり、Xは【4月30日からは種目までの日数】である。
(5)8月10日を目安とし、これ以降に播種した場合、発生程度は少発傾向にあるので、防除の必要性は小さい。
(6)夏まきでは、防除効果が不安定なので、市販農薬(ストレプトマイシン水和剤)との混合散布を行う。
(7)ただし、このほかの市販農薬との混合および交互散布の適否については不明であるので、注意する。特に、銅剤および銅を含む薬剤との交互散布および混合散布は薬害を助長する恐れがあるので行わない。
(8)当該酸性水溶液にはアルキルスルホコハク酸塩系展着剤(商品名:ベステン)を必ず添加して散布する(薬害軽減、3ml/10L)。
(9)散布に当り、農作物病害虫防除基準(北海道)に掲載された一般農業の危害防止対策を遵守する。特に、調製後、直ちに使いきるとともに、散布終了後、散布器機を十分に洗浄する。
3)研究成果の一部は、特許出願した。
平成4年(1992)1月14日(特許平4-24448)
「酸性水溶液散布による作物病害の防除方法と酸性水清続散布にともなう薬害発生の軽減方法」

12.残された問題とその対応
(1)農薬登録
(2)製剤化
(3)市販農薬との混用(交互使用)の適否