【研究参考】
試験研究成績               (作成平成6年1月)
1.課題の分類 北海道 畜産 乳牛 育種 根釧農試
2.研究課題名 乳牛育種における飼料利用性向上をめざす選抜指標の活用
3.予算区分 道費
4.研究期間 (昭63年〜平4年)
5.担当 根釧農試 酪農第一科
6.協力・分担関係 なし

7.目的
飼料利用性を加味した簡易な選抜指標を明らかにし、この指標により一個体選抜を実施した場合の乳牛群の遺伝的改良量の解析を行う。

8.試験研究方法
(1)簡易な飼料利用性指標の作出
飼料利用性を加味した初産牛の個体選抜をはかるため、摂取エネルギーと産乳および増体との関係について個体の能力差を検討する。
(2)簡易な飼料利用性指標の遺伝的パラメーター推定
フィールドにおいて利用可能な簡易な選抜指標を検討する。

9.結果の概要・要約
1)泌乳牛の摂取エネルギーの使用型に分割するため、生産によるエネルギーのアウトプット量を、脂肪率、乳蛋白質率および乳糖率によるPCM(蛋白補正乳)を用い得ることが牛乳のエネルギー分析により示された。
体重変化としてのアウトプットの把握は毎週の測定値をスムーズ化し、4次多項式で推定した。さらに、摂取エネルギーの分配を把握するため、初産牛56頭延ぺ156乳期のエネルギー代謝試験により、泌乳前中後期のME摂取量、体畜積量および乳エネルギーを測定した(195.3、-.86,77.4:184.5、-.65,66.4および171.3、-.74,56.2MJ/kg)。
さらに、フィールドに適応させるために簡易な指標を作成した(表1)。
(2)粗飼料利用性の育種価(BV)の推定のために、相加的遺伝分散(σ2a)、永永続的環境効果の分散(σ2p)および残差分散(σ2e)を単一形質REML法で推定し、遺伝率を0.3342と算出した。その結果をもとに、全血縁関係を考慮した(1,415頭)BLUP法アニマルモデルによる育種価推定をした。
MBS(代謝体重)およびPCMの母数効果として誕生年による推移は、2次および1次回帰で示された。
飼料利用性の育種価は、MEおよびサイレージのエネルギーによる飼料利用性効率[(PCM+DG/ME、(PCM+DG)/MJ_サイレージ、PCM/MJサイレージおよびPCM]の年次推移は、.0005ポイント/年、-0.0002ポイント/年、0.005ポイント/年および0.1389㎏/年であった。
育種価に基づいて、血統を遡ってシミュレーション淘汰した場合の結果は、(PCM+DG)/ME
、(PCM+DG)/MJ_サイレージ、PCM/MJサイレージおよびPCMで各々0.004ポイント/年、-0.0001ポイント/年、0.0025ポイント/年およぴ0.6901㎏/年であった。
ME摂取量に対する効率は、やや低下するが、サイレージのエネルギーに対する効率およびPCMは、明らかに改良された(図1)。
種雄牛の飼料利用性効率の育種価の変異は、各形質最大幅で0.052ポイントから0.2310ポイントの差であり、選抜の余地があることが示唆された。

10.主要成果の具体的数字
表1 代謝試験による飼料利用性指標
(PCM+D)/ME=2.42+0.45PCM/MBS+.90F%+5.88NE/PCM(R*2=.88)
PCM/ME=11.14-.52PCM/MBS-3.74BWch/MBS+.45NE/PCM+.62PCM-.10MBS+.37F%(R*2=.44)
(PCM+D)/MJ-S=3.88+.29PCM/MBS+56.40Wch/MBS+1.42F%-.02Day(R*2=.72)
PCM/MJ-S=12.62-.67PCM/MBS+.75PCM-.09MBS-.01Day+53F%(R*2=.51)
PCM:乳蛋白補正乳量、D:体蓄積エネルギー、ME:摂取代謝エネルギー、MJ_S:粗飼料からの摂取エネルギー、MBS:代謝体重、F%:脂肪率、Day:分娩後日数、NE/PCM:NEm+NEgに対する単位PCM、PCM/MBS:PCMに対する単位MBS,BWch/MBS:体重変化に対する単位MBS。


図1 PCM/MJ_サイレージのBV年次推移(上:淘汰前,下:淘汰後)

11.成果の活用面と留意点
乳検組織又は乳牛改良団体等における参考資料とし、酪農家個人では指導組織の支援を得つつ利用されたい。

12.残された問題とその対応
異なる理境効果を有する牛群での、これらの簡易指標の応用が為されていない。したがって、今後さらに気候および飼料体系の異なるフィールドデータによる検証が望まれる。