1.課題の分類 草地 放牧 草地管理 C-4 北海道 家・草合同 2.研究課題名 ペレニアルライグラス放牧草地の集約利用技術 (ペレニアルライグラス放牧草地の集約利用方式の確立) 3.予算区分 道費 4.研究期間 昭和63〜平成5年 5.担当 天北農試 研究部 草地飼料科 6.協力・分担 なし |
8.試験研究方法
1)造成当年の草地管理が放牧草地の牧草収量,草種割合および茎教におよぼす影響
処理:利用家畜2水準(成年600〜650㎏,育成牛300㎏),放牧強度2水準(成年換算133,266頭/ha)とし、当年は秋季まで5回放牧を実施した。
2)放牧利用法の違いが放牧草地の牧草利用量,草種構成および草地密度におよぼす影響
処理:年間利用回数2水準(集約11回,対照6回)とし、造成翌年から5年間の同一処理
3)ペレニアルライグラス主体放牧草地における採食量の推定式の検討
処理:ホルスタイン種成牛を用い、体重差法による実測値と推定式との適合性の検討
4)放牧利用法の違いによる家畜生産の比較
処理:放牧利用法2水準(集約:年11回,17牧区,対照:年6回,30牧区),草地面積各1.39ha,
放牧草地の30%を採草利用(1番草)し、秋季に給与する利用法とした。
5)オーチャードグラス放牧章地との家畜生産の比較
処理:草種2水準(PR:年11回,17牧区,OG:年9〜10回,17〜20牧区),草地面積各1.50ha,
放牧草地の30〜40%を採草利用(1番章)し、秋季に給与する利用法とした。
9.結果の概要,要約
1)造成当年の放牧利用として、播種後60日ぐらいから降雨などによる草地の軟弱状態を除いて、1日4〜5時間程度の放牧を秋季まで5回実施する場合、草地におよぼす影響は、利用家畜による差は認められなかった。一方、放牧強度については、成年133頭/ha,育成牛
266頭/ha程度の放牧が、草地の状態を良好に維持するために適切と考えられた。(表1)
2)放牧利用法の違いとして、年間放牧回数11回(集約)と6回(対照)を比較したところ、家
畜による牧草利用量,草種割合に差はなく、茎数増加や裸地率減少から総合的に判断して、集約利用が放牧利用法として有効であった。(図1)
3)PR主体放牧草地の採食量推定には、供給草量(㎏/10a)と採食面種(%)の2項目の重回帰式により、ある程度の推定が可能であった。
放牧草採食量(㎏/10a)=O.358×供給草量(㎏/10a)+2,357×採食面積(%)−63.2
4)PR放牧章地の1ha当たりの増体量は、年間11回利用の集約利用が年間6回利用に比較し
て高いことが認められ、1993年の低温年を除くと4ヵ年平均で約8%高かった。(表2)
5)PR草地とOG草地の1ha当たりの増体量は、PRと同様な集約利用では0G草地の牧草生産が低下し、PR草地が2ヵ年平均で約16%高かった。(表3)
6)PR放牧草地の4ヵ年のTDN利用量から最大家畜生産量を試算すると、ホルスタイン種去勢牛(350㎏)の草地1ha当たりの増体量は、日増体1.1㎏/day,4.0頭/haで726㎏,ホルスタイン種泌乳牛(体重600㎏,乳脂肪3.8%)の昼夜放牧での乳生産量は、日乳量25㎏では1.9頭/haで7838㎏であった。
10.成果の具体的数字
表1 造成年に利用法を異にした放牧草地の要因別比較(造成当年)
項目 | 要因 | 利用 回数 |
利用家畜 | 放牧強度 | ||||
成牛 | 育成牛 | 成牛(頭/ha) | 育成牛(頭/ha) | |||||
133 | 266 | 266 | 532 | |||||
牧草収量 (kg/10a) |
原物 | 5 | 3935 | 4048 | 5539 | 5154 | 5626 | 4987 |
乾物 | 〃 | 523 | 526 | 667 | 621 | 666 | 601 | |
草種割合 (DM%) |
PR | 73 | 78 | 86 | 84 | 87 | 86 | |
WC | 8 | 6 | 5 | 2 | 2 | 3 | ||
その他 | 19 | 16 | 11 | 14 | 11 | 11 | ||
越冬前茎数 (本/㎡) |
PR | 3391 | 3667 | 3104 | 3082 | 3952 | 3645 | |
WCランナー | 385 | 346 | 259 | 147 | 317 | 211 | ||
WC | 1723 | 1338 | 506 | 544 | 822 | 394 |
表2 PR放牧草地の家畜生産(1989〜1992年の4カ月平均)
処 理 |
開始 体重 (kg) |
終了 体重 (kg) |
放牧 期間 |
放牧頭数(350kg/ha) | 日増体(kg/day) | 増体量 (kg/ha) |
牧養力 (day/ 500kg,ha) |
||||||
春 | 夏 | 秋 | 平均 | 春 | 夏 | 秋 | 平均 | ||||||
集 約 |
262 | 408 | 168 | 4.1 | 4.5 | 4.4 | 4.3 | 0.98 | 0.73 | 0.91 | 0.87 | 659 | 509 |
(187 〜308) |
(317 〜495) |
(163 〜177) |
(3.5 〜5.1) |
(3.2 〜5.5) |
(3.6 〜4.9) |
(3.5 〜5.2) |
(0.54 〜1.42) |
(0.59 〜0.94) |
(0.75 〜1.10) |
(0.65 〜1.06) |
(581 〜738) |
(391 〜593) |
|
対 照 |
206 | 397 | 168 | 4.1 | 4.4 | 4.3 | 4.3 | 0.85 | 0.69 | 0.91 | 0.82 | 611 | 499 |
(189 〜302) |
(288 〜486) |
(163 〜177) |
(3.5 〜5.2) |
(3.0 〜5.6) |
(3.4 〜4.8) |
(3.3 〜5.2) |
(0.44 〜1.29) |
(0.49 〜1.03) |
(0.58 〜1.18) |
(0.61 〜1.04) |
(522 〜715) |
(374 〜595) |
図1 放牧利用法の違いによる茎数および裸地率の年次推移
表3 PRおよびOG放牧草地の家畜生産
処理 | 年次 | 放牧頭数 (350kg/ha) |
日増体 (kg/day) |
増体量 (kg/ha) |
牧養力 (day/500kg,ha) |
PR | 1992 | 4.4 | 1.00 | 823 | 504 |
1993 | 4.5 | 1.06 | 651 | 513 | |
平均 | 4.4 | 1.03 | 737 | 509 | |
OG | 1992 | 4.3 | 0.74 | 687 | 505 |
1993 | 4.4 | 0.86 | 582 | 499 | |
平均 | 4.4 | 0.80 | 635 | 502 |
11.成果の活用面と留意点
1)PR放牧草地の造成年の初回放牧は、降雨や草地の状態を考慮して開始する必要がある。
2)PR草地の兼用(採草)利用は、1番草のみとしその後は放牧利用する。
3)放牧草採食量の推定式は、ペレニアルライグラス主体草地で適用できる。
4)PRとOGの草種間の家畜生産の違いは、年間多回,短草の集約利用した場合の差である
12.残された問題とその対応
1)混播マメ科章の維持管理
2)PR放牧業地の乳生産の実証