【指導参考事項】
成細概要書                     (作成6年1月)
1.課題の分類 総合  営農  経営 
        北海道  経営
2.研究課題名:酪農ヘルパー組織の効率的運営方式
       −酪農ヘルパー組織の効率的運営方式と地域農業の活性化−
3.予算区分 道費
4.研究期間 (平4〜5)
5.担当 根釧農試 研究部
     経営科 浦谷孝義
6.協力・分担関係 なし

7.目的
酪農における労働条件改善の方策として休日確保型ヘルパー組織への期待が大きいが、 専任ヘルパーの確保が大きな課題となっている。専任ヘルパーを確保するためには労働・待遇面での適切な処遇が必要であり、反面利用農家側からは人件費負担・利用料金水準の低減が求められる。これら双方の要求に応えて、休日確保型ヘルパー組織の定着をはかる効率的な運営方式のあり方を明らかにする。

8.試験研究方法
1)酪農ヘルパー組織の動向と特徴
2)酪農ヘルパー組織の運営方式と運営収支
3)利用農家の評価及ぴ利用・運営に関する意向
4)酪農ヘルパー組織の運営安定化
5)既存資料の収集及び代表事例の聞き取り調査
6)利用農家に対する配表記査
7)調査対象 根釧管内の酪農ヘルパー組織及び利用農家

9.結果の概要・要約
1)ヘルパー組織は、利用組合型、農協直営型、会社型の3つに類型化でき、現実性のある類型として利用組合型と農協直営型をとりあげ、それぞれの代表事例について比較分析を行った。農協直営型では、ヘルパー部門の年間事業計画は他の農協事業と同一次元で、農協理事会で検討・決定され、事務局はヘルパー事業に関するすべての問題に責任をもってあたる。また同一組織で緊急と休日の両方に対応している。利用組合型では、専任ヘルパーの身分は農協に所属し利用組合に出向し、事務局業務は農協に事務委託している。この類型では、事務局が作成した計画等を決定し、実行に責任を負うのは利用組合自体である。利用組合員は総会をとおして直接利用組合と関わる。ここでは農協下部組織が地区単位に緊急対応型ヘルパー組織を形成している。
2)ヘルパー1人当たり年間稼働日数は、農協直営型では1987年までは200日を越えていたが、88年以降150日強に低下した。利用組合型では210日以上を保っている。農協直営型における稼働率低下の理由を検討すると、休日確保型ヘルパー組織といえども休日・緊急の区別と優先順位が明確でなかったり、利用農家の休日取得に対する理解が不十分な場合、休日取得は容易に経済条件に左右される可能性があることがわかる。
3)運営収支の特徴は、農協直営型の場合は収入に占める利用料割合が低く(30〜40%)、支出面では人件費割合が高いこと(80〜90%)、利用料による人件費のカバー率(40〜50%)が低いことである。利用組合型の場合は順に60〜70%、70〜80%、90%と比較的良好な内容となっている。
4)ヘルパー要員が、非就農希望者、新規入植者、および酪農後継者からなるものと考え、これらの組み合わせの違いおよび同一の組み合わせで年次経過による人件費、収支が均衡する利用料収入及び利用料金の相違を検討するための試算を行った。その結果、短期的に交代するヘルパーのウエイトが高いほど低くて安定的な料金設定が可能なことがわかる。しかし、戸当たりヘルパー利用日数が増加すると専業ヘルパーへの依存はさけられないため、その場合は長期的な観点から料金設定を考える必要がある。
5)ヘルパー組織の運営を安定化させる方策を大きく整理すると、①組織目的および運営資任の明確化、②対応範囲の明確化および合理的な調整システム、③ヘルパー要員の安定的な確保、④ヘルパー利用の安定化および拡大、⑤ヘルパー利用の地域的な位置づけと支援、の5点になる。農協直営型は③(特に身分保障)に関して優れており、利用組合型は①および②について優れている。総合的にみると、現状では休日確保型ヘルパー組織の形態としては利用組合型の方が望ましい。ただし、へルパーの身分保障等農協のサポートが必要である。(図1)
6)ヘルパー組織の運営安定化対策を、対応主体と対策内容の観点から整理した。ヘルパー組織ではヘルパーの退役後の身分・職場の保障、作業範囲の確定と利用農家への周知、農家の雇用者意識の醸成および収支調整のための積立実施等が重要である。また利用農家では、後継者のヘルパー体験の促進、利用組合役員の実践的な運営関与、経営効率の向上・安定等が重要である。国・道・系統団体にはヘルパーが1つの職業として社会的な認知を受けられるような制度的な対策が求められる。農協は特にヘルパーの雇用母体としての役割が重要であろう。(図2)

10.成果の具体的数字

11.成果の活用面と留意点
1)ここでは酪農専業地帯を想定している。ヘルパーの給源は、地域の特性に合わせて弾力的に考える必要がある。

12.残された問題とその対応
1)料金体系のあり方等細部の検討が残されている。
2)ヘルパー組織が地域農業に及ぼす影響に関する検討が残された。