1.課題の分類 総合農業 営農 経営 1-2-3 北海道 経営 2.研究課題名 切花の共選・共販体制の確立と効率的運営方式 (移出型花き産地の成立条件と育成方策) 3.予算区分 道費 4.研究期間 (平成4〜5年) 5.担当 中央農試経営部 流通経済科 6.協力・分担関係 |
7.目的
需要の増加と農業地帯での栽培の増加等を契機にして切花の流通機構も大きく変わり始
めている。すなわち小売業への異業種の参入や大都市における市場整備の進行であって、それに伴って規格品の大量継続出荷の要請が強くなってきている。
以上のような背景から、本研究は、共選・共販体制を1とっている先進的な移出産地の実
態調査をもとに今後の切花の共選・共販体制確立のあり方を検討し、道産切花の移出拡大に資するものである。
8.試験研究方法
(1)切花の需給と流通機構の動向調査:統計、資料分析及び市場関係者の聞き取り調査
(2)先進産地の産地形成、共選・共販体制の形成過程、運営実態調査:生産組合、農協資
料分析及び聞き取り調査
(3)先進産地の出荷対応(輸送)調査:農協、出荷関係機関の聞き取り調査、資料の分析
9.結果の概要・要約
(1)切花の需給と流通機構の動向:①一貫して伸びてきた切花の需要は、業務用の停滞か
ら平成4年には停滞したが、今後は家庭用消費等を中心に増加する見通しにある。従来、
切花の所得及び価格弾性値は低いとされてきたが、その計測が古い流通機構を前提にしており今後の予測には適合しないと考えられる。スーパー等の試験販売では一定の価格水準以下になると消費が著増する結果が出ていること、異業種の花産業への新規参入が急増していること等、今後の消費拡大は花関連の資本によってつくり出される傾向にある。
②従来、零細で分散していた切花の卸売市場も、近年の大都市における市場整備によって大型化、近代化が進んでいる。先進的な大田市場の実態をみると、セリの機械化や保鮮施設の完備等の近代化は著しいが、零細な買参人が急増して仲卸しが発達しておらず、「裏日」の存続とも相まって取引時間が著しく長くなっている。そのため、規格化・大量化した共選品の取引が優先され、価格面でも優位になる傾向となっている。
(2)切花移出の先進産地における共選・共販体制の形成と運営の特徴:①道内の先進的な
切花産地は、切花がマイナー作物であった裏情等から、生産組合が独自につくりあげてきた性格が強い。そのため、産地の拡大や共選・共販体制の確立等のより広い取り組みが成功している産地では、生産組合が開放的で、農協の取り組み強化とうまく適合している場合が多い。つまり、生産組合と農協の取り組みの調和が共選・共販体制成立の基本的な条件となっている。
②共選は「箱(単位)共選」と「本共選」があり、専属作業員による「本共選」は選別が徹底するが、運営と経資負担のあり方が難しい。B組合はA組合を参考に共選を実施しており、両組合とも生産者の交替出役によって運営管理と規格標準化の交流の場とする等、農協任せにしていないのが特徴である。共選費用は装備の大がかりなA組合の方が低くなっているが、この要因は他品目の集出荷利用の度合によって施設費の負担率が異なること、及び管理事務費の差によっている。共選本数の1.5倍増試算では双方とも2割前後の低下となるが、変動費水準からみて3.5〜4円が限度となる(表1,2)。
③共選費用は栽培農家の選花作業の省力化や市場評価の向上・価格上昇で償われる。前者の量的な効果測定は難しいが、A組合では共選品目の省力化によってより集約的な球根類
の栽培を拡大する経営が多く、B組合では共選品目の作付が増加する傾向にある。後者の
市場評価の向上では、一般市場よりは高値となっている東京中央卸売市場等と比較しても4〜7円ほど高くなっている(表3)。しかし共選品の出荷先は、A,Bともに大都市の中央卸売市場への出荷は少なく、特にB組合では九州の消費地問屋への出荷が主体となっており、共選のメリットを生かし得る分荷戦略の見直しが必要と言える。
(3)出荷(輸送)対応の特徴:①ロットが小さく鮮度低下が激しいため、従来の切花輪送は航空輸送が殆どであったが、B組合を含む16産地が平成3年からトラック・フェリー(関東)びJRコンテナ(関西)を利用した共同輸送を行っている。市場への着荷日数は航空輪送に比べて1日伸びるが、品傷みや混載による出荷先の誤配等の苦情はなく、共同輸送そのものは軌道に乗り、運賃節減に効果をあげている。しかし、旧来からの市場との結び付きから共同輸送を生かしきる分荷戦略がとられておらず、出荷総体では共同輸送参加のB組合が、航空輸送主体のA組合よりも高くなっている(表4)。
共選・共販体制を確立して共同輸送と組み合わせ、それを生かす分荷戦略の再編を図っ
てゆけば、道産切花の競争力はなお相当の強化が可能だと考えられる。
10.成果の具体的数字
表1 対象産地の共選〈本単位〉の概要
A組合 | B組合 | ||
組合員戸数 | 99 | 52 | |
共選開始年 | S61 | H4 | |
共選品目 | カーネーション | カーネーション | |
宿根スターチス | |||
スターチス | |||
スナップ | |||
共選期間 | 5末〜11月 | 8末〜10月 | |
共選出荷額 | 3億1千万円 | 2千8百万円 | |
主要 装備 |
共選場 | H3 1848㎡ | S62 734㎡ |
予冷庫 | H3 差圧300㎡ | H2 強制58㎡ | |
選花機 | H3 自動一式 | なし | |
総投資額 | 1億5千万円 | 5千万円 |
表2 カーネーションの共選費用
費用・出荷本数 | A組合 | B組合 | ||
費 目 |
償却費・利子等 | 千円 | 4730.0 | 1026.4 |
光熱費修理費 | 〃 | 269.1 | 218.6 | |
管理労賃 | 〃 | 1117.9 | 62.0 | |
作業労賃 | 〃 | 7027.8 | 1308.8 | |
材料費 | 〃 | 445.8 | 225.9 | |
合計 | 〃 | 13590.6 | 2871.7 | |
1本当共選費用 | 円 | 4.8 | 5.9 | |
同上本数1.5倍増試算 | 円 | 4.0 | 5.0 | |
共選出荷本数 | 本 | 2,858.00 | 484,728 |
表3 東京都卸売市場価格と対比したカーネーション〈共選〉移出価格(平成4年)
指標 | 単 位 |
平均 | 出荷月 | ||||||||
7-11月 | 8-10月 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | |||
単価 | 東京中央卸売市場a | 円 | 54 | 58 | 73 | 70 | 42 | 53 | 69 | 52 | 57 |
東京地方卸売市場平均b | 43 | 48 | 61 | 57 | 34 | 44 | 59 | 41 | 40 | ||
A組合移出平均c | 64 | 54 | 53 | 77 | 70 | 57 | |||||
B組合移出平均d | 59 | 66 | 70 | 50 | |||||||
価格差 | a-b | 11 | 10 | 12 | 13 | 7 | 9 | 10 | 11 | 16 | |
c-a | 7 | 12 | 0 | 8 | 17 | 0 | |||||
d-a | 4 | 13 | 1 | -2 | |||||||
月別 出荷量 の割合 |
A組合 | % | 24 | 51 | 12 | 8 | 5 | ||||
B組合 | 4 | 41 | 55 |
表4 カーネーション〈共選〉の出荷運賃と低減の可能性
項目 | A組合 | B組合 | |||||
出荷量 割合・% |
本当り 運賃・円 |
輸送手段 | 出荷量 割合・% |
本当り 運賃・円 |
輸送手段 | ||
出 荷 先 |
札幌 | 14.8 | 1.2 | トラック | 12.2 | 0.9 | トラック |
東北・北陸 | 8.4 | 9.5 | 航空 | 5.5 | 3.5 | トラック・フェリー(共同) | |
東京・関東 | 53.8 | 4.5 | 〃 | 41.7 | 3.8 | トラック・フェリー(共同) | |
東海 | 4.7 | 5.5 | 〃 | ||||
関西 | 11.2 | 7.4 | 〃 | 7.0 | JRコンテナ(共同) | ||
四国・九州 | 7.1 | 9.5 | 〃 | 40.6 | 17.0 | 航空 | |
平均 | 100.0 | 5.2 | 100.0 | 8.8 | |||
試 算 |
A 共同輸送採用 | 4.7 | |||||
B 分荷先再編 | 6.8 |
11.成果の活用と留意点
「本共選」の共計方式はA,B両組合とも出荷日単位となっており、出荷時期別の農家間の価格差が大きい。規格の徹底と同時に継続出荷を図るためには共計期間の長期化や出荷時期による価格差を縮小する何等かの価格補填制度をとる必要がある。
12.残された問題点とその対応
(1)農家間の品質格差の要因とそれを縮小させる指導のあり方
(2)分荷戦略の再編を効率的に進める支庁単位、全道規模の出荷先調整の方向