7.目的
道内での栽培が定着してきたミニトマトの育苗法、品種、本圃管理、窒素施肥等について検討し栽培の安定化と発展を図る。
8.試験研究方法
(1)育苗技術確立試験
ⅰ.夜温試験、夜温25,20,15,10℃(平3)、夜温×日射量15℃×5.5万Lx、15℃×3.8万Lx、5℃×3.8万Lx(平4)
夜温15,10,5℃(平5)
ⅱ.育苗日数と培地量試験、育苗日数×培地量、(70、60、50日)×(0.8、1㍑)(平3、4)
(54、40日)×(0.8㍑、0.5㍑)(平5)
ⅲ.育苗日数と培地窒素量試験(平4)、育苗日数×培地N量、(70、60、50日)×(100、200、400㎎/㍑)
ⅳ.移植期とセル苗移植試験、移植期:は種後(0、7、14、24日)(平5)、は種後(0、9、16、23日)(平6)
セル苗移植:は種後(16、23日)(平6)
ⅴ.昼温と日長試験(平5)、昼温×日長、20℃×8h、20℃×16h、30℃×8h
(2)本圃管理法確立試験
ⅰ.品種比較試験(平3〜6)、「ミニキャロル」等全17品種
ⅱ.栽植法試験、1条植・株間30、25㎝、2条植・株間60、50㎝(平4)、2条植・株間60、50、40㎝(平5)
ⅲ.着果法試験、ホルモン処理:5日、10日毎、無処理(平3、4)、着果処理:トマトトーン、
ジベレリン、振動授粉(平3)、ホルモン10日毎、マルハナバチ、無処理(平5)、ホルモン処理:10日毎
花房3段・10日毎、無処理(平6)
ⅳ.側枝利用試験、第1花房下側枝・2花房(平4〜6)、4花房(平6)
ⅴ.着果数制限試験、果数30、50果/果房、放任(平3)、果数50果/果房、放任(平4〜5)
ⅵ.有底栽培試験(平3〜5)、有底(防根シート深さ30㎝程に埋設)、地床
ⅶ.裂果性の調査(平5〜6)、①「ミニキャロル」の裂果率調査(平5)②湿度、収穫後条件による裂果率(平6)
(3)窒素施肥法試験(主枝1本仕立、8段収穫、4月下旬定植・長期穫り、品種:ミニキャロル)
ⅰ.生育、窒素吸収の特性(平4)、窒素基肥2.0㎏/a・追肥0.5㎏/a×2(定植後45、95日)
ⅱ.窒素用量試験、基肥(0、0.5、1.0、2.0㎏/a)×追肥(1.5、2.1㎏/a)(平3)
基肥(0、0.5、1.0、1.5㎏/a)×追肥0㎏/a、基肥+追肥(0.5+2.0、1.0+1.5、1.5+1.0㎏/a)(平6)
基肥1.0㎏/a×追肥1.5㎏/a(1回当たり0.2、0.5、0.75㎏/a)(平6)
9.結果の概要・要約
ミニトマトの育苗法、品種、本圃管理法、窒素施肥法を検討し、今後のミニトマト栽培の安定化と発展を図るため本試験を実施した。
(1)育苗法
ⅰ.鉢上げ後の夜温管理は、暖房コスト等も考慮すれば5〜10℃が適当と考えられた。
ⅱ.育苗日数は60日前後、培地量は0.8㍑で良いが、省力、低コスト中心に考えるなら育苗日数40〜50日、
培地量0.5㍑も可能と考えられた。
ⅲ.は種後の鉢上げまで日数は、10〜15日で問題なく、セル苗利用も可能と考えられた。
ⅳ.育苗日数が60日、培地量が0.8㍑の場合の窒素施肥量は100〜200㎎/㍑が適当と考えられた。
(2)品種
ⅰ.17品種を供試したが、「ミニキャロル」が、収量が多く、品質的にも安定していた。また、「キャロル7」は
裂果が少なかった。
(3)本圃管理法
ⅰ.栽植法は、作業性も考慮すると、2条植(平均条間110㎝前後)の株間40〜50㎝(179〜223株/a)が適当と
考えられた。
ⅱ.着果法は、10日毎のホルモン処理(トマトトーン)で安定しており、マルハナバチ利用も有効と考えられた。
ⅲ.側枝利用(第1花房下の側枝を伸ばし、2〜4花房つける)により、増収となるが、労力や作業性を
考慮する必要がある。
ⅳ.着果数制限や有底栽培についても検討したが、特に効果は認められなかった。
ⅴ.裂果は湿度の影響を受けやすいので、栽培中は換気や通風をよくし、収穫後も湿、温度を高めないよ
うにする。
(4)窒素施肥法
ⅰ.基肥は1.5㎏/aが適当と考えられた。
ⅱ.追肥は3段花房開花期より各段花房開花期ごとに行い、土壌硝酸態窒素含量を10〜20㎎/100gに維持
することを目標に、1回当たり0.2㎏/aの追肥を行うことが適当と考えられた。
10.成果の具体的数字
表1 育苗技術確立試験の結果試験名 | 年次 | 処理 | 定植時茎長 ㎝ |
初期収量 ㎏/a |
同左比 % |
全期収量 kg/a |
同左比 % |
夜 温 | 平3 | 20℃ | 24.1 | 173.9 | 98 | 665.6 | 104 |
15℃ | 25.5 | 178.0 | (100) | 638.7 | (100) | ||
10℃ | 26.8 | 172.0 | 97 | 697.4 | 109 | ||
平5 | 15℃ | 26.1 | 23.6 | 142 | 909.8 | 94 | |
10℃ | 20.2 | 16.6 | (100) | 969.6 | (100) | ||
5℃ | 13.0 | 12.1 | 73 | 998.9 | 103 | ||
日 数 ・ 培地量 |
平4 | 70日・0.8L | 34.4 | 83.2 | 126 | 803.2 | 97 |
60日・0.8L | 27.4 | 66.1 | (100) | 831.9 | (100) | ||
〃・1L | 27.6 | 65.9 | 100 | 741.2 | 100 | ||
50日・0.8L | 17.6 | 49.4 | 75 | 722.0 | 90 | ||
施肥量 | 平4 | 100mg/㍑ | 22.3 | 100.3 | 90 | 717.3 | 105 |
200mg/㍑ | 24.7 | 112.3 | (100) | 693.0 | (100) | ||
400mg/㍑ | 28.0 | 113.3 | 101 | 691.0 | 100 | ||
移植期 | 平5 | ポットは種 | 13.0 | 367.3 | 98 | 855.5 | 90 |
7日後 | 11.1 | 436.3 | 116 | 989.8 | 105 | ||
14日後 | 7.5 | 374.8 | (100) | 946.4 | (100) | ||
24日後 | 5.2 | 280.4 | 75 | 853.9 | 90 |
表2 品種比較試験の結果
年次 | 品種名 | 全期収量 kg/a |
同左比 % |
平均一果重 g |
Brix平均 % |
裂果数割合 % |
平4 | ミニキャロル | 806.4 | (100) | 15.7 | 8.3 | 4.8 |
キャロル7 | 595.2 | 74 | 11.6 | 8.3 | 0.5 | |
平5 | ミニキャロル | 856.7 | (100) | 12.5 | 8.5 | 10.1 |
キャロル7 | 571.0 | 67 | 9.9 | 8.8 | 1.4 |
表3 本圃管理法確立試験の結果
試験名 | 年次 | 処 理 | 全期収量 kg/a |
同左比 % |
平均一果重 g |
Brix平均 % |
栽植法 | 平5 | 株間60cm | 724.7 | 77 | 14.4 | 8.8 |
〃50cm | 945.8 | (100) | 14.0 | 8.2 | ||
〃40cm | 940.0 | 99 | 12.5 | 9.1 | ||
着果法 | 平3 | ホルモン5日毎 | 716.7 | (100) | 12.4 | 7.3 |
〃 10日毎 | 734.0 | 102 | 13.6 | 7.1 | ||
無処理 | 668.0 | 93 | 12.9 | 7.3 | ||
側枝 | 平6 | 側枝・4花 | 965.4 | 136 | 9.9 | 7.6 |
側枝・2花 | 794.3 | 112 | 9.6 | 7.7 | ||
主枝仕立 | 711.3 | (100) | 9.4 | 7.4 | ||
有底 | 平4 | 有底 | 854.3 | 92 | 13.0 | 8.6 |
地床 | 928.7 | (100) | 13.9 | 8.3 |
表4 裂果性の調査(平6)
処 理 法 | 裂果率 % |
生育中・湿度・80% | 33.3 |
〃 ・ 〃 ・60% | 4.8 |
〃 ・ 〃 ・40% | 2.7 |
収穫後・低温・袋密閉 | 7.7 |
〃 ・室温・ 〃 | 41.0 |
〃 ・ 〃 ・袋穴あき | 7.7 |
〃 ・高温・袋密閉 | 84.6 |
表5 定植45日後(追肥前)の初期生育
処理区名 (基肥+追肥) |
全乾物重 kg/a |
同左比 % |
全吸吸量 kg/a |
同左比 % |
無N | 30.0 | 79 | 0.70 | 64 |
0.5+1.5 | 34.1 | 89 | 0.97 | 88 |
0.5+2.1 | 32.4 | 85 | 0.96 | 87 |
1.0+1.5 | 36.4 | 95 | 1.01 | 92 |
1.0+2.1 | 35.9 | 94 | 1.04 | 95 |
2.0+1.5 | 34.3 | 90 | 0.99 | 90 |
2.0+2.1 | 38.2 | (100) | 1.10 | (100) |
表6 追肥量・回数と収量
1回追肥量 (kg/a)×回数 |
全期収量 kg/a |
同左比 % |
収穫日毎収量変動係数 % |
各0.2×8 | 803 | (100) | 45.1 |
各0.5×3 | 783 | 98 | 47.9 |
各O.75×2 | 776 | 97 | 53.6 |
11.成果の活用面と留億点
(1)適用作型は、は種期2月中旬〜3月中旬のハウス長期どり作型とし、一般管理は普通トマトに準ずる。
(2)窒素施肥法は、ミニキャロルを供試品種とし、沖積土壌を対象とした。
12.残された問題点
(1)作型、省力栽培法の検討