1.課題の分類 果樹 ブドウ 栽培 北海道 果樹 ブドウ 栽培 2.研究課題名 コンテナによる欧州種系ブドウの根域制限栽培 (ブドウ被覆栽培における高品質果実生産技術の確立) 3.予算区分 道単 4.研究期間 平成2年〜6年 5.担当 北海道立中央農業試験場 園芸部 果樹第二科 6.協力・分担関係 なし |
7.目的
無加温ビニールハウス栽培において、根域制限による欧州種系生食用ブドウの栽培法を明らかにする。
8.試験研究方法
1)試験実施場所…場内無加温ビニールハウス
2)根域制限方法…コンテナ植え(コンテナ容量78.2㍑、用土量60㍑)
3)用土…火山灰土1:ピートモス1:火山礫(細粒)1(苦土石灰、炭カル、過燐酸石灰、微量要素添加)
4)品種選定…供試品種13品種
5)剪定法…長梢区:2〜3枝を6〜12芽に剪定短梢区:2芽に切り返し(先端部は4年は12芽、5年は8芽)
6)灌水法…処理期間 着色期〜収穫期
平成4年 少水分区:pF2.7で5㍑灌水, 多水分区:ほぼ毎日灌水
平成5年 少水分区:毎日3㍑灌水, 多水分区:毎日50㍑灌水
7)施肥法
①施肥方法1回区:N15g2回区:N7.5g2回施肥
②施肥量標準区:平成4年N7.5g、平成5、6年N15g2倍区:平成4年N15g、平成5、6年N30g
8)樹勢衰弱樹に対する改植および新梢数制限
10本区:新梢数を10本に制限
改植:2本区:用土を1/3入れ換えた後、新梢数を2本に制限改植・10本区:用土を1/3入れ換えた後、
新梢数を10本に制限
9.結果の概要・要約
1)収量、果実品質等から「ロザリオビアンコ」「藤稔」「ルビーオクヤマ」「紅アレキサンドリア」が適していた。
2)長梢剪定と短梢剪定を比較した結果、樹体生育には大きな差はなかったが、短梢区の方が果房重が重く
収量が多かったことから剪定法は結果母枝10本を2芽に切り返し20芽程度を残す短梢剪定が適している。
3)土壌水分の変動が多いと裂果が誘発される傾向がみられた。新梢長や果房重は少水分区で優れていた。
以上のことから灌水は土壌水分の変動を起こさないようにこまめに行ない、なおかつ重力水の過剰な流出を
起こさないように注意する。
4)平成4年に年間1樹当りN成分量にして7.5g施肥した区は翌年の果房数が減少し15gの区は若干
増加した。平成5、6年は15gと30gを比較したが大きな差はみられなかった。よって、施肥量は15g
程度が適当と思われる。施肥方法は施肥時期が発芽前の1回区と発芽前、開花後の2回区で検討したが
2回区の方が果実品質、樹体生育共に優れた。
5)新梢のつけすぎや結果過多は樹勢を低下させ収量や果実品質に悪影響を与えた。樹勢が低下した場合は
新梢数を10本程度に制限すると樹勢回復を図ることができるが、収量はその年には回復しなかった。60㍑
の用土量で安定生産するためには新梢数10〜15本、果房数6〜7房、収量2.5㎏程度が適当である。
6)樹冠占有面積や最適葉面積指数から1樹当りの面積は2㎡が適当であり、10a当りの栽植樹数は500
樹となる。1樹当りの収量が2年目2㎏、3年目以降2.5㎏であるため10a当りの換算収量は2年目
1,000㎏、3年目以降1,250㎏となり、かなりの早期成園効果が認められる。
7)根域制限栽培による欧州種系ブドウの生産は米国系品種に比べ房作りなどに労力を要するが、樹体が
コンパクトなため剪定、芽かき、新梢の誘引などは比較的平易である。
10.成果の具体的数字
第1表 品種特性品種名 | 熟期 | 果皮色 | 花穂 着生 |
収量 | 粒着 | 果房重 | 果粒重 | 肉質 | 糖度 | 香り | 裂果性 | 脱粒性 | 日持性 | 総合 評価 |
ロザリオビアンコ | 早 | 黄 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | 無 | ○ | ○ | ○ | ◎ |
リザマート | 早 | 赤 | ○ | ○ | △ | ○ | △ | ○ | ○ | 無 | ○ | △ | ○ | △ |
ブラックコルニション | 早 | 黒 | × | × | △ | × | × | △ | ○ | 無 | ○ | △ | ○ | × |
藤稔 | 早 | 黒 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | F | △ | ○ | △ | ◎ |
モルゲンシェーン | 中 | 赤 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | ○ | 無 | △ | △ | ○ | △ |
フレームトーケー | 中 | 赤 | △ | × | △ | △ | × | △ | ○ | 無 | △ | △ | ○ | × |
ルビーオクヤマ | 中 | 赤 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | M | ○ | ○ | ○ | ◎ |
紅アレキサンドリア | 中 | 赤 | ○ | ○ | △ | △ | △ | ○ | ○ | M | ○ | ○ | ○ | ◎ |
イチキマール | 中 | 紫黒 | △ | × | × | × | × | △ | ○ | 無 | △ | △ | ○ | × |
リビエール4x | 中 | 黒 | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | △ | ○ | 無 | △ | △ | ○ | △ |
バラディー | 晩 | 黄 | △ | △ | × | × | △ | ○ | ○ | 無 | △ | ○ | ○ | × |
サバルカンスキー | 晩 | 赤 | ○ | △ | × | × | ○ | △ | ○ | 無 | ○ | △ | ○ | △ |
ユニコーン | 晩 | 紫黒 | △ | △ | △ | ○ | △ | △ | △ | 無 | ○ | △ | ○ | × |
第2表 剪定法:供試品種「ルピーオクヤマ」
処理区別 | 年次 | 果房数 | 収量 g |
果房重 g |
短梢区 | H4 | 6.2 | 2680 | 438 |
H5 | 12.8 | 2883 | 227 | |
H6 | 9.8 | 2308 | 216 | |
長梢区 | H4 | 6.6 | 2496 | 380 |
H5 | 12.7 | 2381 | 183 | |
H6 | 9.8 | 1838 | 189 |
第3表 灌水法:供試品種「リザマート」
処理区別 | 年次 | 新梢長 ㎝ |
果房重 g |
裂果率 % |
少水分区 | H4 | 3263 | 342 | 83.0 |
H5 | 3154 | 264 | 15.8 | |
多水分区 | H4 | 2903 | 277 | 65.0 |
H5 | 2567 | 250 | 8.6 |
第4表 施肥方法:「リザマート」
処理区別 | 新梢長 ㎝ |
収量 g |
糖度brix |
1回区 | 3079 | 1892 | 17.9 |
2回区 | 3636 | 3095 | 18.6 |
第5表 施肥量:「リザマート」
処理区別 | 年次 | 枝数 | 平均新梢長 ㎝ |
果房数 | 果粒重 g |
糖度 % |
標準区 | H4 | 16.3 | 166 | 5.7 | 8.2 | 16.3 |
H5 | 30.0 | 93 | 3.3 | 6.9 | 15.4 | |
H6 | 9.7 | 343 | 1.7 | 7.8 | 17.8 | |
2倍区 | H4 | 18.0 | 202 | 8.5 | 8.2 | 18.6 |
H5 | 30.3 | 79 | 9.3 | 6.9 | 15.6 | |
H6 | 10.0 | 309 | 2.0 | 8.0 | 18.2 |
11.成果の活用面と留意点
1)ブドウハウス栽培における、品種の多様化と労力分散
2)品種更新時における、樹冠拡大までのハウスの有効利用
3)欧州種ブドウは耐寒性が弱いため冬期は積雪下にするなどの対策が必要である。
12.今後の問題点
1)収益性の向上
2)肥料の種類と施肥方法の検討
3)果実品質向上のための灌水方法
4)新品種への対応
5)樹の耐用年数