1.課題の分類 2.研究課題名 北海道産菜豆類の品質現況と製あん特性 (豆類の加工適性向上試験(1)煮豆等利用向け菜豆類の加工適性評価基準設定試験) 3.予算区分 道費 4.研究期間 平成2年〜平成6年 5.担当 道立中央農試 農産化学部 品質評価科 6.協力・分担関係 |
7.目的
道産菜豆類の品質現況を把握すると同時に、菜豆類の外観並びに内部品質成分の解析を行い、製あんに関わる品質特性を解明し、加工適性に優れた新品種の開発のための資料とする。
8.試験研究方法
《1.供試試料》
十勝農試・北見農試・上川農試・中央農試・植物遺伝資源センター栽培試料:23品種・系統現地農家
栽培試料:手亡類(十勝)、大福類(胆振、網走)、金時類(十勝)
《2.分析・測定項目》
百粒重、水分、原粒種皮色(単粒法)、吸水増加比(25℃・16時間)、種皮率、浸漬液固形分、煮熟増加
比(100℃・40分)、あん収率(100℃・140分煮熟時の生あんの乾物取量)、生あん色、あん粒径、タンパク質、
粗脂肪、デンプン、無機成分(P、K、Mg、Ca)、アミログラム粘度
9.結果の概要・要約
1)道産菜豆類の品質関連形質と製あん特性の変動
①同一圃場内で栽培した菜豆類であっても、百粒重、タンパク合有率、浸漬液固形分、煮熟増加比および
平均あん粒径には品種間および年次間で差異が認められた。
②同一品種による産地間の比較では、百粒重、タンパク含有率および浸漬液固形分には産地間差異が認
められた。また、十育A52号および改良早生大福の煮熟増加比およびあん収率には産地間差異が認め
られた。
③現地試料を含む菜豆類主要3品種では、浸漬液固形分およびアミログラム最高粘度に変動係数(CV)10〜
30%程度の大きな変動が認められた。また、貯蔵条件に起因すると考えられる大きな変動が認められた
改良早生大福のあん収率(平成5年)を除き、製あん特性値では比較的変動の小さいことが明らかとなっ
た。(表1)
④菜豆3種類の特徴としては、手亡類は粗脂肪含有率と浸漬液固形分が高く、煮熟速度が速く、生あんの
L*値が高い傾向にあった。大福類はタンパク含有率が低く、平均あん粒径が小さい特徴があった。
金時類は原粒タンパク合有率と浸漬液固形分が高く、福白金時を除き煮熟増加比が小さい傾向にあった。
2)製あん特性に及ぼす品質関連形質の影響
①子葉タンパク含有率と粗脂肪含有率およびデンプン含有率の間には、高い負の相関関係が認められた。
また、デンプン含有率と浸漬液固形分およびアミロクラム最高粘度の間には、有意な正の相関関係が認
められた。
②百粒重と平均あん粒径の間に高い正の相関関係が認められ、手亡類、大福類、金時類のそれぞれの種類
の中では、百粒重があん粒子の大きさを現す指標となり得るものと判断された。(図1)
③煮熟増加比とあん収率の間に高い正の相関関係が認められ、手亡類、大福類、金時類のそれぞれの種
類の中では、一定時間における煮熟増加比は煮えやすさを現す指標となり得るものと判断された。(図2)
④白系種皮色を有する菜豆類では、種皮色と生あん色の間に有意な相関関係は認められず(表2)、種皮色
は生あんの色を判断する上での指標とはなり得なかった。
⑤手亡あんによる官能試験の結果、平均粒径の小さいあんが好まれる傾向にあったが、その差は明確ではな
く、平均粒径4〜5μmのわずかな差の識別は困難であった。
⑥大福類では吸水条件が煮熟増加比およびあん収率に及ぼす影響が大きく、吸水特性の変動要因である
原粒の水分管理の重要性が指摘された。
10.成果の具体的数字
表1 平成5年産菜豆類の品質関連形質の分布範囲、平均値および変動係数(CV%)調査項目 | 十育A52号 | 改良早生大福 | 大正金時 | ||||||
最小〜最大 | 平均 | CV% | 最小〜最大 | 平均 | CV% | 最小〜最大 | 平均 | CV% | |
百粒重('gDM) | 23.2〜32.2 | 27.3 | 7.7 | 43.0〜61.1 | 55.1 | 8.9 | 51.6〜76.3 | 61.8 | 10.0 |
水分(%) | 10.5〜17.9 | 14.3 | 8.5 | 8.4〜25.0 | 16.0 | 24.6 | 10.0〜15.8 | 13.2 | 15.0 |
種皮率(%) | 6.9〜8.0 | 7.4 | 3.5 | 7.4〜8.6 | 7.9 | 4.5 | 5.9〜7.1 | 6.6 | 4.2 |
原粒タンパク(%) | 19.7〜25.5 | 22.2 | 7.0 | 16.8〜24.4 | 21.3 | 9.9 | 19.9〜25.3 | 23.5 | 7.2 |
子葉タンパク(%) | 20.4〜27.6 | 23.1 | 7.4 | 18.1〜25.5 | 22.1 | 8.4 | 20.4〜26.4 | 24.2 | 7.6 |
種皮タンパク(%) | 3.3〜4.1 | 3.6 | 6.1 | 3.5〜5.0 | 4.0 | 9.4 | 4.4〜5.4 | 4.9 | 5.2 |
デンプン(%) | 41.8〜47.6 | 45.0 | 3.6 | 40.3〜49.0 | 44.2 | 5.6 | 42.9〜47.6 | 44.8 | 2.7 |
粗脂肪(%) | 1.57〜2.33 | 1.98 | 11.2 | 1.55〜1.91 | 1.73 | 5.3 | 1.21〜1.45 | 1.30 | 5.9 |
混漬液固形分(%) | 0.65〜1.21 | 0.93 | 17.0 | 0.59〜1.64 | 0.92 | 27.9 | 0.69〜1.10 | 0.79 | 12.9 |
吸水増加比 | 2,20〜2.32 | 2.27 | 1.2 | 1.85〜2.52 | 2.38 | 6.0 | 2.25〜2.31 | 2.29 | 0.8 |
最高粘度(B.U.) | 460〜690 | 565 | 11.5 | 250〜1180 | 632 | 36.0 | 520〜1000 | 763 | 19.4 |
煮熟増加比 | 2.59〜2.85 | 2.75 | 1.8 | 1.92〜2.76 | 2.60 | 8.1 | 2.42〜2.53 | 2.47 | 1.2 |
あん収率(%) | 52.9〜64.3 | 61.6 | 3.2 | 19.4〜66.1 | 58.1 | 20.1 | 61.3〜64.6 | 63.5 | 1.6 |
あん粒径(μm) | 103.3〜118.0 | 109.0 | 3.2 | 96.5〜105.0 | 102.1 | 2.3 | 106.0〜111.5 | 108.4 | 1.3 |
サンプル数 | 31 | 17 | 16 |
表2 種皮色と生あん色との相関関係(平成5年産)
項目 | 相関係数(r) | ||
金時類a) | 手亡類b) | 大福類 | |
L*値 | 0.409* | -0.226 | -0.252 |
a*値 | 0.081 | 0.118 | 0.336 |
b*値 | -0.230 | -0.055 | 0.050 |
C*値 | 0.029 | -0.195 | 0.203 |
サンプル数 | 25 | 31 | 35 |
11.成果の活用面と留意事項
百粒重はあん粒子の大きさを、また、一定時間における煮熟増加比は煮えやすさを判断する上での指標となり得るが、手亡類、大福類、金時類のそれぞれの種類を越えてこの関係を適応することはできない。
12.残された問題点とその対応
白あんの色の評価手法については、今後の検討を要する。