7.目的
本試料中の水田除草剤濃度を簡易かつ迅速に測定するため、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)の利用と、試料の前処理法を検討する。
8.試験研究方法
供試農薬⇒ | ①モリネート ②シメトリン ③ベンチオカーブ ④ブタクロール ⑤プレチラクロール ⑥オキサジアゾン |
⑦クロルニトロフェン ⑧クロメトキシニル ⑨ピペロホス ⑩メフェナセット ⑪ベンスルフロンメチル ⑫ピラゾスルフロンエチル |
9.成果の概要・要約
(1)水試料の前処理法は、シリカゲル吸着剤充填カートリッジを用いる固相抽出法が、従来の液−液分配法
より、操作の簡便性・有機溶媒の使用量・回収率からみると優れていた(表1)。
(2)ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)のカラムオーブンの昇温速度を2段階(60℃〜210℃を25℃/分、
210℃〜280℃を10℃/分)とすることで、10成分を14分と短時間で分離できた(図1)。また、定量法と
して、内標準法は絶対検量線法と比べて分析精度が著しく高かった(図2)。
(3)GC/MSで測定できなかったベンスルフロンメチルとピラゾスルフロンエチルを、高速液体クロマト
グラフ(UV波長240㎜)を用いることで同時に測定できた。
(4)ブタクロールはたん水期間を通じて用排水中に認められ、水田から高濃度で流出する可能性のある時期
は、その施用後2週間程度と考えられた(図3)。
(5)以上から、農業用水系での水田除草剤モニタリング法を次のように確立した。(図4)
①本試料のサンプリングはたん水期間中とするが、特に除草剤施用後2週間程度を重点的に行う。
②前処理法は固相抽出法とする。
③ガスクロマトグラフ質量分析計および高速液体クロマトグラフを使用し、同時に多成分を分析する。
10.成果の具体的数字
表1 前処理法による回収率の比較除草剤成分 | 液−液分配法 (%) |
固相抽出法(%) | |
C8 | tC18 | ||
モリネート | 39 | 29 | 44 |
シメトリン | 147 | 59 | 102 |
ベンチオカーブ | 133 | 92 | 87 |
ブタクロール | 112 | 91 | 72 |
プレチラクロール | 132 | 90 | 81 |
オキサジアゾン | 95 | 91 | 76 |
クロルニトロフェン | 82 | 88 | 77 |
クロメトキシニル | 93 | 95 | 68 |
ピペロホス | 106 | 128 | 70 |
メフェナセット | 50 | 101 | 50 |
試料水(1000mL) ↓ ガラス繊維ろ紙で吸引ろ過 ↓ 固相カートリッジにロード ↓ 窒素ガスで水分をパージ ↓ ジクロロメタン5mLで溶出 ↓ 溶媒を遠心濃縮器で留去 ↓ acetoneで1mLに定容 ↓ GC/MSで測定 |
11.成果の活用面と留意点
本測定法は公定法に準じており、基準値は現行のものを適用する。
12.残された問題点とその対応
今後基準が設定される方向にある、水田用殺虫剤・殺菌剤の分析法の検討。
畑地で施用される農薬への対応