1.課題の分類 農業工学 農業施設 構造 Ⅵ−1 北海道 農村計画 農業物理 2.研究課題名 エキスパンドメタルとジオテキスタイルによるパドックの泥ねい化防止技術 3.予算区分 経常 4.研究期間 平成元年〜5年 5.担当 北農試 農村計画部 農地農業施設研究室 6.協力・分担関係 北農試放牧利用研・根釧農試酪農施設科・北大農学部 |
7.目的
パドックが泥ねい化することによって、牛が汚れ、乳牛の場合には搾乳時の清拭作業量が増加する。また、蹄病や乳房炎の発生が増加し、汚水の流出による環境汚染にもつながる。コンクリート舗装を行えば泥ねい化を防ぐことは可能である。しかし、コンクリート舗装には、経費がかかる、硬く・すべりやすくなる、表面水としての汚水量が増加する。などの問題がある。そこで。泥ねい化の発生原因を検討するとともに、コンクリート舗装によらない防止技術の実証的な検討を行った。
8.試験研究方法
(1)パドックの泥ねい化の原因を明らかにし、防止技術開発のための基礎資料を得るために札幌近郊の4箇所
の酪農場における現地調査と土の試験を行った。
(2)エキスパンドメタルとジオテキスタイルを組み合わせて用いる工法(図1)の長期的な泥ねい化防止効果を
実証するために、北農試内放牧地の飼槽付近、根釧農試の放牧地出入口、北大農場のパドックの飼槽前、
浜中町内の酪農家の牛舎出入口において実験を行った。エキスパンドメタルは、JIS XS63(質量10.4㎏/㎡、
メッシュ寸法34×76㎜)、JIS XS63に溶融亜鉛メッキしたもの、および、JISXG21(質量13.7㎏/㎡、
メッシュ寸法36×102㎜)の3種類を使用した。ジオテキスタイルはポリエチレン製のネット(遮蔽率63%、
メッシュ寸法5×11㎜、厚さ1.5㎜)を使用した。
(3)資材上の除ふんを行うために古タイヤを利用したスクレーパを試作した。
(4)北農試内の実験区のエキスパンドメタルとジオテキスタイルからテストピースを切り出し、引張試験を行い
資材の耐久性を検討した。
9.結果の概要・要約
(1)泥ねい化は、蹄による土の練り返し・土への踏圧、及び練り返しに伴うふん尿の土への混合(図2)、などに
より土の透水性が低下する(図3)ことによって進んでいくものと推察した。そのため、 暗渠による排水改良で
は、暗渠管まで水が到達しにくく、効果は小さいものと考えられた。大きな効果を得るには、パドックの表層で
蹄による荷重を分散させ、練り返しを防ぐべきであると考察した。
(2)全ての実験区で泥ねい化防止の長期的な効果が確認できた。北農試の実験区の土の試験から、透水性
の低下と有機物含有量の増加が共に抑制されることを明らかにした(表1)。変形量に顕著な差異がなかった
ため。エキスパンドメタルの断面性能はJIS XS63で十分であると判断した。ジオテキスタイルの局所的な破
損が北農試の実験区ではかなりの箇所で、浜中町の実験区では数カ所で認められた。
(3)試作したスクレーパによって資材を破損することなく除ふんが行えることを確認した。
(4)エキスパンドメタルは腐食による強度低下が著しいため。溶融亜鉛メッキされた材料を用いるべきである
と判断した(図4)。ジオテキスタイルは機械的損傷と紫外線劣化により引張強度が低下したばかりではなく、
脆くなった(表2)。ジオテキスタイルの耐用年数は3〜5年と判断した。
表1 北農試の実験区における土壌の飽和透水係敷と有機物含有量の変化
深さ(㎝) | 飽和透水係数(㎝/s) | 有機物含有量(%) | ||
開始時 | 終了時 | 開始時 | 終了時 | |
5 | 2.3×10-5 | 6.2×10-4 | 7.9 | 8.9 |
10 | 7.8×10-5 | 1.9×10-3 | 8.5 | 9.2 |
15 | 6.1×10-4 | 2.l×10-3 | 9.1 | 7.0 |
20 | 2.0×10-3 | 6.9×10-2 | 9.5 | 8.5 |
25 | 2.5×10-3 | 1.4×10-3 | 8.6 | 3.8 |
30 | 3.4×10-3 | 3.6×10-4 | 4.2 | 2.3 |
40 | 6.8×10-3 | 1.1×10-3 | 1.4 | 1.4 |
50 | 1.6×10-5 | 4.3×10-5 | 1.0 | 1.0 |
表2 17ヵ月使用したジオテキスタイルの引張強さと破断までの伸びの減少(%)
引張強さ比 | 伸び比 | |
縦方向 | 84 | 79 |
横方向 | 85 | 46 |
11.成果の活用面と留意点
パドック内の飼槽・水槽付近・牛舎出入口付近など泥ねい化の著しい箇所に局所的に適用するのが有効である。エキスパンドメタルは必ず溶融亜鉛メッキしたものを使用する必要がある。ジオテキスタイルを破損しないために、除ふんは鋼製の排土板ではなく、タイヤを用いたスクレーパなどで行う必要がある。
12.残された問題とその対応
ジオテキスタイルの耐用年数が3〜5年程度と推定され、十分とは言えない。