1.課題の分類 畜産 豚 栄養飼料 滝川畜試 北海道 畜産 2.研究課題名 でん粉粕を原料とする微生物蛋白質生産と養豚飼料としての利用 3.予算区分 道費 4.担当 滝川畜試 研究部 畜産資源開発科 5.研究期間 (平元年〜3年) 6.協力・分担関係 なし |
7.目的
でん粉粕を原料として、固体発酵技術により微生物蛋白質を生産する技術を開発するとともに、残渣を分離することなく、その全量(MBP)を蛋白質に富む飼料として豚における飼養効果を確認し、養豚飼料としての実用化をめざす。
8.試験研究方法
Ⅰ.でん粉粕を原料とする微生物蛋白質生産
1.麹かびのでん粉粕への培養技術
2.でん粉粕MBPの大量生産技術
Ⅱ.でん粉粕MBPの養豚飼料としての利用
1.でん粉粕MBPの栄養価
2.でん粉粕MBPの肉豚における肥育効果
9.結果の概要・要約
1.実験室レベルにおいて、麹かび培養の適条件を設定し、遊離アミノ酸を含めた蛋白質含量は17%に達した。
2.ドラム型固体発酵装置を作成し、培養のスケールアップを試みたところ、物理性の改善など、内部への通
気性を高めることの必要性が示された。
3.高い通気性が確保される多段表面通気式について検討したところ、1日単位の連続培養が可能となり、生
産性は顕著に高まって、MBPの大量生産が可能となった(図1、表1)。
4.豚での摂取量を高めるため、MBPは乾燥、粉砕してから給与することが望ましく、また品質も保持される
(表2)。
5.肉豚、繁殖雌豚における栄養価査定から、MBPは配合飼料に比べて、中蛋白質、低エネルギー含量の飼
料であると評価された(表2)。
6.MBPを給与する肥育試験を制限および不断給与で行なった。配合飼料、MBP代替(23%)飼料、両者からの
養分摂取量を等しく設定した制限給与試験において、発育成績に違いはみられなかった(表3)。MBPで15、
30%代替する不断給与試験では、代替率を高めると、発育成績の低下がみられた(表4)。
7.MBPを給与すると、内臓が重くなり、枝肉重が少なくなる傾向があるが・肉質へは大きな影響を与えない。
血液性状についても異常はみられなかった。
8.これらを総合的に考慮し、肉豚用配合飼料へのMBPの代替割合は15%以内とする。
以上より、でん粉粕から蛋白質に富む飼料の簡易な生産技術が開発され、養豚飼料として利用できることが明らかとなった。
10.成果の具体的数字
表1 ドラム型発酵装置、多段表面通気式による培養におけるMBPの生産効率
ドラム型発酵装置 | 多段表面通気式 | |
原料量(Kg/回) | 40 | 40 |
所用期間(日/回) | 6 | 4 |
蛋白質含量(乾物%) | 14.2 | 14.5 |
生産方式 | バッチ | 連続(1日単位) |
蛋白質生産量(Kg/日) | 0.2 | 1.2 |
表2 摂取率、消化率および栄養価(肉豚)
でん粉粕 | MBP | MBP(乾燥) | 検定飼料 | |
摂取率(%) | 88.7ab | 73.1a | 95.1b | − |
栄養価(乾物%) DCP | 0a | 17.8b | 15.6b | 15.3 |
DTP | 0a | 10.1b | 8.0b | 12.9 |
TDN | 81.0a | 69.8b | 67.8b | 82.7 |
表3 日増体量、飼料摂取量および飼料要求率(制限給与)
対照区 | MBP区 | ポテトパルプ区 | |
試験増体量(㎏) | 45.0 | 45.3 | 45.5 |
試験所要日数(日) | 57.0a | 54.7a | 66.7b |
日増体量(g) | 794ab | 836a | 708b |
飼料摂取量(㎏) | 170.7a | 179.8a | 195.6b |
日飼料摂取量(㎏) | 3.00a | 3.26b | 3.03a |
飼料要求率 | 3.80a | 3.89a | 4.29b |
表4 日増体量、飼料摂取量および飼料要求率(不断給与)
対照区 | 15%MBP区 | 30%MBP区 | |
試験増体量(㎏) | 45.6 | 45.1 | 44.5 |
試験所要日数(日) | 46.8a | 51.0ab | 56.8b |
日増体量(g) | 979a | 887ab | 793b |
飼料摂取量(㎏) | 191.9a | 198.7ab | 207.3b |
日飼料摂取量(㎏) | 4.10a | 3.91ab | 3.66b |
飼料要求率 | 4.17 | 4.40 | 4.67 |
11.成果の活用面と留意事項
脱水でん粉粕は長期間放置するとpHが低下し、麹かびの増殖が低くなるので適宜炭カルを添加(0.5〜1%)する。
12.残された問題とその対応
MBPを飼料として利用するには、新飼料としての登録が必要である。