【普及奨励事項】
新品種候補                               (作成平成9年1月)
課題の分類
新品種候補名  てんさい「H 123」
試験場所名  北海道立十勝農試、北見農試、中央農試、上川農試、根釧農試、北海道農試
   <協力>日本甜菜製糖(株)、北海道糖業(株)、ホクレン農業協同組合連合会

1.来歴およぴ試験経過
 1)来歴
 「H 123」は、オランダのバンデルハーぺ種子会社が育成した三倍体、単胚の一代雑種である。二倍体雄性不稔系統「MOMS30,13.4」に、四倍体多胚系統「T5/56」を花粉親として交配し、平成3年(1991年)に育成された。
 2)試験経過
 (1)平成4年:ホクレン農業協同組合連合会が輸入し、「HK92−13」の系統名で輸入品種予備試験を行った。
 (2)平成5年〜平成8年:「H 123」の系統名で、北海道立十勝、北見、上川、中央農業試験場並ぴに北海道農業試験場において輸入品種検定試験を行った。
 (3)平成7年〜平成8年:十勝農試において栽培特性検定試験、褐斑病抵抗性特性検定試験、中央農試において耐湿性特性検定試験、根釧農試において抽苔耐性特性検定試験を行った。
 (4)平成7年〜平成8年:全道17か所において現地検定試験を行った。

2.特性
 1)一般的性状:「H 123」は、葉長は「メロディー」並でやや短く、葉姿はやや開平である。葉数は「メロディー」並、葉形は楕円形、葉身の大きさは「メロディー」並である。クラウンの大きさは「メロディー」並の小、根形は円錐形、根周が「メロディー」並、分岐根は少ない。
 2)根重:「モノホマレ」、「メロディー」より多い。
 3)根中精分:「モノホマレ」並で、「メロディー」よりやや低い。
 4)精量:「モノホマレ」、「メロディー」より多い。
 5)品質:アミノ態窒素は、「モノホマレ」、「メロディー」よりやや高い。カリウムは、「モノホマレ」、「メロディー」並である。ナトリウムは、「モノホマレ」より低く、「メロディー」よりやや高い。不純物価は、「モノホマレ」並で、「メロディー」よりやや高い。
 6)抽苔耐性:抽苔耐性は「モノホマレ」並の強である。
 7)耐病性:褐斑病抵抗性は「スターヒル」並の弱である。
 8)耐湿性:「モノホマレ」よりやや強く、「モノエースS」並の中である。

表1 各農試における成績(平成5〜8年の4か年平均)
場所 系統名
品種名
根腐症状
株率(%)
根重
(t/10a)
根中糖分
(%)
糖量
(kg/10a)
対「モノホマレ」比(%)
根重 根中糖分 糖量
十勝農試 H123 0.0 6.56 17.86 1,165 109 100 109
モノホマレ 0.0 6.00 17.77 1,064 100 100 100
メロディー 0.0 5.81 18.43 1,067 97 104 100
北見農試 H123 0.0 6.54 17.92 1,170 107 100 107
モノホマレ 0.0 6.09 17.97 1,093 100 100 100
メロディー 0.2 5.59 18.50 1,106 98 103 101
中央農試 H123 0.8 8.18 17.05 1,389 103 102 105
モノホマレ 0.6 7.92 16.73 1,322 100 100 100
メロディー 0.2 7.65 17.33 1,318 97 104 100
上川農試 H123 0.2 7.60 17.58 1,331 107 102 109
モノホマレ 0.0 7.09 17.31 1,224 100 100 100
メロディー 0.9 6.74 18.08 1,215 95 104 99
北農試 H123 0.5 6.92 16.43 1,142 107 100 107
モノホマレ 0.1 6.48 16.47 1,068 100 100 100
メロディー 0.7 6.00 16.90 1,016 93 103 95

表2 特性検定試験・品質調査(十勝、根釧、中央、北見、上川、北農試、平成5〜8年)
系統名
または
品種名
褐斑病抵抗性
発病程度(十勝)
抽苔耐性(根釧)
抽苔率(%)
耐湿性(中央)
腐敗度
品質調査(平成5〜8年)
有害性非糖分
(meq/100g)
不純
物価
(%)
9上 10上 判定 H7 H8 判定 H7 H8 判定 アミノN K Na
H123 2.62 4.32 0.2 0.0 87.4 59.4 1.5 4.18 0.41 3.77
モノホマレ 1.88 4.03 ヤヤ弱 0.0 0.0 97.6 87.2 ヤヤ弱 1.35 4.28 0.48 3.77
メロディー (弱) (強) (ヤヤ弱) 1.36 4.33 0.38 3.63
注1)褐斑病発病程度は平成7〜8年の2か年平均値。( )は平成7年以前の結果。
 2)不純物価(%)=(3.5×Na(%)+2.5×K(%)+10×Amino-N(%))÷根中糖分(%)×100
     Na:ナトリウム K:カリウム Amino-N:アミノ態窒素

表3 現地検定試験成績全道平均(平成7〜8年、17か所)
系統名
品種名
根腐症状
株率(%)
根重
(t/10a)
根中糖分
(%)
糖量
(kg/10a)
対「モノホマレ」比(%)
根重 根中糖分 糖量
H123 4.4(2.7) 6.08(6.70) 16.80(17.15) 1023(1156) 105(104) 100(101) 105(105)
モノホマレ 1.0(1.3) 5.77(6.43) 16.75(16.96) 970(1097) 100(100) 100(100) 100(100)
メロディー (6.1) (6.01) (17.79) (1075) (93) (105) (98)
注) ( )内は「メロディー」供試の延べ4か所の平均値。

7.配布可能種子量
平成9年度2,000kg平成10年度以降4,000kg

8.適応地帯およぴ普及見込面積
北海道一円平成9年度2,000ha平成10年度以降4,000ha

9.栽培上の注意
 1)褐斑病に対する抵抗性は弱なので、適期防除に留意する。
 2)根腐れの発生することがあるので排水不良な圃場では栽培を避ける。