【指導参考事項】
成績概要書                      (作成 平成9年 1月)
課題の分野
研究課題名:イチゴ「きたえくぼ」の‘先白果’発生実態と緊急対策
       (いちご「きたえくぼ」の先白果
発生要因の解明と対策一予備試験)
予算区分:道単
担当科:道南農試研究部園芸科・土壌肥料科
     北海道農政部農業改良課
試験期間:平成8年
協力・分担関係:

1.目的
 イチゴ「きたえくぼ」の‘先白果’の現地での発生実態を把握、解析するとともに、当面の‘先白果’発生対策を検討する。

2.方法
 先白果発生程度
 0:先白果がない、1:疑わしいものが1個/株、2:1個/株、3:2個/株、4:3個以上/株。
 なお、檜山南部普及センターは株当たりの発生ではなく、1花房当たりの発生個数で評価。

 栽培環境に関する調査地域、調査地点および調査時期
調査地域(調査地点数)担当普及センター調査時期
大野町(14)渡島中部5月上旬
上ノ国町(12),江差町(15),乙部町(10)檜山南部5月上旬
小樽市(7)仁木町(1)北後志6月中旬
豊浦町(20)西胆振6月中〜7月上旬
遠別町(5)北留萌7月上旬
静内町(6)日高中部5月下旬
9市町、90地点

土壌理化学性に関する実態調査と調査地点数
 大野上ノ国江差乙部
土壌化学性161248
土壌物理性0723
土壌断面調査0723
作物体採取圃場14723
調査実施日時5/20,5/285/22,6/195/22,6/165/22,6/19

3.結果の概要
1)発生実態
(1)先白果の発生は、
 ①保温開始時期が早い場合、
 ②保温開始から収穫始めまでの期間が60〜70日を越えた場合に高まる傾向が認められた。しかし、乙部町のように、同条件にもかかわらず先白果の発生が少ない地域もあった。この理由には、土壌条件が深く関与していると推定された。
(2)窒素施用量については、15㎏/10a未満では先白果の発生程度が2以上になるものが少なかった。
(3)先白果の発生には土壌の透水性が不良または地下水位が浅いため土壌水分が多いことが影響すると考えられた。
(4)土壌タイプは黒色火山性土で先白果の発生が低くなったが、これは黒色火山性土の理化学性が関与しているものと考えられた。
(5)無機成分吸収量が多いほど先白果発生程度は高かった。
2)当面の対策
(1)保温、収穫時期は早すぎないようにし、保温開始から収穫までの日数が長くなりすぎないようにする。保温開始から収穫までの日数を考慮すると、道央部で5月下旬〜6月上旬、道北部で6月中旬〜下旬、道南部で5月上〜中旬の収穫始を目安とする。
(2)多肥は先白果発生に大きく関与していると思われることから、施肥量は有機物も含め北海道施肥標準以下とする。その際、秋の生育は十分確保するように留意する。
(3)排水が不良な地帯への作付けは避け、やむをえず作付けする場合は排水対策をしっかり行う。この場合、できるだけ高畦栽培とし、水田転換畑や排水不良地は深耕や暗きょなどの十分な排水対策をとる。
(4)収穫年の濯水は控えめとし、地下水位が高いところや排水不良なところでは基本的に灌水はしない。


第1図 保温開始から収穫までの日数と先白果発生程度の関係

第1表 檜山南部地区における土壌タイプと先白果発生程度
土壌タイプ 地域内訳 同左
平均
先日果発生程度
範囲 平均
褐色低地土 上ノ国 7 2.0 0〜3.8 2.0
江差 11 2.0
黒色火山性土 上ノ国 4 1.3 0〜2.5 0.8
乙部 8 0.5
灰色低地土 上ノ国 1 2.0 2.0〜2.2 2.1
江差 1 2.2

第2表 無機成分吸収量および先白果発生
     程度との相関係数(r:一次回帰n=26)
成分 N P K Ca Mg 株重量
相関係数 0.65** 0.73** 0.74** 0.60** 0.61** 0.51*


第2図 窒素施肥量と先白果発生程度の関係


第3図 地下水位の上限(推定cm)と先白果発生程度との関係

第3表 先白果の発生に及ぼす各地域の栽培状況の概況
地域 保温・収穫時期 保温〜収穫
までの期間
窒素施用量 土壌条件 先白果
発生程度
静内町 × × × 2.2
江差町 ×〜△ × 1.9
上ノ国町 × ×〜△ ×〜△ 1.8
大野町 ×〜△ △〜○ ×〜△ × 1.3
小樽市・仁木町 × 1.3
豊浦町 △〜○ △〜○ 0.9
遠別町 0.5
乙部町 × × 0.4
保温・収穫時期は×早い〜○遅い、保温〜収穫までの期間は×長い〜○短い、
窒素施用量は×多肥〜○少肥、土壌条件は×不良〜○良として総合的に評価

4.成果の活用面と留意点
 1)この成績は現地実態調査による。
 2)当面の対策とする

5.残された間題点とその対応
 1)先白果発生に及ぼす温度、地温、受光量等の栽培環境の検討
 2)「きたえくぼ」に対する適施肥量および適窒素肥沃度の検討
 3)土壌水分管理方法の検討